アリババ上場から企業によるベンチャー投資を考える

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2014年9月24日 || MARK FIELDS

9月18日、金融メディアは中国の電子商取引大手、アリババ(NYSE:BABA)のIPO(新規株式公開)に高い期待を寄せるニュースや予測で沸いた。 上場初日に公開価格68ドルを上回って取引されると予想されたからだ。実際、そのとおりの展開となった。金曜日の終値は1株93ドルを付け、時価総額はおよそ2300億ドルに達した。 アリババは、創業から15年で、世界最大級の時価総額を誇る企業となったわけだ。

一方、アリババの主要提携先であり主要株主である米ヤフーの時価総額は、同日終値で約410億ドルだった。同社はアリババ株の16%を保有しており、その価値は現在およそ380億ドルになる。 ということは、米ヤフーにはその差額の価値しかないのだろうか。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると「アナリストはアリババ上場後の米ヤフーの市場価値を約70億ドルと評価している」という。 どうして、こうなったのだろうか。

米ヤフーは、2005年に現金10億ドルの投資および中国事業の譲渡と引き換えに、当時は約40億ドルで評価されていたアリババ株40%を取得した。同時期、米ヤフーの時価総額は約470億ドルだった。
このような取引をした理由について、当時米ヤフーの最高経営責任者(CEO)であったテリー・セメル氏は、次のように説明している。
アリババとの提携は、米ヤフーがこの地域で勝つための最善のアプローチなのです

そして今も昔もアリババのCEOであるジャック・マー(馬雲)氏は、次のように付け加えている。

「アリババ・ドットコムの事業にヤフーチャイナ(中国雅虎)が加わることで、当社のサービスが拡充され、中国のネットユーザーに優れた検索手段を提供できます。 アリババ・ドットコムは中国で、B2B(企業間取引)に勝ち、C2C(消費者間取引)に勝ち、オンライン決済に勝ち、そして今度は検索分野にも勝とうとしているのです

下線を引いたのは、この取引に対して両者が目指すところの違いを際立たせたかったからである。

誰のビジョンが実現したのか?

米ヤフーは創業から20年以上が経つ。 1995年にベンチャーキャピタル(VC)からおよそ700万ドルの資金を調達し、1996年には株式を公開して上場初日の時価総額は8億4700万ドルとなった。それから9年後の2005年には時価総額が470億ドルに達した。VCが当初拠出した資本額の7000倍近くになったわけだ。 アリババと戦略的提携を結んだのは、このころである。そして、それが両社の運命の分かれ道となった。

マー氏の発言に注目してほしい。同氏の焦点は、自社の顧客が求めていることにあった。システムの問題点を明確にし、急拡大する顧客基盤の貪欲な欲求にこたえるため、既存のプロセスとテクノロジーの組み合わせに、さらに新しいテクノロジーを積み重ねていったのだ。それとは対照的にセメル氏の焦点は、中国でのシェア拡大と「検索」分野での成功だけにあった。氏は既存のテクノロジーを用いて新しい地域で成功するつもりだったのだ。その考え方は論理的である。しかし、それはいかにも直線的であり、累乗的(指数関数的)ではなかった。

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アリババが世界的大企業として急速に台頭した理由のひとつとして、今テクノロジーの発展が「潮の変わり目」に差し掛かっていることが挙げられる。しかも次の「一大潮流(ビッグシング)」は、かつて起きた流れよりも早く起こっているのだ。米ヤフーにとって一大潮流とは、検索技術とワールドワイドウェブ(WWW)であった。 そしてアリババにとって一大潮流とは、テクノロジーの融合であった。それによってサービスが統合され、顧客に大きな価値をもたらしたわけだ。アリババが、この先さらに価値のある成果を生み出していくか、事業をうまく展開するか、あるいはヤフーよりも早く時代に取り残されるか、非常に注目される。

この話はコーポレートベンチャーキャピタル(CVC、訳注:事業会社が立ち上げた新興企業向けの投資会社)、事業開発(BD)、企業M&A(合併・買収)といった動きと関係がある。それは、どれもが健全な戦略的経営に寄与していることだ。企業がCVCを推進するのは、累乗的現象を活用するためである。

VC業界には、中核事業に新たなテクノロジー、破壊的な影響、あるいは持続性をもたらしてくれる人材がいるはずだ。 投資して新たな価値を創出できなければ、置いていかれるだけである。

1995年にヤフーに投資した唯一のCVCが、ロイターであった。 当時ロイターは世界的変化に直面していた。同社の閉鎖的な情報インフラが、複数の媒体から無料でニュースや情報を得られるWWWとの競合にさらされていたのだ。そしてロイターは、事業内容が変化しているものの、今も世界とのつながりを維持している。米ヤフーに市場データを提供していなかったら、1995年に投資をしていなかったら、その投資ですぐに軍資金を増やしていなかったら、そして中核事業を収益化させる新しい道筋を見つけていなかったら、どうなっていただろうか。

マー氏は、アリババを上場し、BDやM&Aを活用して、成長そして価値の創造を加速させている。氏は、市場、勢力図、そして顧客の好みが急激に変化しており、それに遅れをとらない唯一の方法は、テクノロジーを相互に積み重ねて生き残ることだと読んでいたのだ。

これからの潮流の変化は、これまでよりも早いだろう。こうした変化に真正面から取り組み、ベンチャー投資、提携やM&Aの賢明な活用をとおして、機を見るに敏であれば、うまくいくはずだ。

マー氏は、正しい時期に、正しい取引をまとめ、うまく遂行した。一方、米ヤフーは経営者の交代を何度も繰り返している。初期段階では直線的思考でもかまわない。累乗的傾斜も最初はさほど急ではないからだ。 テクノロジーがその傾斜を急にしていく。 累乗化の時代はまだ幕を開けたばかりである。


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