鉄鉱石市場のニューノーマル?

IRON ONE

2015年1月30日|| OPENMARKETS

商品市場は、中国が主導してきたスーパーサイクルの、頂点部分を形成する数年間が終了したという現実に、対応しようとしている。世界の鉄鋼の半分は中国が生産していることを考えれば、この世界第2位の経済大国の失速による影響を最も受けるのは鉄鉱石、ということになる。実際、鉄鉱石市場は、年初から既に50%の下落となっている。

この急落にもかかわらず、市場見通しは、世界最大の市場における需要低迷と不透明な今後の供給状況を背景に、依然として予想が難しい状況となっている。

そうした中、散見される予想の多くは、市場での安値更新に対して供給サイドがどう対応するかが、その先の相場の流れを決定する要因であるとしている。シティグループのアナリストは、鉄鉱石の供給過剰は2018年までに3億トン超に達するとした上で、2015年は1トン当たり50ドル程度の水準に突入する可能性があるとしている。

実際、BHPビリトンやリオ・ティントなどの石業界大手は、軟調な相場展開に臆することなく、生産能力の積極的な拡大姿勢を繰り返し示している。彼らほど楽観的でいられる余裕がない業者については、高コスト体制の生産者間での再編が予想されている。

他方、こうした不安定な状態を背景に、鉄鉱石価格の確実性に対する要望も高まりを見せている。鉄鉱石価格の乱高下という足元の状況は、たった6年前に、業界が年間の固定価格をスポット価格連動でより短期の契約にシフトした後の出来事なのである。結果として、多くの当業者が、価格リスクの管理を目的に、初めて、デリバティブ契約への関心度を高めている。

鉄鉱石業界が直面する変化と金属商品関連のデリバティブの最適な活用方法方に関する理解を深めるため、CMEグループの金属商品担当シニア・ディレクターのヨンジン・チャンと金属商品担当ディレクターのイヴォンヌ・チャンに詳細を聞いた。

最近、鉄鉱石市場のボラティリティ―が高くなっていることを背景に、スポット価格の採用の動きは業界で急速に進んでいるのでしょうか?
イヴォンヌ・チャン(YZ):
業界では明らかに、相対の固定価格契約からスポット価格契約への移行がみられます。相対固定とスポット価格の取引は現在、およそ3:7の割合だと思います。スポット市場の現物取引量はここ6年ほどで、2000トンから10億トン超にまで拡大しています。

市場は今や、鉄鉱石や鉄系金属の恒常的な高ボラティリティ―環境に慣れてきている、と思いますか?。
ヨンジン・チャン(YC):
2008年以降、スポット価格への移行や鉄系金属セクターの高ボラティリティ―は、市場のニューノーマルになっています。このニューノーマルは同時に、スワップやオプションなどで取引需要を集める結果ともなっています。相場の大幅下落を経験したところですが、こうした環境では、価格の安定性に対する顧客需要は特に高まります。

ヘッジという考えにこれまで否定的だった人が今ではヘッジに関わっている、またはヘッジを検討している状況です。、ビジネス面での関心は、これまで以上に高まっていると言えます。例えば、鉄鋼大手のアルセロール・ミタルやタタ・スチールがデリバティブを利用する用意があるとの 最近の発表 は、デリバティブ取引の利用が業界の主流になりつつあるということですし、象徴的だと思います。

また、事業やリスク管理の規模を増大しているカーギルなど、早い段階からヘッジを取り入れていた企業についても取引の拡大がみられます。こうした取引の拡大は、多国籍企業の範囲を超えているのです。米国では、ワージントン・インダストリーズやフラック・スチールなどの中堅企業でも、フルタイムのリスク管理担当者を置いていることが知られています。中国の業界ではもはや、鉄系金属のデリバティブ取引は新味のある話題ではなくなりました。


更に詳しい話を読む:新しい鉄鋼会社


Q – 景気後退の中にあっても、中国は鉄鉱石市場の主体的なプレーヤーであり続けると思いますか?。
YC:
思います。成長の減速にもかかわらず、中国は現在でも世界の粗鋼生産量の50%を占めています。これは必然的に、同様の割合で世界の鉄鉱石も中国で消費されていることになります。中国の沿岸部では特に、既存都市の外側に向けて都市化の流れが続いていることから、ビルやインフラの開発需要に余地が多く残されています。世界の鉄鉱石市場において、中国はこれからも主体的な消費国であり、引き続き重要な役割を果たすことになると思います。

