アジアの農産物商品: エルニーニョの再来に備えて

AG COMMODITIES IN ASIA BRACE FOR EL NINO’S RETURN

2014年8月5日 || OPENMARKETS

天候に関しては今日、異常気象の度合が進行していることが唯一、明白なことだと言える。そしてアジアでは、インドネシアからマレーシアに至るその大半が、ここ17年で最悪の干ばつのただ中にあり、これによりさまざまな穀物の価格が急騰している。

さらに、5年来となるエルニーニョ現象が今秋に発生するとの予想は、この異常気象の度合の高まりによって、多くの農産物が被害を受けるだろうということを示唆していることになる。

3月初旬、 米国海洋大気庁 (NOAA) は、エルニーニョ現象が発達する確率を50%と予想した。一方で、コロンビア大学 国際気候・社会研究所は、その確率を8月時点で70%、10月までで75%から80%とした。

エルニーニョ(暖気の発生) は、貿易風の勢いが弱まり、温かい海面が太平洋西部に吹き寄せられることで発生する現象である。かつてアジアに発生したエルニーニョ現象は干ばつと洪水の両方をもたらし、1997年には特に深刻な状況となった。今回は、インドネシアやマレーシアでは乾燥した暑さが、中国南部および長江流域では豪雨が、それぞれ予想されている。

一方で、市場参加者にとってこれまでと異なるのは、異常気象が商品市場に与える影響に対して、これに備えるための多様で改善されたツールが用意されていることである。洗練されたのは気象予測だけではなく、異常気象の影響に対してより広範な種類の先物やその他のデリバティブ取引が提供されており、そのリスクをヘッジすることが可能になっているのである。

エルニーニョ現象の発生が予想される中、農産物商品の相場展開を乗り切るポイントについて、CME グループ シンガポールでコモディティ商品のエグゼクティブ ディレクター を務めるネルソン・ ロー(Nelson Low) と、CME グループ シカゴで天候およびオルタナティブ投資商品のマネジャーを務めるハイディ・セントラ(Heidi Centola) にインタビューした。ハイディは 、天候リスク管理を促進する国際的な業界団体である天候リスクマネジメント協会 (WRMA) の役員も務めている。

エルニーニョ現象は、その85%がアジアで生産されるパーム油などの穀物に、大きな影響を及ぼすのでしょうか。
ハイディ・ セントラ(Heidi Centola, HC):
エルニーニョ現象が発生する数年間は通常、その影響を受ける地域の降水量が平年を下回るため、穀物の収穫率は低下します。しかし、こうした収穫率の低下には、エルニーニョ現象以外の要因が影響している場合もあります。例えばパーム油の場合、現在の天候が生育や収穫に影響することは、2015穀物年度まではおそらくないでしょう。収穫への影響を予測するには、パーム油が生育期間の長い農産物であることを念頭に置いておかねばなりません。一方で、供給量の低下予想を背景に、パーム油市場は既に一段高となっています。天候による影響を受ける農産物は、現状ではなく、明らかに先々の見通しで取引が行われているのです。

今年、パーム油先物に何らかの影響はありましたか。
ネルソン・ ロー(Nelson Low, NL):
目立ったところでは、ヘッジャーからはパーム油価格の変動リスクを管理する需要が、スペキュレーターからは価格変動の拡大を背景とした取引需要が多くあります。当グループの提携取引所であるブルサ マレーシア デリバティブ(Bursa Malaysia Derivatives (BMD))では、パーム油価格の世界的指標と言える主力商品の粗パーム油先物取引を上場しています。2010年にCME グループのGlobexのプラットフォームに上場されて以来、同先物の日中売買高平均は年率約20%増加しています。これは、市場参加者が、このパーム油先物の取引に熟練してきたことの表れです。2013年、BMDの協力を得て当グループは、米ドル建て粗パーム油スワップの扱いをClearPortで開始しました。この取引も目覚ましい成長を見せていて、2014 年第2四半期の清算高は28%増(四半期比)に達し、取扱い開始以来の最高水準を記録しました。

