衛星写真技術と穀物の収穫予想 ロイターとのQ&A

HOW SATELLITE TECHNOLOGY IS PREDICTING CROP YIELDS QA WITH THOMSON REUTERS"

2014年12月 22日 || OPENMARKETS

異常気象がその発生頻度を高め、それがまた農産物市場の価格動向への影響度合いを高めるなか、穀物の収穫予想に関しては、新しい、高性能の手法が台頭している。

そうした手法の1つがリモートセンシング(遠隔探査)で、多くの穀物の収穫に関する初期段階の予想によく使われている。このハイテク技術は、裸眼では確認できない緑地帯による電磁放射の反射/吸収の状況から、作物の将来的な収穫を予想する手法である。

もちろん、リモートセンシングで得られる情報を有益で信頼性のある予想に昇華させるのは科学である。ただ、それは同時に、熟練したアナリストが衛星写真を処理/解釈する、匠の技でもある。また、予想を構築する過程では、天気や天候のデータに加えてフィールド(現地)調査も加味される。

収穫予想や、その結果としての農産物市場の価格動向予想にエッジを与えるリモートセンシングの奥義を学ぶべく、今回はダニエル・レド博士に話しを聞いた。レド博士はトムソン・ロイターのランソン・チームで、農業リサーチ部門を率いている。米国、南アフリカ、欧州、アジア、豪州などで生産されるトウモロコシ、大豆、麦、菜種などの作物について、博士はこのチームが発表する早期予想や長期予想を監修する立場にもある。

リモートセンシングの基本的な部分に関して、一般人にも分かる様に説明していただけますか?

分かり易いのは、例えばGoogle Earthの様に、人の目に見えるのと同様の衛星写真でしょう。地表の水は青の濃淡で、そして緑地帯は緑で表現されています。こうした色は、衛星写真を見やすくしていますが、人の目に映らない種類の画像データに関しては乏しいものとなっています。その意味では、最新のリモートセンシングでは、人の目では認識できない、地表からのエネルギーを識別する技術も使われています。色別される物理的な形とは別に、電磁波、赤外線、マイクロ波など、周波数の異なるエネルギーがあり、穀物の収穫予想や地域のマッピングでは必要不可欠なデータです。

目標帯の形や質感から、こうしたエネルギーが発信、吸収、反射される状況を、衛星やドローン(無人飛行機)、航空機などに設置されたセンサーで検出するのです。反射率の違いによって個別認識を行い、それぞれに対して格子状のピクセル(画素)を割り当て、色別された画像が作られます。こうすることで、例えば、農産地と林、水、都市部などを識別することが可能となります。

農産物の収穫予想において、リモートセンシングはもはや主流なのでしょうか?

衛星技術は特に新しいものではなく、衛星写真などは昔から米国政府を通じて容易に入手できるデータでした。この状況に変化が起きているとしたら、それはこうした情報が一段と効率的に保管できる様になったこと、そしてそれを処理する能力が格段に改善したとだと思います。大規模容量のPCサーバーが登場したことで、衛星写真の保存が容易になったし、大量処理も可能になりました。リモートセンシングが活用されている背景には、こうした要因もあると思います。

satelite pic


地球観測衛星、ランドサット8号による衛星写真(2014年7月20日)。同一写真の自然色(左)と色調処理したもの(右)。(USGS、アメリカ地質調査所のGlobal Visualization Viewer、 http://glovis.usgs.govからダウンロードしたもの)写真中央は、サウスダコタ州モーブリッジを流れるミシッシッピー川。農地の他に、自然の緑地帯も見える。色調処理された右側の写真では、人の目には見えない赤外線に近い周波数の発信を受けたことによると思われる濃い赤色で、正常に生育している穀物と林が鮮明に映し出されている。

調査は、地球のどこでも可能なのでしょうか? それとも、衛星の飛行経路によるのでしょうか?

NASAのMODIS(中分解能撮像分光放射計)衛星では、主要農産物の世界的な生産地がカバーされています。リモートセンシングで主力となっているこの衛星は、飛行高度が高いことから、同一の地表面を毎日、観察することが出来ます。毎日ですから、雲がなく、晴天の日も多いことになります。ただ、MODISセンサーを搭載したテラ(Terra)とアクア(Aqua)などの衛星の飛行高度は、その他の衛星に比べて高いので、識別できるピクセルの単位が250メートル四方となるなど、画質が粗くなります。粗くなりますが、同時に、広範囲を高頻度で観察することを可能にしているのです。

より高画質なものが必要なら、ランドサットなど、もっと周回軌道が低い位置にある衛星に装着されたセンサーのデータを使います。さらに、精密農業などで必要とされる詳細なデータを取得するためには、航空機や無人飛行機(ドローン)などを利用します。ただ、豪州における干ばつの拡がり具合を察知するなど、広範囲のリモートセンシングに関して、MODISは非常に有効です。

画像資料は、誰でも理解できますか? それとも、もっと複雑なものでしょうか?

