原油のボラティリティがもたらす取引の変化

oil volatility

2015年8月21日 || PETER KEAVEY

原油価格は現在、1年以上にわたり下落基調をたどっている。米原油先物は、先週下落して6年ぶりの安値を更新 し、世界の供給増と中国の需要減を背景に、下落トレンドが終焉する兆しはほぼみられない。ボラティリティは、それでも過去最高水準を下回っているとはいえ、依然として重要な要因となっている。8月12日に、シカゴ・オプション取引所の原油VIX指数(ボラティリティー指数)の8月12日終値は、4月以来の高水準で引けた

原油の弱気相場のストーリーは、サプライサイド経済学で最も頻繁に取り上げられる話である。エネルギー情報局(EIA)によると、原油安で利益率が圧迫される中、米国の生産ペースは1972年以来の高水準となっており、稼働リグ(掘削装置)数をみても減産の兆しがほとんどみられない。実際、米国の在庫は、約80年ぶりにドライブシーズンのピーク期でも最高水準近辺で高止まりしている。CMEグループのシニア・エコノミストであるエリック・ノーランドは最近のレポートにおいて、この点を強調していた。

米国人は、昨年よりも5%ほど長く走っている。ところが、原油の在庫は、この時期通常みられるほど減っていない。在庫は依然として過去最高の水準である(図1)。在庫が前年比25%という記録的なペースで増加中なのだ。

yoy change in us crude oil inventories

また、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの増産を背景に、世界の原油生産量は増加しつつある。イランの核開発問題に関する合意を受けて、現在の供給過剰の状態に2016年のどこかの時点でイランの原油在庫が加わる可能性があろう。

供給は確かに増えているが、その一方で需要が追い付いていない。世界第2位に石油消費国の中国では、経済成長の低迷を背景に原油需要が落ち込んでいる。通貨の変動のために、状況は複雑化する一方である。人民元の切り下げは、中国の需要にさらなる打撃を与えかねない。人民元安とドル高の組み合わせにより、中国の消費者にとって原油などドル建てのコモディティが割高になるだろう。

生産者や消費者が未知の均衡価格を待っていることから、これらの要因の結合は、予測不可能な原油市場に役立っている。では、ボラティリティの高まりは取引にどのような影響をもたらしているか。

まず、出来高が増えている。ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI先物は、8月14日終了週の出来高が前年比83%増加した。ただし、単に取引が増えているだけではない。

デリバティブ市場への参加とその取引は、変化を遂げている。特に投資家が原油市場を巡る不確実性を管理しようとデリバティブ取引に向かっていることから、この分野には新規の市場参加者が参入している。8月4日に発表された商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、マネージドマネーは6月末から16%増加している。

また、オプションへ向かう動きは通常よりも旺盛である。7月のWTIのオプションは、前年同月に比べて50%増加した。そのうちの71%は電子取引であり、新記録を達成した。オプションの電子取引への移行の動きは、しばらくの間続いており、ジェフ・ホワイトによる過去の投稿に以下のようにまとめられている。

以前はおそらく直接トレーディングフロアで、またはボイスブローカーを通して行われていた多くの取引が、今ではスクリーン上での取引に移行している。この理由の一つは、リクエスト・フォー・クォート(RFQ)の利用が増加していることにある。RFQとはCMEグループの電子取引プラットフォームであるCME Globexにおいて市場参加者がスプレッド取引を執行できるようにする仕組みである。

とはいえ、オプションへ向かう動きは、現在のファンダメンタルズとボラティリティの水準によって最もうまく説明できるかもしれない。市場参加者はEIAの週間在庫統計に注目しているため、ボラティリティの大半は、期近物で生じている。特にフォワードカーブがスティープ化していることから、オプションのスプレッド取引を誘発している。カレンダー・スプレッド・オプションは、市場参加者がフォワードカーブに対する自らの見方を見越してポジションをヘッジし、ロールコストを抑えるためにデリバティブを活用する方法の一例である。

steepening of the wti cl forward curve

カーブのスティープ化を背景に、市場では原油価格が来年に回復するとの見方が強まっていることがわかる。原油先物およびオプション市場は、世界中で流動性が最も高く、活発に売買されている商品取引である。これらの市場は成熟している。そのため、在庫水準が上昇して需要が減退しているため、これらの市場の動向は、引き続き価格がどこに向かうかの見通しを告げてくれるだろう。



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