中国にはナゼ、近代的な先物市場が必要なのか

why china modern futures


2016年12月20日 || Leo Melamed


数世紀の歴史を有する先物市場であるが、CMEグループが金融先物を上昇するなど、世界の金融センターに取り入れられる結果になった近代的な市場モデルが登場したのは、1970年代以降のことである。そして、その後の成功で重要だったのは、ほとんど同時期に始まった技術革新だった。

テクノロジーの進展が、投資科学に金融リスクの基本要素の発見をもたらしたのである。そこから、金融工学によってリスクは細分化され、再構築され、収益見通しに従って再配分することが可能になったのである。パッケージ化されたリスクと収益機会は、投資家の選択に従って、より好ましい投資機会と交換することが容易になったのである。

中国では今世紀初めにCSRC(中国証券監督管理委員会)が設立されたのに続いて、その監督規制の下に、SHFE(上海期貨交易所)、DCE(大連商品交易所), ZCE(鄭州商品交易所)が、それぞれ異なった商品クラスの取引を開始させた。ただ、中国の金融先物市場への参入は、市場で人気を博している上海総合株価指数(CSI 300)の先物を上場したCFFEX (中国金融先物取引所)が、2006年に設立されてからのことになる。そしてCFFEXは、予想以上の売買高に裏打ちされ、初日から成功を収める結果になった。中国でのこうした先物市場の開発や継続的な発展の過程では、CMEも援助や助言を提供してきている。

しかしながら、中国のこれら4つの取引所は現在、成功している一方で、同様の問題を抱えてもいる。取引参加者の主体が国内投資家であり、海外からの参加がほとんどないことである。多くの商品の主要輸入国である中国の先物市場は、グローバルな価格発見機能の主要な役割を負うべきであるが、実際はそうなっていない。中国の先物市場が国境を超えたものにならない限り、中国経済における先物市場の恩恵は、これからも限定的な水準に留まり続けることになる。

中国はまた、経済成長においても過渡期的な段階を迎えている。政府は、輸出主導の製造業経済から個人消費が主導する、国内経済の成長に依存する経済モデルへの移行方針を明らかにしている。そして、この移行が進められるに従い、商品や金融において、価格発見の役割を理解することが重要となってくる。

価格発見の役割は、どの時点においても公平で合理的な価格を設定するだけではない。価格発見は、例えば自然発生する価格の変動を管理する効果を背景に、長期的には資源の効率的な配分に資するのである。価格発見の機能を高める市場参加者の多様性など、効率的に構築された市場であれば、価格発見とリスク管理が連動し、経済成長を利する形で希少な資源を配分するプロセスが機能し易くなる。さらに中国は、その輝かしい経済成長と近代化の歴史を背景に、効率的な価格発見を強調した、近代的な市場システムを構築する機会に恵まれている。例えば、何層にも及ぶ複雑で非効率な規制など、米国や欧州、日本の過ちから十分に学ぶことが出来るのである。

ここで、具体的な例を考えてみたい。米国では最近、感謝祭の祝日を迎えたばかりなので、この祝日で食されることが多い七面鳥を例に考えてみる。例えば、七面鳥料理をレストランで楽しむ人がいる。一方、レストランとしては、過去の経験などから七面鳥料理の需要を考慮した上で事前にこれを仕入れ、ある程度の期間、保存しておく必要がある。もちろん、それ以前には農家があって、感謝祭シーズンに合わせて、七面鳥を飼育している。農家から食肉処理施設まで、さらに施設からレストランまで、七面鳥を輸送するコストも考慮されなければならい。こうした過程には、周到な計画と燃料、保管などのコストが関わっている。ある時点のレストランのメニューで、七面鳥料理がいくらかと言う話ではもはやないのである。ここで考慮されるべきなのは、想定される生産コストや、連結する各経済プロセスにおける時間軸なのである。

why china figure 1

CMEグループなどの近代的な市場は、グローバルな市場参加者のアクセスを確保するため、テクノロジーに依存している

先々での引き渡し価格を確定し、穀物をフォワードで売ることが出来ることで、生産者は飼料や燃料などを長期契約で仕入れることが可能になる。生産者は、金融コストと将来的なリスクに対する管理能力を向上させたのである。さらに、将来的な穀物価格、エネルギー価格の動向、金融コストなどに関するリスクを移管したことで、生産者は効率的な生産に集中できる。

