金融セクターを進化させる新たなテクノロジー

THE EMERGING TECH THAT’S ADVANCING THE FINANCIAL SECTOR

2014年9月5日 || OPENMARKETS

金融セクターでは、高性能なコンピューティングがその浸透度を高めていて、例えば、マーケティングや長期的な投資戦略など、これまで人の手を介すのが前堤となっていた様々なビジネス分野で、その機能が再定義されている。

TABBのシニア・アナリスト、E. ポール・ロワディJr氏は、こうした機能変化は、ここ数年、新しいコンピューティングやネットワークツールが及ぼす影響を、主にトレーディングのさらなる迅速化という領域に限定して取り入れてきた金融セクターにとっての変化でもある、と考えている。

金融セクターは、 広範囲に渡る高性能コンピューティングへの移行が始まっている HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)の広範囲な導入を目前にしている 。多くの業種に多大な成長をもたらしたHPCは、中でも、その技術を必要とし、自らそれを開発したリテール向けオンライン企業に大きな成長をもたらした。 一方で、ロワディ氏は金融界のHPC導入実績について、「まだ初期段階だ」とした上で、 「どれ1つ、本格的になっているものは無い」と現状を指摘し、「この話題が一層の注目を集める様になったのは、ここ半年に過ぎない」と説明する。

HPCは、処理速度とデータ処理での分析の複雑さが評価対象となるので、同氏は 「この2つの軸で表される世界に、金融セクターのHPCがある」と話す。 HPCは、マルチプロセッサコア、マルチサーバー、機器のマルチクラスタで構成される並列構造で、指示の基本単位であるスレッドを、マルチ(複合的)かつコンカレント(一括)に実行するシステムである。 ロワディ氏は、「並列構造が層を成している」と説明する。

かつて、コンピューティングの導入期には、性能の進化周波数の高いプロセッサで評価された。 これがプロセッサの性能を限界にまで高める圧力となり、イノベーションに向けたその後の進展が、既存の機器を連係汎用機器を層化するという新しいアプローチを採用させることになった。 ハードウェアでは、別の記憶ユニットの代わりに、直接本体に情報を記憶させることでデータベースの高速化が図られ、これが記憶装置内蔵型として知られる概念となった。 その後、従来のディスクドライブは、スマートフォンやタブレットなどを作動するソリッドステートメモリへと、次第に入れ替わっている。

こうしたテクノロジーの多くは、超大規模コミュニティの運営手段を必要とするGoogleやヤフー、フェイスブックといった企業によって開発され、コンピューティング能力を高める一方、コストや動力消費、所要スペースの縮小を可能にした。 また、こうした需要を背景に、低コストの機器クラスタで膨大な量のデータを記憶し、処理する ことを目的として、 オープン ソース ソフトウェアのハデュープ(Hadoop)の開発も進んだ。

インターネット企業を始めとする多くの企業では、ここ10年近くに渡りHadoopが利用されている一方、ロワディ氏は、「金融では大手銀行の一部が試し始めたばかり」とした上で、

こうしたテクノロジーの広範な導入が金融業界で全体的に拡大するときがやってきた、と予想している。

リスクとプレトレード(取引実行前)分析
一晩は必要だったプレトレード(取引実行前)分析は現在、通常勤務時間内に行うことが可能で、リアルタイムで実行することも可能だ。 こうした分析では、参照価格が簡単に手に入らない様な、複雑な有価証券などに関する価格算出が課題となる。 実際には三角法を用いることで、他市場のプロダクトの市場価格を基に、こうした価格は算出される。 ただ、算出に伴う作業はこれまで、日中の業務終了後に開始され、夜を通して行われていた。

長期的戦略
保有期間が長期に及ぶ取引戦略の管理については、現在でも、主要な意思決定は人間が行っているが、人工知能や自動化の精巧さが増していることなどから、将来的には、コンピュータがより大きな役割をこうした分野で果すようになるだろう。

対顧客行動およびプロジェクトマネジメント
ビジネス上の課題を解決する上で、データはこれまで以上に活用される様になり、対顧トレーダーやブローカーが、特定の顧客に割くべきリソースについて、電話、面談、自動化した通信手段など、どれが最良かを判断する上での助けとなるだろう。

