中国の改革と農業事情の変化

HOW CHINA’S REFORMS HAVE ALTERED THE AGRICULTURAL LANDSCAPE

2014年2月26日 || NELSON LOW

これまで、中国の金融自由化については、金利や資本の自由化がその焦点となっていた。 そして、これ以外の分野で中国政府が市場価格導入の方針を示しているのが、農業である。この分野では、食料の国内生産の効率性を大幅に改善するために必要な改革が、推し進められている。

歴史的に中国の農業は食料安全保障の観点において、世界人口の4分の1にあたる国民の食料確保への責任という側面から、管理性の強い分野だった。

また、米国と同程度の国土を有しながら人口はその4倍であり、加えて耕地面積が限定的であることからも、中国でその責任を全うするのは難しいこととなっている。さらに、耕作に適した肥沃な土地となると、全国土のおよそ14%にまで対象は狭まる。 同時に、人口が必要とする食料は着実に増加する一方で、こうした耕作適地は縮小し続けているのが現実となっている。

30年におよぶ二桁成長は、汚染問題や水不足が深刻化する中で、この貴重な資源に対する負荷を高める結果にもなった。 2013年12月、中国政府は、耕作適地の2%以上(ベルギーの国土に匹敵する広さ)が穀物生産には適さないほどに汚染されている、とする国土調査を発表している。

食料価格の上昇

中国政府に行動を促している要因には、食料価格の上昇抑制がある。中国における食料価格の上昇は、歴史を紐解いても、政治的な影響が懸念される問題でもある。エコノミスト誌の調査部門 The Economist Intelligence Unit のデータは、近年、中国の食料価格が米国のそれを凌ぐ速度で上昇していることを示している。

必要な食料を確保するため、中国が効率性改善のための対策を早急に必要としていることが分かる。

食の保全についてはこれまで、農耕地を維持し、充分な農産物の生産量を確保するため、小規模農家に寛大な援助金を支給することがその主な対応策となってきた。中国政府は、1億2000万ヘクタールを耕作地の最低ラインとして、これを下回らない方針を貫いてきた。 現在、中国政府は農業分野での効率性を大幅に改善するため、多角的なアプローチで臨もうとしている。

こうした変化の一つに、農地の生産性を高め、農家の権利拡大を目的とした、新しい農地改革がある。 この改革では、例えば、集団保有という建前を維持しながら、農家による契約耕作地の耕作権売買が認められることになる。 農家が耕作権を担保とする事を可能にすることで、より大規模な農業従事者の登場を助長することが期待されている。 耕作地を背景とした資産収入を高めることで、投資や農作業の効率化に対して、農家はより大きな度量で対応することが可能となる。

一方で、農家には補助も必要となっている。 農産物価格の規制緩和に関する改革においては、一部の価格保障や補助金などの適用廃止もあり得る。

例えば、2013年11月、国家発展改革委員会の地方局局長は、「穀物価格の決定は市場に委ねる段階に至った」と発言したと報道されている。

もちろん、こうした変化には多大な影響も予想される。

中国政府は、最低買い上げ価格制度を適用している小麦、豚肉、トウモロコシなどの一連の農産物について、こうした支援策の見直しの検討を始めている。

現状、例えばトウモロコシに対する中国政府の支援は、米国のそれの2倍となっている。小麦についてもほとんど同様であり、砂糖についても寛大な補助が成されている。

近代農業の登用

変革の影響によって、不確実性が生じる。例えば、これまでの大規模な備蓄は、縮小に転じると予想されている。 同時に、中国が大口の直接輸入国に転じる可能性もある。

1月に公表された年次農業政策の草案では「農業の近代化」が主眼に置かれ、生産物に関しては量よりも品質について言及された。 草案では、自給率95% を維持してきた長年の食糧自給政策からの転換を示す内容となり、"適量の"輸入を認めている。 2020年までに、2013年の生産量である6億300万トンを下回る、5億5000万トンで生産を安定させるとした同素案は、中国における穀物生産の新しい指針となることが予想されている。

国際価格への潜在的な影響という観点からも、中国の農業政策には注視していく必要があろう。 米農務省によれば、米と大豆に関して、中国は世界最大の買い手とされている。 また、小麦については世界第2位、トウモロコシについては同4位の輸入国とされている。長期的には、中国国内の価格は、国際価格に収束する傾向を強めることが予想される。

中国の農産物デリバティブ

こうした変化は、中国国内の農産物デリバティブ・ビジネスにも影響を与える。 特に顕著であることが予想されるのは、以下の3つである。

第1に、中国の農産物価格のボラティリティーは、上昇することが予想される。さらに、これを背景として、中国国内の取引所で上場される農産物先物を介したヘッジ需要の増大が予想される。 こうした動きから最大の恩恵を受けるのは、例えば、大連商品取引所(DCE)や鄭州商品取引所(ZCE)などの取引所だろう。

第2に、中国国内の価格が国際価格に接近するようになれば、諸条件を勘案した理論値が再度確立され、国内先物と海外先物とのスプレッド取引なども活況となることが予想される。 これにより、CMEグループの農産物商品や人民元先物なども、商品価格や為替などへのリスクのヘッジ需要を背景に、恩恵を受けることになる。

第3に、農産物の輸入が拡大するに従って、中国の輸入業者は価格リスクを管理するため、国際的な先物をヘッジのツールとして重要視する様になる。 輸入品の多くは、今日の貿易における主要決済通貨である米ドル建てとなっている。 米ドル建ての国際的な先物を利用することで、中国の輸入業者は為替リスクを軽減し、より明快なヘッジの実現が可能となる。

中国の成長を捉えようとするデリバティブ取引所は、ここで指摘した3つのポイントに留意し、農産物のビジネス機会を絶対に見過ごすことがないようにするべきである。 中国からの参加者にとっても、始まったばかりではありながら差し迫った改革への準備として、こうしたヘッジ・ツールに習熟しておくことは重要だといえる。




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