新興国通貨の2013年を振り返る

EMERGING MARKET FX

2014年1月10日 || BLU PUTNAM

2013年、主要新興国の通貨は、大方の予想を超えて、それぞれが大きく異なる動きをした。確かに4-6月期は、米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長による量的緩和(QE)縮小に関する発言が大きな要因となって、どの新興国通貨も下落した。しかし年後半は、それぞれが独自の道を歩んだのだ。メキシコペソが比較的落ち着いた動きとなった一方で、ブラジルレアルとインドルピーはさらに下落した。

より具体的にいうと、メキシコペソは、対米ドルで4-6月期に5%弱下落し、7-9月期にはもう1%下げた。しかし10―12月期は、米国のQE縮小が公式に決まったにもかかわらず、わずかに反発した。インドルピーは、同じく4-6月期に対米ドルで9%近く下げて、7-9月期にはさらに5%下げたため、大幅下落となった。ただ10-12月期には、わずかながら反発した。ブラジルレアルも、4-6月期に同じ軌跡をたどり、対米ドルで約9.5%下落した。7-9月期は安定したが、10-12月期には再び6%下げた。 これら3通貨の動向を変動幅(レンジ)で見てみると、2013年のメキシコペソの変動幅は対米ドルで12%となる。これは英ポンドやスイスフランの対米ドルでの変動幅をわずか1%上回ったにすぎない。それとは全く対照的に対ドルで大きく変動したのが、ブラジルレアルとインドルピーだ。それぞれ26%、約30%も下げた。これは、両通貨が非常に深刻なリスクと難しい長期的課題に直面したためである。

2013年のトップ記事

2013年4-6月期に新興国通貨が下落したきっかけとなったのは、バーナンキFRB議長のQE縮小発言である。しかし、世界に起きた出来事は、それだけではなかった。シリア内戦は連日トップニュースとなり、ブラジルとトルコでは、中間所得者層が経済政策や優先課題などをめぐって、街中で抗議運動を繰り広げた。QE縮小発言にもかかわらず、米国株は驚異的な上昇を見せており、投資家が運用資産の一部を新興国の株式や通貨から、米国など先進国にシフトするのは、ごく自然な成り行きだったといえる。

しかし4-6月期に起きた最初の下落以外に、新興国通貨の動きに共通するパターンはない。それぞれがバラバラの動きをした。2013年後半は、各国特有の状況や政策が、他国と比較して、より注目されるようになったわけだ。

ブラジルレアルやインドルピーのように、特有の問題を抱える新興国の通貨は、この1年で大きく下落した。ただ、そうした問題が材料視されるタイミングにもズレがあったのだ。ブラジルでは、拡大する中間層が、政府に対して公共サービスの充実を求めて、積極的に政治的圧力をかけたことが注目された。こうした中間所得者層の抗議活動は、サッカーワールドカップとオリンピックに向けたインフラ整備の最中に起こった。そしてFX市場は同国の政治的な不透明感が著しく高まったのを反映したのだ。

厳しい資本規制をとっているインドでは、経常赤字が長きにわたって問題となっている。そこで、大量に輸入している金(ゴールド)の輸入を制限するため、税金と関税を引き上げた。だが、おそらくより重大なことは、政府が燃料と食糧に莫大な補助金を出していることである。これが経常赤字を助長しているのだ。それでもインドの通貨安は、10-12月期には食い止められた。その理由としてけっして小さくないのが、中央銀行のトップが交代し、金融および市場の改革に強い意欲を見せたことだ。一方、ブラジルレアルの下落は、7-9月期にいったん止んだものの、10-12月期に再開した。

十把ひとからげで新興国のリスクが高くなったと認識されたとき、連鎖的に“伝染”する可能性があるのは、今に始まったことではない。そして、その短い感染期間が過ぎれば、各国特有の重大で明白な相違点が大きく現れてくる。それが新興国の通貨だけでなく、株式市場も動かす原動力となるのだ。

G7通貨の見通し

米ドル、英ポンド、ユーロの取引は、2008年の金融恐慌と同時に始まったゼロ金利政策に支配されている。その意味では、量的緩和は実質的に何の違いももたらさない。米ドル、英ポンド、ユーロ間の短期金利の差がゼロに近い限り、しっかりしたトレンドを描くことはなさそうだ。市場が動くのは、政治的風向きのブレによるところが大きいだろう。

ただし例外がある――日本だ。日本はアベノミクスを導入して積極的に円安を誘導した。ドル円相場はいったん安定したものの、最近はさらなる円安要因が注目されるようになった。2014年の日本円の行方は、今年4月の消費増税による景気マイナス効果に対し、安倍首相と日銀が、どれだけの刺激策を追加してくるかにかかっている。

新興国通貨が期待される理由

それぞれの新興国通貨(と株式市場)が、流動性を拡大させており、グローバルに運用する投資家の長期ポートフォリオに組み込まれるようになってきている。それは新しい投資分野だからではない。新興国で中間層が育まれ、政府の政策が洗練され、成熟国へと進化していくなかで、自然と魅力を増していった結果である。世界情勢は、主要国の中央銀行がゼロ金利政策を維持していることで、むしろ大きくブレやすくなった。そのなかで、どの新興国も経済成長を進めるとともに生じる重大な課題に対処しているのだ。



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