変貌する世界の小麦市場に豪州はついていけるのか?

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2017年8月11日|| Nelson Low

オーストラリア産小麦が2016-17年度に記録的な収穫量となったのは、すでに市場が穀物であふれかえり、世界中の小麦生産者が価格下落に対処しているときであった。しかし、最近の深刻な天候不順、米国の小麦作付面積急減、西オーストラリア州の生育状況悪化があいまって、在庫を世界的に減らしている。長年、小麦市場を支配してきた供給過剰が解消されていく可能性がある。

豪州では2016-17年度の小麦生産が前年比45%増を記録したにもかかわらず、豪州気象局が最近表明した干ばつ懸念から、新穀小麦の生産は厳しい見通しとなっている。最新の報告では2017年10月-18年9月期の生産予測が2330万トンに下方修正された。

小麦価格は6月下旬から7月上旬にかけて急騰しており、長きにわたる価格低迷に苦労してきた農家は歓迎している。とはいえ、小麦価格の下降トレンドを保とうする、いくつかの弱材料が引き続き根底にある。

供給過剰の改善

まず、ひとつ目の弱材料は小麦が比較的打たれ強い穀物であることだ。さまざまな気候や土壌に適応する能力に優れている。つまり、他の穀物市場では小麦に比べて生産地が偏っているため、悪天候や不作に敏感になりやすいのに対し、小麦市場は地理的に完全に分散しているため、衝撃に耐えるだけの能力を備えているのだ。

こうした特性は生産者にも魅力的に映る。その結果、過去数十年にわたり世界の小麦生産は安定的に増加してきた。

生産増の大半は、ウクライナ、ロシア、EUといった大生産国によるものだ。継続的に生産を強化しているため、供給過剰に拍車がかかり、世界の小麦価格をさらに重たくしている。

永続的な小麦価格低迷を受けて、より収益性の高い穀物の生産に乗り出そうと思案する小麦農家も出てきた。しかし、穀物生産の多様化は理論的には小麦の供給過剰を軽減する効果があると考えられるものの、現時点では供給過剰の改善にほとんど影響していない。

大豆やトウモロコシから生産されるバイオ燃料が代替エネルギー源として登場したことも、長い目で見れば、小麦市場の供給に変化をもたらすかもしれない。エネルギーの自給、そして従来の化石燃料依存からの脱却を目指している国では、小麦の作付面積を減らしてでもトウモロコシと大豆の作付増に関心を持つ農家もいるはずだ。ところが、この場合も、その影響が世界中の小麦市場に感じとられるまでに、しばらく時間がかかるだろう。

インドも多少とはいえ供給過剰の軽減に貢献しそうだ。この世界第2位の小麦生産国は、過去30年の大半で、その人口を養えるだけの穀物生産と在庫を維持してきた。しかし、高温乾燥の影響を受けて収穫が低迷した年もあり、そのときは豪州、ロシア、ウクライナから大量の穀物を輸入している。天候パターンがますます予測不能になると、インドが供給過剰を改善するだけの需要をもたらす可能性がある。

アジアの需要増

それまでの間、豪州の小麦農家は世界市場の大きな変化と真剣に向き合うだけでなく、新たに現れる穀物輸出大国と競わなければならない。

在庫急増に直面して、一部生産国は小麦消費が好調な新たな一大需要地であるアジアに目を向けている。その結果、豪州産小麦のシェアは依然として東南アジアで約半分を占めているとはいえ、縮小した。

まだ東南アジア小麦輸入のほぼ50%を豪州が供給しているとはいえ、米国、カナダ、ウクライナといった他の大産地が、年を追うごとに、同地域での存在感を高めているのだ。現在では同地域輸入のおよそ42%を占めている。例えば、インドネシアは地理的にウクライナのキエフよりも西オーストラリア州のパースのほうが、はるかに近い。ところが、同国はすでにウクライナから大量の小麦を購入している。

2015年、かつては小麦の最大輸入国であったロシアが輸出量で初めて米国を抜いた。しかし、2016年には米国が再逆転し、ロシアから首位の座を奪回している。その一因として挙げられるのが、ロシアルーブルの18%近い上昇で世界中の購買者にロシア産の魅力が薄れたことだ。

豪ドルの下落

このように外国為替レートの動きは輸出に劇的な影響をもたらす。そのことは地球の反対側にいる小麦農家も熟知している。豪ドルの動きに細心の注意を払っている農家は多い。専門家は「豪ドルが対米ドルで過去数年にわたって安かったことが、豪州産小麦への力強い需要を人為的に維持していた。豪州の小麦農家は自国通貨が対ドルで強くなると窮地に陥り、さらに勢力を失うはずだ」と主張している。

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しかし、今のところCMEグループのシニアエコノミスト、Erik Norlandは豪ドル安が続くだろうと予測する。大きくは、今年後半に米国で利上げがあると予想されているからだ。そうなれば、豪州産小麦への需要が引き続き支えられるかもしれない一方で、豪ドル高が明らかになれば、小麦購買者の目は他に向かうかもしれない。

豪州では現在の供給過剰を乗り切るため、季節的な価格上昇をとらえようと農場の倉庫を増強する農家もいる。ただし、穀物の貯蔵には相当の費用がかかる。特に干ばつの年はそうだ。そのことを小麦生産者は十分承知しておかなければならない。

新たなリスク管理ツール


継続的に利用できるリスク管理戦略は他にもある。CMEグループが最近上場した米ドル建て豪州産小麦FOB先物もそのひとつだ。同商品の狙いは農家にリスク管理手段として役立ててもらうことにある。また、他の市場参加者も今や現物受渡なしで豪州産小麦の輸出価格リスクを取れる。

小麦市場が世界的に変貌するなか、さらに激化する国際競争の荒波を乗り越える方法を探している生産者にとって、一考の価値がある解決策といえる。


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