銀メダルの心理学 ― 損失回避と金属市場

HOW IT FEELS TO WIN SILVER

2014年2月25日 || JODIE GUNZBERG

「銅メダリストのほうが、メダリストよりも幸せそうに見える」――。何十年もオリンピックメダリストの感情について研究してきた心理学者たちによると、金メダルに輝いたアスリートたちの幸福感はさておき、2位と3位になった人たちに注目してみた場合、常にそのような結果が出たという。

行動経済学を学んだ投資家であれば、銀メダリストが自分自身を「金を逃した敗者」と、とらえていることに驚きはないはずだ。 経済学では、こうしたとらえ方(フレームワーク)を「損失回避性」と呼んでいる。「人は利益を手にしたときの幸福感よりも、損失による苦痛のほうが、より強く感じる」というものだ。

ある取引を損失ととらえるか、利益ととらえるかは、とても大きなポイントである。 例えば「500円引き」と「500円の追加料金を免除」では、あなたはどちらを選ぶだろうか。 価格的には同じでも、とらえ方の違いで、消費者の行動は大きく左右されるのだ。 伝統的経済学では、これを「授かり効果」と呼び、損失回避性によるあらゆる影響が完全に不合理だとみなされている。しかし、だからこそ損失回避性は、マーケティング行動経済学の分野では、非常に大事なテーマなのだ。

損失回避性の概念を初めて提唱したのは、エイモス・トベルスキー氏とダニエル・カーネマン氏である。 その流れをくむジョン・ドーズ氏は「定期購入型市場での価格変化と離脱水準――評価モデルは本当に離脱水準を予測できるか?」(『ジャーナル・オブ・サービシーズ・マーケティング』2004年第18巻第1号)という論文で、保険料の変化に対する消費者の行動を研究し、損失回避性がマーケティングにもたらす効果について論証した。 その研究から明らかになったのは、保険料の値上げをすると、値下げをした場合に比べて、顧客の乗り換えが2倍に増えたことだ。

2014年2月18日現在、価格は年初来13%、月初来14.5%の上昇を見せている。とらえかた次第では、同様の不安感が生じているかもしれない。 例えば、ある投資家が2月に、数あるコモディティ(商品先物)の中から銀を選んだとする。これは勝ち組の選択といえるだろう。 ところが、S&P GSCI商品指数採用銘柄の中で、同月の銀のパフォーマンスは2位だ。1位は21.7%の急騰となったコーヒーである。 この投資家が2位のコモディティを選択して「7.2%損した」ととらえているのであれば、それほど幸せとはいえないだろう。

行動経済学で注目されているもうひとつの不合理な行動が「アンカリング効果」と呼ばれるものである。 アンカリング効果もトベルスキー氏とカーネマン氏が提唱した概念だ。「人は最初に受けた価値を基準にして、現在の価値を判断してしまう」というものである。 例えば、2010年のオリンピックで競い合った2人のアスリートのうち、ひとりが金メダルで、もうひとりが銅メダルだったとしよう。そして次の2014年大会では、両者が銀メダルを獲得したとする。金から銀に落ちたアスリートの不満は、銅から銀に上がったアスリートよりも強いだろう。

下記、本稿原文の銀市場のチャートを見てほしい。現在、買った価格に基づいて銀のポジションを保有している人と、売っている人では、抱いている感情が異なるだろう。 しかし、過去の価格にとらわれるのは不合理な行動といえる。これから買うにせよ、ポジションを保有するにせよ、売るにせよ、その判断をするにあたって、過去に買った価格は関係ないはずだ。過去ではなく、将来との関係から、現在の価格に基づいて判断すべきである。 2008年10月に銀を購入した投資家は、2011年4月の高値で転売しなかったことを後悔しているかもしれない。 一方、2014年の初頭に銀を買って13%の利益を得た投資家は、幸福感に浸っているだろう。もちろん、それはコーヒーでより大きな利益を獲り損ねたことを後悔していなければの話だが。

本稿の原文は「Indexology blog」の記事を転載したものである。


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