不安定さを増している気象条件も影響して、年初来の出来高も急増しています。天候関連のリスク管理ニーズは、高まりを見せているのです。

アジアでのエルニーニョ現象発生により、他にはどんな商品が影響を受けるのでしょうか。
HC:
パーム油以外では、おそらくインドやオーストラリアの小麦生産も少雨の影響を受ける可能性があり、価格の上昇要因となるでしょう。
また、中国はトウモロコシと米の主要生産国です。世界的な供給量の減少と言うことになれば、グローバル市場やCME グループの主力商品である穀物や油糧種子の相場動向に影響します。例えば、中国でのトウモロコシの生産量に重大な不足が生じれば、世界最大の消費国である中国の需要増加予想を背景に、相場は上昇する結果となるでしょう。

主要穀物市場を別にしても、異常気象による食物連鎖を介した副次的な影響があります。例えば家畜は、飼料価格の上昇と牧草被害の両方から影響を受けます。実際、2013年には、ここ約70年で最悪と言われる干ばつ被害が発生したニュージーランドで、牛肉や牛乳と同様に羊肉の生産にまでマイナスの影響が及び、グローバル市場の価格を押し上げることになりました。

今日、天候関連リスクのヘッジに関する市場の関心が、一層の高まりを見せています。この背景は、何でしょうか。
NL:
要因は、2つあると思います。第1に、異常気象の発生頻度の高まりとそれに関連した農産物の価格変動率の増大により、リスク管理の必要性と重要性に関する意識が総体的に高まってきたことです。第2に、気象予測の技術がここ10年で劇的な進歩を遂げたことにより、質の高い予測が利用可能となっていることです。

衛星の数が増えると共に気象予測の精度は飛躍的に高まり、その観測範囲も拡大しています。アジアと南米の気象観測に関しては、従来の米国や欧州に加えて、観測体制がさらに重層化しています。さらに、Google Earthのサービスを応用した穀倉地域の衛星画像を用い、その濃淡を前年の画像と比較することで、今年の収穫予想を行うことも可能となっています。

高度の信頼性を持ち、特定地域に限定した気象予測が世界各地で始まったことから、市場参加者は現在、これまで以上の確信性を背景にヘッジや収益目的のポジションを設定しているのです。 気象予測で優位性を確保することはこれから、さらに重要度を高めることになるでしょう。

こうした動きの例として、銀行やヘッジファンド、そして農業関連産業までもが、外部の気象予測に頼るだけでなく、独自に気象予報士を雇い始めていることが挙げられます。天候リスクを管理するという需要のさらなる高まりに対応するため、CME グループでは、気温や降雨、ハリケーンを対象とした一連の天候関連デリバティブ商品を提供しており、天候に影響を受ける農産物の収穫リスクだけではなく、天候自体のヘッジも可能にしています。

天候関連リスクのヘッジが主流になっていく、ということでしょうか。
その通りです。業績見通しに関して将来的に発生し得る全てのリスクを開示する義務を負っている上場企業の多くでは、株主への務めとして、こうしたリスクに対応する能力を求められているという認識を経営陣が強めています。さらに、リスク管理において天候関連のリスクも管理の対象としている企業に対して、投資家はこれを評価する傾向にあることも示唆されています。

つまり、天候関連リスクの管理は企業のベストプラクティスとして急速にその認知度を上げている、と言えると思います。

CME グループの天候デリバティブを利用して、アジアにおける天候の影響をヘッジする機会はあるでしょうか。
HC:
当グループのアジアに関する関連プロダクトは気温に特化しているため、天候リスクに関する明白な選択肢とはならないでしょう。ただ、広島と大阪、東京の気温に関連したリスクのヘッジには役立ちます。この種のプロダクトは、気温に関連したエネルギーに対する需要、という観点から利用される傾向があります。将来的に市場が進展するにつれ、こうした分野のプロダクト・レンジは拡大していくもの、と考えています。

米国の天候商品は、アジアにおける天候リスクをヘッジする代替ツールとして利用できるでしょうか。
HC:
当グループが米国で提供している天候商品は、種類も豊富です。しかし、こうした商品がアジアの天候リスクを管理するための有効な代替ツールになるとは思いません。アジアにおける天候関連リスクをヘッジするのには当面、当グループの主力商品である穀物や油糧種子、家畜、乳製品の先物やオプションが、最も有効性の高いプロダクトだと思います。

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