中国のニューノーマルにおける工業用素材の見通し

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2015年7月15日 || OPENMARKETS

中国の需要の台頭は、過去10年における商品のスーパーサイクルを主導してきたものの、同様に成長鈍化による「新常態(ニューノーマル)」がエネルギーからハード・コモディティにいたるあらゆる商品の大幅な調整を引き起こしている。中国経済は消費主導型に向かってリバランスされ、商品市場は価格下落して調整局面に入っているため、依然として先行きにかなりの不透明感が残っている。

こうした変化がコモディティ界にどのような影響を与えるかについてより深く理解するために、バーンスタイン・リサーチの石油・ガス担当シニア・アナリスト、ニール・ビバリッジ氏(香港在勤)と、SCローウィのリサーチ・アジア責任者であるミハ・チャンドラ(香港在勤)に話を伺った。


原油価格の調整について、中国要因はどのぐらいありますか。

ニール・ビバリッジ(以下、NB):原油が1バレル当たり100ドル超のレンジに達した主な要因は、中国の需要と石油輸出国機構(OPEC)の非加盟国の供給減少でした。ただ、最近の価格調整は需要ではなく供給面に問題があるのです。昨年は、米国におけるシェール生産拡大を背景に、供給が1980年代以来最大の増加をみせました。同時に、一部の工業用素材と比べると、原油は中国の需要への依存度がかなり低く、世界の需要全体のわずか10%にとどまっています。

世界の原油需要は、主として輸送需要にけん引されてこの10年の終わりまでにさらに3~4%伸びるとの見方を変えていません。韓国や日本の車両密度と比べてみると、中国の車両台数はあっさりと3倍増に達する可能性があります。

中国は、4月に初めて世界最大の原油輸入国に転じました。これは強さの高まりの兆しですか。

NB:これには2つの要因が存在します。一つは供給状況です。中国のオンショアの国内原油生産量は、今年3~4%前後減少すると思われます。もう一つの要因は政策であり、中国は、原油安を利用して自国の戦略石油備蓄を補充してエネルギー安全保障を増強しています。緊急時対応用として、国際エネルギー機関(IEA)が推奨する90日分をいまだかなり下回っています。中国はちょうど今、2億5,000万バレルを保有していますが、さらに6億バレルを積み増しする必要があり、今後5~6年間については日量30万バレルのペースで積み増す可能性は高いです。

今年上期に回復した原油価格の見通しについて、どのようにみていますか。

NB:これまでと全く異なる価格環境に置かれており、原油価格が1バレル当たり100ドルにすぐに戻るとみている人は誰もいません。価格がどのように供給に影響をもたらすかが重要な問題なのです。1バレル当たり60~70ドルで推移すれば、シェール生産は引き続き利益を上げられますが、その価格帯を下回っており、稼働リグ(掘削装置)数はいまだ減少傾向にあります。原油価格について、最近の調整局面と10年間に及ぶ下落局面につながった1986年のそれと比較してみて、今回はそのような状況が繰り返されることはないと予想しています。

原油価格が1バレル当たり60ドルになったと仮定すると、そうなればヘッジ取引が発生しますか。

NB:どの業界に属しているかに左右されると思いますが、航空会社や海運などの下流部門の需要家であるならば、これらの水準でのヘッジに関心を示します。しかし、上流部門の企業(生産を含む)については、原油価格が単に低すぎます。

では、鉄鉱石について検討してみましょう。価格が2011年の1トン当たり180ドルから今年同50ドルを割り込んだことを考察してみると、中国の景気減速が実際に重荷になっています。市場の見通しをどのようにみていますか。


ミハ・チャンドラ(以下、MC):ええ、鉄鉱石は、海上輸送市場全体の3分の2程度を占めているため、中国の景気低迷の影響を最も受けています。

全体的に需要がかなり旺盛であるので、中国が鈍化したら他にどの国が代役を果たせるのでしょうか。国内の低迷を補うために、中国は鉄鋼輸出を昨年拡大しており、2015年の年初来の鉄鋼輸出量は約1億トンに達しています。これらの輸出量を受けて、反ダンピング(不当廉売)の訴えが生じる可能性は高く、つまり鉄鋼生産は短期的に横ばい、あるいは場合によっては減少に転じると公算は大きいことになります。

とはいえ、支配的な要因は、低コストの鉄鉱石という壁が立ちはだかる供給状況です。4大生産者、つまりブラジルのVale、BHP Billiton、Rio Tintoそしてオーストラリアの生産者Fortescue Metalsが、海上輸送市場の75%を支配していると推定されており、増産を続けています。2014~2017年にかけて、生産量全体は、推定2億トンまで増える見込みです。

供給削減に至るにはもう一段の価格下落が不可欠ですが、これはそうあるかもしれないほど急速には起こりません。鉱山会社は、鉄鉱石の価格下落に適応するために果敢にコスト削減に取り組んで資産売却に努め、そのうえかなり割安になった流動資産である経営難に陥った鉱山会社を支援しています。

中国が重要な役割を果たしているもう一つの商品、一般炭の見通しはどうですか。

MC:中国が一般炭の海上輸送市場に占める割合は20%を少し下回っており、インドのそれと同じようなシェアになっています。とはいえ、中国は汚染を抑制するために内陸部の石炭火力発電所を稼働させており、このため海上輸送の石炭の輸送コストが上昇し、国内の石炭に対する競争力がないため、輸入は減少する見込みです。インドの需要がいずれ、価格に対する変動要因になる可能性の方がより高いです。そして政府は、かなり前に交付した石炭採掘権免許を取り消して、免許を再び競争入札にかけています。2020年までに石炭生産を倍増させて15億トンまで引き上げるという政府目標を掲げており、こうした動きが国内生産の拡大につながるかどうか見極める必要があります。

その他のハード・コモディティの見通しはどうなっていますか。

MC:まず銅から話を始めると、全般的に中国の成長減速の影響をそれほど受けていません。鉄鋼などのその他の金属とは異なり、不動産市場からの影響は小さいです。また、予想される供給の伸びを背景に今後数年間は逆風に直面したとしても、超高圧電力ケーブルへの銅の使用を踏まえると、成長の余地があります。

アルミニウムは他よりも消費に左右されるため、需要の観点からみると、相対的に見通しは良好ですが、膨大な在庫のだぶつきと中国における生産能力の増強を背景に、価格は抑制されるとみられます。全般的に亜鉛は、市場が依然として供給不足に見舞われているため、需給見通しが最も良好です。

中国の景気減速とスーパーサイクルの終焉に直面している商品の展望について、どのような大局的な見方をしていますか。

NB:今を商品市場のスーパーサイクルの終焉と言うには少々ピークを過ぎていると思います。重要となる変化を経験しているとあえて言いたいです。鉄鋼の需要、おそらく鉄鉱石がピークを過ぎていますが、原油とガスはまだピークに達していません。そして、天然ガスの見通しは、特に明るいようにみえます。天然ガスは、「将来に向けた低炭素の橋渡し燃料」と呼ばれています。

世界の原油市場動向に対する中国の影響をどのように予想していますか。今年、中国は、上海の自由貿易試験区で売買される原油先物取引を新たに導入する計画を発表しました。

NB:原油市場における最大の買い手であることは、一定の影響力を与えます。中国は、価格受容者ではなく価格形成者になりたいと考えています。指標価格を形成して物理的に貯蔵することは考えられます。とはいえ、資本取引での通貨の完全交換性に欠けていることを踏まえると、それは流動性次第です。


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