中央銀行の政策は金にどう影響しているか

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2015年10月2日 || GUY ADAMI

金融政策と財政政策両方について、中央銀行がグローバル市場で果たしている未曾有の役割を検討せずに、金市場を語ることはできない。

歴史上、善意から出た考え方と政策により恐ろしい結果が生じたことは幾度もある。シカゴ大火は、1871年10月8日に発生した。この大火は、今日に至るまで他のすべての火災が比較されるほどの出来事である。壊滅状態になったとはいえ、シカゴ大火は、その同日に火災が発生したウィスコンシン州のペシュティゴ大火と比較すると色あせる。その一帯で1,500~2,500名の死者が生じたペシュティゴ大火は、依然として米国史上最悪の火災である。

1876年、ペシュティゴや他の火災へ対応して、米国森林局が設立された。森林局の主な目標の一つとして、山火事の防止が挙げられる。これは完全に筋が通っている。数年前に見られたように、火災は多大な犠牲をもたらし致命的でもある。森林局が火災を多少でも抑制して防止できれば、なおさら良いことであろう。いうまでもなく、この戦略は素晴らしく見事に機能した。それは素晴らしかった。意図しない結果が台頭し始めるまでは。カリフォルニア州では、1960年代まで、ジャイアント・セコイアの新木が生育しなかったのがその証拠である。森林火災は、件数は少なくなったものの、今までよりもはるかに勢いが強まり消火が困難になった。お察しの様に、森林火災は森林のライフサイクルに不可欠な部分であると理解している人は少ない。森林火災が発生すると、老木や元気を失った植物が一掃されて、それにより新たに草木が生えて豊かな成長を遂げる。結局のところ、私の若き頃に流れていた有名なコマーシャルのキャッチフレーズ、「母なる自然をだますのはよくない」に当てはまる。

この話を持ち出したのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の行動が引き起こしたことと全く同じ状況だと私は考えているからだ。アラン・グリーンスパン氏は、1987年8月にFRB議長を引き継いだ。2ヶ月後の10月19日、ダウ工業株30種平均は、前週末比で 22.6%下落 した。それに対応して、当時のグリーンスパン議長は、FRBは、経済・金融システムを支えるために流動性を供給する用意があると確約した。同議長が明白に善意から行動したと少しも疑っていない。ただ、マーケットにとっては、グリーンスパン議長のコメントは警報解除信号と同然だった。グリーンスパン・プット が確固として発動されて、S&P500種株価指数は、1987年秋の250台から上昇して、2000年夏には1,500台にのせた。

この上昇局面は、主としてグリーンスパン率いるFRBの政策が原動力だった。現在、FRBのバランスシート は、4兆8,000億ドルに近づきつつあり、バランスシートは、文字通りファイナンスのシステム救うために膨れ上がった。バランスシートは、誠実な動機付けから膨張した。

さきほどの森林局の事例のように、自然に生じるサイクルの部分を先送りできるものの、サイクルを排除することはできないことについて、我々は教訓を得ている。おそらく、さらにいっそう重要なことは、サイクルを排除しようとすべきではないということだ。FRBの過去の金融緩和姿勢がもたらした意図せざる結果は、途方もなく大きく、以下の様に現れ始めているというのが私の主張である。

大胆な中央銀行

市場参加者は、今後もFRBプットが続くと考える状態にある。このため、現状に対する満足が危険なレベルに達している。為替については、これまで数ヶ月ではないにせよ数日かかっていた動きが、今ではほぼ毎日のように数分で起こってしまう。資金の逃避先である債券市場は、決してそういう状態ではない。FRBの政策が成功したとの認識からみられるように、世界各国の中央銀行は、同じやり方で大胆な行動をとっている。確かに、FRBは、必要な時に介入してシステム全体を救済した。だが、問題の根底にあるレバレッジは、解消されなかった。レバレッジに変化があっただけで、今ではFRBにのしかかかっている。4兆8,000億ドルまで膨張したバランスシートが、650億ドルの現金準備の頂点にある。これは、バランスシートには73倍程度のレバレッジがかかっていることになる。