Google Earthでは誰でも緑地帯や水域などを認識し、時間の経過や干ばつ、洪水などによる変化を見ることが出来ます。ただ、穀物生産の予想では、そうした情報を有益で数量的なものに変換する必要があります。天気の変化がどの程度、将来の収穫に影響するのか? さらに言えば、穀物の収穫に対する天候変化の影響は数量的にどの程度なのか、ということです。そしてこの段階では、データ解釈に関する経験が重要になってきます。全く同じ様相の収穫年度などあり得ませんから、その意味では、この分野で年数を積んでいることが役に立ちます。

画像データを解釈する過程を、説明してください。

衛星写真は過去データですが、先々を予想する際に利用されるデータの1つです。また、予想を多角的に検討する際にも、重要なデータとなります。もちろん、作付けや実りなどの時期には、実際に現地を訪れて情報を収集します。ただ、こうしたフィールド作業とは異なり、衛星写真の利用では、穀物の生育状況を州や国の単位で、継続的にモニターすることが可能なのです。また、広範囲の穀物生産地を直接モニターすることで、衛星写真は、世界の穀物生産における新しい流れを察知するための最良のツールともなります。

例えばここ5年、南アメリカ、特にブラジルとパラグアイでは、以前に比べてより早い時期に穀物の作付けが行われていることが、衛星写真から分かっています。こうした早期の作付けによって、干ばつや疫病のリスクを軽減しているのです。リスクが高まる時点では既に、作物は結実をほとんど終えているからです。

衛星写真が察知できる問題には、どんなものがありますか?
干ばつ、疫病、栄養素の欠如などだけでしょうか?


選択肢は数多くありますが、大概は干ばつ(の発生、または回避)を察知します。いろいろなテクニックがありますが、例えば、緑地帯を指数化して緑地濃度の程度を割り出したりします。この情報は間接的に、干ばつ、または栄養素の欠如と関連しています。

農産物におけるリモートセンシングで、最大のユーザーは誰ですか?

顧客の多くは、ヘッジファンドや家畜餌料のサプライヤーです。リモートセンシングによる情報の、間接的利用者のグループです。一方、こうした情報を直接利用しているグループの中で最大なのは、精密農業の従事者だと思います。大規模な個人農場を運営している場合が多いですね。

リモートセンシングが特に役立つ、またはそれが一般的に使われている農産品はありますか?
例えば、アジアでの大豆やパーム油などの収穫や相場を予想する場合、リモートセンシングはどの程度、重要視されるのでしょうか?

穀物にはそれぞれ個性があり、ファンダメンタルズに違いがあります。主要穀物や脂肪種子作物では、作物の成長過程が容易に察知できることから、リモートセンシングは有効に機能します。作付されてから緑を増し、結実し、乾燥し、そして収穫、という一連の流れを衛星写真は追い続けることが出来るのです。さらに、今年の成長過程を豊富な過去データと比較することも可能です。

一方で、インドネシアのパーム油やサトウキビ、コーヒーなどの作物は、異なる成長過程を辿ることから、衛星写真でのデータ収集が難しい作物です。これらは樹木作物で、収穫は数年に渡って続きます。例えばパーム油では、作物が収穫された後も樹木が残ります。リモートセンシングにおいてこれは大問題で、作物が収穫された後に樹木が残っていることから、緑地密度の変化が察知できないことになります。

リモートセンシングは、農産物のデリバティブ取引をする人たちの間で、どの程度一般化しているのでしょうか?
こうした情報を使って、ソフト・コモディティーの市場価格の変化を見通すことは可能ですか?


取引を有利に展開するため、市場参加者の間ではリモートセンシングの利用が増えています。現時点では、時間を必要とし、コストも高い現地調査に依存することなく、広範な地域を継続的に概観し、観察することができる唯一のツールがリモートセンシングなのです。

しかしながら、このツールが一般化するのを阻んでいるのは、そのデータの解釈には技術を要すること、そして、画像処理によって取得データを情報に昇華させる必要があることです。ただ、私たちが行っているアプローチは、数値化を可能にしています。地域や数量、収穫などについて、具体的な数値が予想できるのです。また、このアプローチには、適時性というメリットもあります。回数も多くできますし、米農務省などの機関よりも一足先に予想を出すこともできます。

例えば、米国では今年、大豆やトウモロコシが過去最大の収穫量となりました。リモートセンシングによる画像データに加え、天候観測や現地調査を行ったことで、私たちは有利さを手にしていたと思います。衛星画像を通じて、誰よりも早い段階で記録的な収穫高の証左を得ていたからです。当然、私たちの顧客はこうした情報を、誰よりも早く手にしていたことになります。



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