一方で、鉄鋼業界内での統廃合の進展、そして国内で処理されるスクラップ金属の影響を受けて、中国の需要は多少失速するものと予想しています。

Q – 現状、見られている取引活動はどの様なものですか?例えば、鉄鉱石鉱山会社、鉄鋼メーカーまたは鉄鋼の最終需要家のヘッジに対する関心度はどうでしょう? ヘッジファンドによる投機的取引は、増加したりしていますか?
YZ:
全般的な流動性の引き締めが背景となって、「ホットマネー」は目立たなくなっているというのが大きな変化です。つまり、市場はより業界の需給要因に左右される展開になっていて、これはポジティブな変化だと考えています。現在、市場を主導しているのは、ヘッジファンドよりもむしろ当業者や業界の参加者たちです。

YC:付け加えるなら、どの地域を対象にしているかで、市場の主導的な参加者はある程度左右される、という面もあると思います。米国では、最近の大幅な価格変動を背景に、ヘッジファンドと当業者が、共に取引への興味を高めています。

Q – 何が市場の焦点になっていますか? – 中国の需要、それとも供給状況でしょうか?。
YC:
より信頼性が高いですし、操業コストが高い鉱山がどの水準で閉鎖に追い込まれるかは様々ですが、市場の焦点は供給状況だと思います。ご存知のように鉱山開発は数年にわたるプロジェクトで、今後数年間、新規のこうしたプロジェクトのいくつかが操業を開始することから、生産能力はさらに拡大すると予想されています。過去の価格上昇期に、鉱山会社の多くは再投資を行い、生産能力の拡大に努めてきました。同時に、より高コストで小規模な鉱山が多数、生産を開始していることから、市場での下落圧力が続けば、こうした鉱山の多くは操業停止に追い込まれるでしょう。

Q – デリバティブの利用に対して寛容さを高めてきている中国企業ですが、取引の目的はヘッジでしょうか? それとも、トレーディングでしょうか?また、この点について、最新の規制動向はどうなっていますか?
YZ:
政府はオフショア取引が許可されているカウンターパーティのリストを更新していませんが、オフショアの複合企業で自己のリスクのヘッジ取引を許されている企業の数は増えています。また、自由貿易特区を通じた自由化の取り組みの拡大など、市場改革の取り組みが他にもあることを強調しておきたいと思います。

上海自由貿易特区では2015年までに、原油、ガス、鉄鉱石、綿花、液体化学品、銀、バルク、非鉄金属などの取引を目的に、8つの国際取引プラットフォームが設立される見通しです。また、中国国務院は、天津、福建、広東でも更なる自由貿易特区を承認しています。鉄鉱石、石炭、鉄の完成品にとって重要な価格設定ポイントとなることから、これは極めて明るい材料です。

Q – 鉄鉱石、鉄鋼、金属製品の相関関係は、最近の相場の調整局面でも維持されていますか?
YC:
必ずしも維持されている、とは言えないでしょう。同じ製品でも、地域によって相違が生じています。これが、異なるサプライチェーンによる価格リスクの軽減を可能にするため、一連の様々な商品を提供している(「実質上の鉄鋼会社」のコンセプト)理由の一つです。

Q – 中国では、どのような規制の取り組みが展開されていますか?また、今後、中国市場が指標となったり、価格形成をリードする市場となる可能性については、いかがですか?
YZ:
中国は、世界最大の金属消費国であり、生産国でもあります。したがって、市場流動性の多くを中国が提供することになるでしょう。ただ、中国がその前提で力任せに新しい指標を作り出せるほど、事は簡単ではないでしょう。指標とは、大方の市場参加者にそうであると認められる必要があります。中国の国際化は進んでいますが、この分野では成されるべきことがまだ多くあります。

Q – 中国でさえも、鉄市場でスクラップが果たす役割が大きくなっていくと予想するべきですか?
YC:
スクラップの役割は、大きくなっていくでしょう。中国経済が成熟し、技術が発展するにつれ、スクラップの重要性は増していくと思います。とはいえ、技術、オペレーション、輸送コストの感応度など、様々な要因を考慮する必要があり、スクラップで鉄鉱石を単純に代用するということが必ずしも可能、というわけではありません。その上で、スクラップは鉄鉱石需要において、その代替品となる方向に動いて行くと思います。

Q – CMEグループは最近、鉄含有量58%以上の鉄鉱石取引を開始しました。この商品について、その背景を説明して下さい?
YZ:
この商品は、鉄鋼会社が(中国やインドを中心に)低品位の鉄鉱石を用いる傾向が強いアジアに、より良いサービスを提供する事を目的にデザインされたものです。とりわけ、現物商品と鉄含有量62%の商品との取引に格差がかなりみられる現状では、この商品は顧客ニーズへのよりマッチした対応を可能にしています。

Q – 来年、新しい鉄系金属の取引を開始する見込みはありますか?
YZ:
顧客への対応と対話などから、取引アクセスの拡大が進んでいること、そして地理的条件に制限されない取引環境への希望が高まっていることを認識しています。市場参加者とは定期的に意見交換しており、新しい鉄系金属取引を開始するとすれば、それが顧客のリスク管理に対するニーズの進化に対応した商品であることは確実です。


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