人民元の新しい基準値が意味すること

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2015年9月23日 || OPENMARKETS

最近の中国当局による人民元基準値の引き下げによって、中国の通貨は新たなボラティリティの時代に突入したように見える。8月11日に実施された最初の引き下げでは、人民元のレートは1.9%の下落にとどまった。しかし、10年間に渡って続いてきたドルへの固定レートが解除されたことで、世界の株式市場は急落した。

中国人民銀行は、今後の人民元レートの設定について、より需給を反映したメカニズムを導入すると発表。これは予想外のことであったが、時間の経過とともに、その意味が少しずつ投資家の間に浸透してきている。

為替レートに対する市場の影響力が高まることは、人民元の国際化や、資本の移動制限の緩和にもつながり、中国にとってはポジティブな要素だ。この変化は、国際通貨基金が定める「特別引出権」の通貨バスケットに人民元を加えるためにも、中国にとってはプラスになるだろう。

しかし、政策主導による事実上のドルペッグ制を廃止することは、中国への投資に新たなリスクを生む。人民元を取引する投資家や企業は、政策の不確実性に加えて、今後は通貨のボラティリティにも対処しなければならない。この政策変更の重要性を理解するために、CMEグループの「アジア太平洋地域 外国為替・金利商品部門」のエグゼクティブ・ディレクターであるRavi Pandit氏に話を聞いた。

Q: 中国はこれまで、人民元を米ドルに対して狭い変動幅に固定し、資本の移動制限を行ってきました。新しい制度は、どれくらい大きな変化になると考えますか?

A: 金融政策の変更と為替レートの自由化は、中国当局の一致した合意によって実施されたようです。新制度には市場変動の要素もありますが、今回の一連の変動には中国国内の金融政策のニーズも関係しています。人民元の下落圧力が強まっていた中で、中国はドルペッグを維持するために外貨準備を取り崩してきましたが、これが結果として金融引締め政策になっていました。このことは、中国政府が掲げる7%のGDP成長目標との間に軋轢を生んでいました。

Q: この動きが部分的に金融政策によるものだとすれば、中国は今後、より一層の金融緩和を行うと思いますか?

A: はい。中国当局が外国為替市場に介入している理由の一つは、資本流出によって国内の流動性が低下していることにあります。中国は6月末時点で3.6兆ドルの外貨準備高を保有しており、この状況を是正する能力があります。中国は人民元の基準値を引き下げた後、政策金利と預金準備率を相次いで引き下げました。しかし、資本流出を是正するための介入が人民元の下落ペースを鈍らせています。この介入の影響を和らげるために、中国はより一層の金融緩和を行うと予想されます。

Q: 人民元のボラティリティはすでに大きく高まっています。人民元はこれまで、政策に支えられた安全な通貨と思われていましたが、投資対象としての人民元の魅力はボラティリティの上昇によってどれくらいの期間、影響を受けそうですか?

A: これまでは、ドルやユーロ、または円を売り、オフショア人民元(CNH)を買うというキャリートレードが盛んに行われていたため、状況の変化によって人民元が売られたのは確かです。これはファンダメンタルズに基づくものというより、どちらかと言うと反射的な行動に見受けられます。長期的には、途方も無く大きい中国経済や、決済通貨としての人民元の重要性によって、今後も人民元の需要は増加し続けるだろうと私たちは見ています。人民元は長らく管理通貨であったにもかかわらず、世界5位の決済通貨にまで上り詰めています。

Q: 新しい基準値によって、オンショア市場(中国本土)とオフショア市場(中国本土外)の人民元の差は縮小しましたか?

A: これまでのところ、ボラティリティの上昇とともに、オンショア(CNY)とオフショア(CNH)の市場間における人民元の差はむしろ拡大しています。8月11日以前は、USD/CNYとUSD/CNHの差は100ポイント未満(USD/CNHがUSD/CNYより0.0100高い状態)でしたが、8月11日の引き下げ以降は630ポイントの差になり、8月25日には980ポイントまでその差が広がりました。オンショアに比べて、オフショアの人民元が一段と安くなっている背景には、自由な取引ができるオフショア市場において、投資家が今後の人民元のさらなる下落を予想し、オンショアでの市場介入の可能性を考慮に入れているという要因があります。

Q: 今回の人民元の動きは、他の地域通貨にどのような影響を与えると思いますか?

A: アジアの他の通貨は、事実上、人民元よりも先に引き下げが行われてきました。例えば、マレーシア・リンギットは今年の5月上旬以降に19%の価値を失い、インドネシア・ルピアは8%の価値を失っています。豪ドルは商品市場との結び付きが強く、中国への投資の代替手段としても取引されるため、興味深いケースと言えます。豪ドルの先物取引は、6月末以降に過去最高の取組高を記録しましたが、この時期は中国の株式市場で最初に大きな下落が発生した時期と重なります。中国ではその後、政府による株式市場と通貨市場への介入が始まりました。

Q: 今回の基準値引き下げを受けて、人民元の取引傾向はどうなるでしょうか?

A: CMEグループのビジネスの観点では、ボラティリティの上昇は出来高の増加に繋がる一方で、取組高の増加には必ずしも結びつかないということが言えます。人民元は長期的な片道取引として売買されてきたため、この傾向が特に強く見られます。ディレクショナル取引の増加によるものか、純粋なヘッジ戦略によるものかはわかりませんが、人民元のボラティリティによって出来高が増えたことは確かです。それと同時に、人民元の下落が商品相場の一層の下落を招いたことで、先物やオプションの取引も増加しました。8月は、CMEグループの通貨市場の出来高が前年同月比で33%の増加となりました。(日本円: 56%増、豪ドル: 30%増、ユーロ: 56%増)

Q: 人民元の下落と資本流出は、中国政府が目指す人民元の国際化や資本移動の開放に影響を与えると思いますか?

A: 中国が資本の出入りを増やそうと努力していることは、多くの証拠によって示されています。しかし、中国が資本の移動制限を無くすためには、まず国内の債券・金融市場における自由化を一層進める必要があります。これは長期間に渡って、多くのステップを必要とするプロセスになるでしょう。CMEグループはこのほど、中国外貨取引センター(CFETS)との間で了解覚書(MOU)に署名したことを発表しました。この了解覚書は、第7回の米中戦略・経済対話の結果を受けて、ジョイントベンチャーの設立を視野に策定されたものです。米中の経済対話では、共同プログラムを通じた機会の探求、両国の市場インフラと商品の推進、そして市場のさらなる発展のために、CMEグループとCFETSの緊密な連携が米中両国によって支持されました。この了解覚書によって、CMEグループとCFETSの一層の協力関係が築かれるとともに、当グループで外国為替や金利商品を取引する世界中の顧客層は、より良い取引機会を得られる可能性があります。

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