ゼロ金利政策放棄の議論

THE ARGUMENTS

2015年1月29日 || BLU PUTNAM

FRB(連邦準備制度理事会)が金融政策を議論するFOMC(連邦公開市場委員会)は高い確率(およそ60%)で、4月28日‐29日開催時、または6月16日‐17日開催時において、現行のゼロ金利政策を放棄すると見られている一方、それ以前にFRBが短期金利を引き上げる確率は低く(5%、またはそれ以下)、同様の決断が2015年後半やそれ以降に延期される確率は35%となっている。興味深いのは、こうした予想の決定要因が低迷を続けるコア・インフレであって、米国の雇用市場環境ではない事である。さらに、世界経済やエネルギー市場などの観点からは一段とインフレ圧力が高まる可能性が示唆されており、こうした材料もFOMC内のセンチメントに影響を与えると考えられる。

2015年に加速する平均時間給の上昇率
ここ5年に及ぶ景気拡大期を通じて失業率が低下した一方で、平均時間給の上昇率が低迷を続けている事が、これまで懸念とされてきた。1990年代のITバブル形成期にはその後半で、平均時間給の上昇率は前年ベースでプラス4%のピークを打った。今回の住宅バブルでも、その後半となる2006年から2007年にかけて、同上昇率は4%でピークを打つ結果となっている。上昇率はその後、2008年から2009年の景気後退期に、年率2%を下回る水準にまで落ち込むことになる。そして、同上昇率は依然、脆弱な水準での推移となっている。個人的には、2016年の中頃までにはプラス3%程度まで改善すると予想している。ただ、それであったとしても、FOMCにとっては失望に値する水準であり、短期金利の引き上げに関する決断を遅らせる材料ともなる。

インフレ予測指標としての時間給上昇率
FRBのイエレン議長を含めたFOMCのメンバー数人は、消費者物価に影響してくることになる将来的なインフレ圧力を示唆するものとして、平均時間給の上昇率を意識している。ただ、1960年代や70年代にはこうした見方を支持する統計的な証左があったかもしれないが、ここ20年余りでは、コアの消費者物価と平均時間給の連動性に関して特筆するべきものが無いのも事実である。もしあるとすれば、概して低下することになる景気後退期後の平均時間給について、コア・インフレ率がその低下の最低値を、緩慢ながら限定的にしていると考えられることである。景気拡大期の後期では、平均時間給の上昇率とコア・インフレ率の間のスプレッドは、結果的に拡大する。足元の景気拡大期についても同様のパターンが形成されつつあるとも考えられるが、現状の平均時間給は、輸入品との競争が激化していることなどの要因によって、その上昇率が抑制されている状況にある。

世界経済の影響
米国外に目を向けると、原油価格が大きな下落を見せ、為替市場では相対的なドル高、中国経済は(2015年の成長率について6%-7%が見込まれているにも関わらず)減速基調を継続している。また、ごく僅かではあるし、不揃いでもあるが、新興国のほとんどでは実質GDPがプラスで維持されている。こうした背景を考慮すれば、米国経済は好調さを維持していると言える。ただ、米国経済が世界経済から受ける悪影響が強い現状が続くのであれば、FOMCのメンバーの多くは金利の引き上げを躊躇せざるを得ない。

非常事態対応型の収束
「ゼロ金利政策の終了」を強く求める議論には、量的緩和や現行のインフレ率を下回る水準に設定された短期金利などの緊急避難的な金融政策を、穏やかな成長を過去5年間続けてきた米国経済はもはや必要としない、とする視点がある。FRBには実際、過剰に緩和的な政策を必要以上に長期間継続したという事例が過去、何度かある。私個人としては、今回の政策金利引き上げに関して、世界経済に大きな影響を与えるイベントが起こらないと仮定した上で、今年6月までの段階で、FOMCの決定に投票権を持つメンバーは短期金利引き上げについて積極的になると予想している。短期金利はおよそコア・インフレ率の水準まで引き上げられ、FOMCはその段階で政策金利の引き上げを一旦、中止するだろう。米国経済、米ドル、インフレ、そして雇用市場への影響を掌握するためである。短期金利を引き上げるために用いられるのは、銀行の余剰資金を管理するFRBの当座預金における金利(現行は0.25%)の引き上げであり、引き上げ幅は、0.25bpt単位だったこれまでとは異なり、より大きなものとなる可能性があることに注意しておきたい。

ブルフォード・プットナムの「2015年米国経済見通し」は、こちらをご覧ください。



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