S&P500種株価指数を支える能動的な委員会の存在

INSIDE THE SP 500 AN ACTIVE COMMITTEE

2014年8月8日 || DAVID BLITZER

S&P 500種株価指数の維持管理は、市場専門家で構成される指数委員会が行っている。この委員会はまた、銘柄選択のガイドラインを含めて、この指数に関する変更手順の詳細な方法論を公表している。一方で、S&Pダウジョーンズ・インデックスが管理しているその他の指数や、その他の指数提供業者が管理している大方の指数とは異なり、S&P500種株価指数 には厳密で絶対的な規則は存在しない。このことは、指数の採用銘柄に関する取捨選択や市場イベントへの対応について、指数委員会がある程度の裁量権を有している、ということでもある。

そういう意味では、多くの指数が各々の規則集に副って維持管理されている一方で、S&P500種株価指数にはどうして委員会が存在するのか、と指摘されることが多い。例えば、ラリー・スウェドローはETF.COMに掲載した記事で、「指数委員会の存在は、S&P500種株価指数が積極運用されていることを意味する」という、既に議論され尽くされた感があるポイントを取り上げている。

ただ、同氏はこの記事で、S&P500種株価指数は指数として「問題ない」と結論付けている。また、資産運用会社のレッグ・メイソンで、かつて著名ポートフォリオ・マネージャーとして活躍したビリー・ミラーも、同様の指摘をしている。実際、市場パフォーマンスを上回る輝かしい記録を多く保持していた彼は、S&P500種株価指数について、これを上回る運用パフォーマンスを出すのが極めて難しかったという部分の実績も認めている。その上で同氏は、S&P500種株価指数については積極運用が成功を収めており、このことは指数委員会が優れたアクティブ運用のマネージャーである証左だ、とも指摘している。

S&P500種株価指数を維持管理する指数委員会の使命は、大型株のセグメントに注目し、この指数に米国経済を反映させることである。したがって委員会は、市場のリターンをアウトパフォームするような銘柄を探しているわけではない。 むしろ、規模、流動性、最低浮動株数、利益率、そして市場とのバランスといった銘柄選択のガイドラインを基に採用した銘柄群によって、この指数に米国株式市場の全体像を正確、確実に反映させようとしているのである。

正しい数値を毎日、公表することだけで指数が存続するのであれば、その維持管理に関する規則集だけで十分なのかもしれない。ただし、市場がそうした規則集に想定されていない展開になった場合などでは、いかに厳密であったとしても、規則集で指数を維持管理するのは無理だろう。 S&P500種株価指数の場合、委員会は定期的に会合を開き、指数や市場の動きを監視している。ガイドライン、または規則集に見直しが必要な場合、委員会のメンバーは課題を理解した上で、必要な変更を施す。さらに重要なのは、想定外の事態が発生した場合、委員会は素早く反応できるということである。もちろん、規則集に基づいた指数でも、その規則の書き換えは可能である(実際、書き換えられている)。しかし、規則を書き換えるのは誰なのだろうか。想定外の状況に対応する準備が整っていて、規則を書き換えられる立場の人がいるのだろうか。あるいは、こうした状況になって初めて、規則の変更や追加・削除を諮問するための委員会を立ち上げるのだろうか。

振り返ってみると、金融危機やリーマンが破たんした前後の数週間は、想定外だった。 リーマンブラザーズが自己破綻を申請した直後、米財務省が世界最大規模の保険会社の1つ、AIGに対して救済措置を講ずる、とのニュースが流れた。突如として、米財務省はAIGの発行株式の90%超を保有することになったのである。 一方で、S&P500種株価指数のガイドラインは、採用銘柄の浮動株数について最低でも50%と規定している。これに従えば、AIGは指数から除外されなければならない。しかし、金融危機を背景としている状況でAIGを指数から除外すれば、株式市場が暴落の度合を強めることにもなる。最終的に、市場環境と投資家不安を考慮し、委員会は50%の浮動株という規則に目をつぶった。AIGの採用除外を、実行しなかったのである。数年後、財務省は保有していたその株式を同社に売り戻し、AIGは50%の最低浮動株数規則に抵触しなくなった。

これほどドラマチックではないが、この他にもいくつか同様のケースがある。 例えばこの春、グーグルは株式分割を実行し、議決権のない株式を新規発行した。結果として、S&P500種株価指数に変化を生じさせた。そしてこの出来事は、市場を継続的に監視する委員会が不可欠であることを示す結果にもなった。 順を追うと先ず、S&Pダウジョーンズ・インデックスはグーグルの決定が発表された時点で、指数規則に基づくS&P500種株価指数の修正を発表している。ただ、 グーグルの動きについては多種多様な報道がされていたにも関わらず、主要な投資家やインデックス・ファンドは、実際のスケジュールが公表されるまで、S&P500種株価指数を継続してトラックするための調整として、どんな取引がどの程度必要となるかについて無関心だった。そんな中、一部のETF発行体が懸念を表明する。議論を再開した指数委員会は、主要投資家の多くから意見を募り、グーグル株分割の取り扱いや指数の管理規則に修正を行った。 これらは全て、委員会が問題を把握し、素早く対応したからこそ可能となったものである。結果的に、 規則に基づくその他の指数の一部については、S&P500種株価指数の指数委員会がここで採用した修正に準じる動きとなった。



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