雨季と穀物市場の出来高記録

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2015年7月13日 || SUSAN SUTHERLAND

米国農務省が7月の需給報告で、2015穀物年度末のトウモロコシと大豆の在庫量を、全体で1億7500万ブッシェル引き下げことから、両穀物の先物市場はそれぞれ上昇する結果となった。ただ、こうした相場展開は、歴史的に価格変動率(ボラティリティー)が高い市場での、ごく最近の出来事に過ぎない。

本穀物年度については当初、2014年が豊作だったこと、さらに今年につても高い収穫率を示唆するデータが多かったことから、トウモロコシ、大豆、小麦などの穀物相場について、市場では弱気の見方が主体的だった。ただ、春から初夏にかけての降雨、さらにその他の要因によって、こうした当初の相場見通しは修正を余儀なくされる結果となった。実際、これらの3市場では共通して、5月・6月がボラティリティーの高い時期となっている。

例えば6月の最終週には、トウモロコシと大豆で、先物とオプションを合わせた総取引枚数の日中記録を、2度も更新している。また、同じ週にはシカゴの軟質赤色冬小麦も、同様の日中記録を1度(6月26日)、更新している。トウモロコシと小麦は1887年に、大豆は1936年に、それぞれの取引が開始された先物商品である。

長い取引の歴史のなかには、もちろんボラティリティーの高い相場展開も多くあった。しかし、今回の相場展開が特別なのには、理由がある。

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その1つは、米国の穀物産地で今年、例年では考えられないほどの広範囲で、記録破りの降雨量があったことである。主体的だった当初の弱気相場見通しはこれにより、短期間に劇的な修正を迫られることになった。トウモロコシ、大豆、小麦の相場でポジションを抱えていたファンドは、概して売りに偏っていたなか、新年度の作付けの遅れ、作付けされた作物の流出、収穫前の冬小麦に被害が出るなど、米国中西部の平野やコーンベルトにおける降雨が穀物の作柄に影響を与えていることが明確になると、大挙してこうしたポジションを閉じる結果となった。さらに、米国海洋大気庁による直近の湿度指数は、小麦、トウモロコシ、大豆の主要生産地となっている各州について一様に、「通常から過多」としている。

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一方で、ADMインベスター・サービセズのリサーチ部門でバイス・プレジデントを務めるスティーブ・フリード氏は、前述の様に6月末の取引枚数が記録を更新した背景は、単に「売り」から「買い」へ市場参加者がポジションを変更したからだけではない、と考えている。

「旧年度の穀物在庫に関して、米国と南米の生産者は活発な売り手となっていた。このことも、取引量の増加に貢献した」とするフリード氏は、「市場での売りポジションは、ファンド系から当業者へ、短期間に劇的なシフトを見せた」と指摘している。

フリード氏の指摘は、天候以外にも相場に影響した要因があったことを示唆するもので、今日の穀物市場は、グローバルなイベント、他の商品市場や金融市場の動向などに、より敏感な反応を示す様になっている。米国産穀物に依存する国は多いが、価格と供給の要素でブラジル産穀物が優位に立つ場合、その影響は米国市場にも現れる。ブラジルの天候、中国株の動向、全ての要素が米国のトウモロコシ、小麦、大豆などの相場に影響するのである。その意味では、最近の米ドルの上昇も、米国の穀物輸出に影響する可能性がある。ただ、こうした様々な市場要因は、市場参加者に一様の見通しを示唆する訳ではない。従って、相場展開には不確実性が生じ、結果としてボラティリティーが上昇することになる。

米国農務省の6月30日付需給報告に関するスティーブ・フリードとダン・ベースの分析(ビデオを見る、英語)

前出のフリード氏は、「優秀な市場アナリストの中には、米国産穀物の収穫量見通しの引き下げを背景に、相場の上昇を予想する人たちがいる。その一方で、同様に優秀なアナリストたちは、弱気見通しは既に相場に反映されているのであり、天候がさらに悪化しない限り、ここからの相場については下落方向を予想する向きもある」と指摘している。

至る所に経済のさざ波が立つなか、確実なのは、不確実性が市場に停滞するであろうということだ。ただ、フリード氏は、その中でも天候に最も注意するべきだとして、「その日によって相場の材料は異なるが、市場参加者が通常、最も注意するのは天候」なのだと言う。

アグリソース社のダン・ベース氏も、記録的な降雨と直近の米国農務省報告を受けて、穀物や油科種子などの相場の次の動きは、天候に左右されると考えている。

その上で氏は、「さらなる悪天候の材料がなければ、買い手側は市場から撤退することになる。市場が強気見通しを維持するには、穀物の収穫予想がさらに引き下げられる必要がある」と指摘している。

米国中西部では7月、例年を下回る気温が予想されているなか、8月12日には、米国農務省の需給報告が発表される予定となっている。相場の不確実性は、停滞を続けることになる。


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