コンプライアンス(法令順守)
一体化したコミュニケーションツールには、電話、電子メール、チャット、ソーシャル・ネットワークなどがある。 また、ビデオもこれに含まれる。 全てのコミュニケーションを監視していることを当局に示す必要がある金融機関は、行動様式を認識する高性能コンピューティングのプラットフォームを利用するだろう。 こうした監視ツールの利用は現状、多くが自衛手段としての範囲に限られている。ただ、ロワディ氏は、膨大な顧客データの分析によって、売り上げを拡大させる機会も広がる、と指摘する。 もちろん、プライバシーや透明性の必要性に配慮した、適切なガバナンス基準が不可欠であることも、氏は指摘している。

さらに、テクノロジーは企業間競争で、自社を優位にするものではあるが、決してその恩恵を保証するものではない。 ロワディ氏は、「マネジメントの観点を変える必要がある。 こうしたツールを適切に利用できる独創性のある人材が必要なのであって、テクノロジーが独創性をもたらす訳ではない」とした上で、「テクノロジーだけで競争上の優位性を得られる訳ではなく、テクノロジーは優位性を得るチャンスを提供するに過ぎない」と警告している。

氏は、ここでの成功は4つの要素(インフラ、ソフトウェア、処理能力、データと人的な資産)に依存するとして、
「この4つの要因の全てを、利用事例に応じて最適化させる必要がある。 例えば、スピードが最重要となる事例もあるだろうが、成功するには、この4つの要因を全て最適化しなければならない。 ただ、最終的に重要なのは人材だ」と結論付ける。 ロワディ氏は重ねて、「適した人材があれば、ハードウェアやソフトウェアを調節してデータを利用することが出来、ここから得られる結果は、競争上の優位性が高いものになる。 一方で、誰もが適材に恵まれる訳ではない」とも指摘している。

企業は、高品質のエンジニアリングスキルを持つ人材や、より多くのデータ分析家、データ管理者を取り込む必要がある。 中には、プロセスエンジニアやユーザーエクスペリエンスのデザインスキルを持つ人材を必要とする企業もあるだろう。 実際、エンジニアとしてのスキルがない人々がデータを理解し、扱うためには、データの提示や可視化がカギとなる。

コスト低減が期待できるクラウドを用いた高性能コンピューティングもあり、その利用が拡大するだろう。利用環境は平準化され、新設の企業であっても、金融市場にイノベーションを容易に導入できるようになる。 また、企業はテクノロジーや才能を資産とするのではなく、インターネットを通して単にリースすることも出来るのであり、必要なサービスに対してのみ対価を支払い、リアルタイムで自らの事業規模を拡大・縮小するなど、調整することが可能になる。

ただ、こうした変化が一夜で起きるわけでない、とロワディ氏は言う。 企業構造や文化、業務のプロセスは緩慢に進化するものなので、「全体としては、少しずつ変化していく。ただ、こうした変化の過程には、能力を急伸させるものもあり、イノベーションを急展開させるものもある」と指摘する同氏は、

時間の経過につれて、こうした出来事が及ぼす影響は深淵なものとなると考えていて、「HPCで、独創性のレベルは無限に広がる。 しばらくの間は緩慢に見えるかもしれないが、イノベーションの速度はやがて、加速度的になる」と予想している。



Related Entries
CMEグループについて

CME Group
CME、CBOT、NYMEX、
COMEXから成り、世界を
先導する多彩な金融市場です。
グローバルおよび地域的経済・
金融に関するブログをお届け
します。CMEグループの日本語サイトはこちらをクリック。

CMEグループのリソース
CMEグループのツイッターで
@CMEGroupJapanをフォローください。
月次アーカイブ
検索
QRコード
QR
OpenMarketsについて
OpenMarketsは、CMEグループが発信するオンラインマガジンです。本ブログは、日本のトレーダー向けに、主に同マガジンから抜粋した記事を翻訳した
ものです。新たな商品紹介、
ケーススタディ、テクノロジー アップデート、今話題のトピックなど、デリバティブ産業への
従事にお役立てください。