ちなみに、比較目的でのみでとり上げるが、リーマンブラザーズは、破たん時のレバレッジが30倍を少し超えたぐらいだった。その一方で、国際通貨基金のバランスシートは、レバレッジが約6倍にとどまっている。これらの問題に対処するために、世界各国が自国通貨の人為的切り下げを行っているのを目にする。確固たる証拠は、8月10日に中国人民銀行が取った行動であり、それ以外は探す必要はない。そのため、不換通貨の世界では、準備通貨としての米ドルの支配はどのような意味を持つのか。それについてこれから考えていくが、範囲と力の両方においてIMFの成長ぶりを目にしており、新たなパラダイムとしてIMFが究極のバックネット(安全装置)として台頭するのではないかと、考えてしまうばかりである。

金の上昇と下落

ほぼ当然のこととして、世界のゼロ金利レースは、うまく終わらないだろう。これはむろん、金にもつながる。数年前であれば、地政学的イベント、為替の変動、ヘッドライン・リスク、中央銀行による未曽有の行動で概ね説明でき、順調に3,000ドルを超えて、それ以上に大幅高になると言えただろう。

2009年9月9日、Barrick Gold は、30億ドルの新株発行して既存の金のヘッジの全面的解消のために買い戻しを実施することを発表した。また、Barrickは、金の強気相場の持続にかなり確信しており、第3四半期決算に56億ドルを計上した。思い起こしてみると、これは金が上昇基調をたどり1オンス当たり1,000ドルを突破した頃と一致している。その2年後、金はあと80%上昇し、1オンス1,800ドル超えを果たした。2009年9月に、Barrickの株価は38ドルだった。2011年4月までには、1株55ドル超で取引されていた。本日まで早送りしてみると、Barrick(ABX)は6.5ドル近辺で推移していた。

これはBarrick Goldを指名して非難しているわけではく、業界全般に言えることである。しかし、次のことをほぼ保証できる。金のヘッジ解消のための買戻しを行うようにこれらの企業に提案し、懇願し、また無理強いしたのと同じ取締役会は、今では輝かしかった株価のパフォーマンスが落ち込んで厳しい非難を浴びている。業界は、何か手を打つように途方もないプレッシャーをかけられており、私はそうした状況をうらやましいとは思えない。そうとは言え、航空業界とかなり似ており、ある参加者が行動を起こすと、通常は残りが追随する。最初にまばたきする人物は、現時点では不明である。しかしながら、金市場に対する中央銀行の政策の副次的影響も現時点では不明である。8,000トン超を有する米国は、依然として世界最大の金保有国である。ドイツは、約3,500トンを保有し2位の座を守っており、前述の表に出ないわけではないIMFは3,000トン近くを抱えて3位につけている。

その点について、2013年1月の新聞の見出しが目に留まった。ドイツ連邦銀行は、パリで保管していた金のうち374トンをドイツに戻し、ニューヨークに300トンを保管すると宣言した。これは、容易に決断できることではなかった。そして、ドイツの決定が単発だと考えられるといけないので、いくつか例を挙げると、オランダ、ベルギー、ベネズエラが本国移管の取り組みを進めている。これらの国はすべて、何かを懸念しているのは明白であり、中央銀行の行動と不換通貨システム全般への不信感を巡る懸念の高まりが中心にあると思われる。

さらに、金価格はかなり長い間低迷しているものの、見聞きした全てのことを踏まえると、金の現物市場は、決して強くなっていなかった。Chris Carreraは、金市場に30年間近く関わってきた。同氏は、この市場について、私が知ろうとすることを沢山無視してきており、詳細と焦点への彼のこだわりは他の追随を許さない。彼の言い分の一つに今、共鳴している。誰も何か起こるまでは金市場に関心を持たないと。株式市場は、毎日ニュースがあるが、金価格に関心を持っているのはごくわずかである。そうとはいえ、私の意見では金は再び注目を集め出しそうなので、この部屋にいる全員に用意してもらいたい。

この分析は、CMEグループ主催の 2015年貴金属ディナー(Precious Metals Dinner) におけるGuy Adamiの講演からの抜粋である。



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