この概念は、七面鳥の飼育農家であっても、食肉処理施設、輸送サービス、レストランでも同様なのであって、それは原油、鉄鉱石、そして英ポンドでも同じなのである。先々での価格変化を管理するために今、現在において存在する具体的な価格は、こうしたリスクの管理をアウトソースすることで、例えば企業では、将来的な売り上げや収益を平均化することで、ビジネスを小資本で展開できる可能性も出てくる。経済活動において現実的に発生するこうした有利性は、経済上の利益として具体的に証明できないからと言って、その貢献が不明確になったり、減じられたりされるべきものではない。

例えば、メキシコは先ごろ、原油価格をヘッジしていたことで、2016年に29億ドルの収益が発生すると発表している。原油価格が急落と低迷を続けるなか、IMF(国際通貨基金)によると、2年続けて利益を記録することになるとされている。

堅牢な価格発見プロセスは、生産者、消費者、リスク・テイカーなど、多様な参加者による積極的な取引によって構築される。もちろん、そこには、価格情報の開示に関する透明性が前提として存在する。スポット市場とフォワード市場を連動させ、その恩恵をフルに実現するためには、価格発見における堅牢なプロセスが不可欠なのである。そのためには、参加者の多様性だけでは不十分なのであり、市場価格の透明性を維持するための規制当局による監視も、重要な要素となる。

信頼性に欠ける市場に、堅牢な価格発見を期待するのは無理なのである。従って、価格発見プロセスにおける透明性は、信用と信頼性を築く上で不可欠な要素であり、これが意味するのは市場の幅である。商品や金融など、多くのプロダクトにおいて、幅とは、ローカル市場とグローバル市場の連動性である。もしも、国内市場をグローバル市場の影響から隔離する方策が採られるなら、ここでの価格発見は堅牢とは言えないだろうし、資源配分の決定要素として用いることはできないだろう。結果として、こうしたローカル価格はグルーバル市場の価格から乖離し、国内の消費者や生産者は、彼らが有する影響力を国際価格に反映することが出来なくなる。

国内市場と国際市場がリンクすることなしに、中国市場の価格発見プロセスが、商品や金融などの資源を適切に配分するためのインセンティブとなるとは思えない。国際市場へのリンクに関しては、中国の場合、人民元の国際化も、次のステップとして重要な案件である。これが実現するまで、中国における価格発見は構造的な問題を抱え続けることになる。

最後に、市場の完全性維持を担保した上で、そして改革のスピードを鈍化させない範囲で、金融市場改革をリードする規制環境を構築するという課題がある。国際標準となっている規制レベルが導入されるべきであり、市場の法治化も必要となる。そして、中国はこうした課題に向けて、達成レベルを高めている。その意味では、何層にも及ぶ不必要な規制によって、改革が混乱に陥ったり、経済成長を妨げる要因になったりした米国や欧州、日本の過ちを回避できる可能性が高い。

参入障壁を排除することで国内市場とグローバル市場をリンクさせ、全ての経済プロセスの時間軸に影響を与える金利規制を解除し、国際水準の市場規制を取り入れ、RMBの兌換性を高め、スポット(現物)市場の流動性向上を支援するため先物やオプションのプロダクト改革を支援する。こうしたことによって、価格発見プロセスが改善する。現状は中国にとって、その経済的恩恵を現実のものにする好機であると言える。

本稿は、2016年11月28日に中国の北京で開催された国際諮問委員会(International Advisory Council)におけるレオ・メラメドのスピーチを基にしたものである。


Related Entries
CMEグループについて

CME Group
CME、CBOT、NYMEX、
COMEXから成り、世界を
先導する多彩な金融市場です。
グローバルおよび地域的経済・
金融に関するブログをお届け
します。CMEグループの日本語サイトはこちらをクリック。

CMEグループのリソース
CMEグループのツイッターで
@CMEGroupJapanをフォローください。
月次アーカイブ
検索
QRコード
QR
OpenMarketsについて
OpenMarketsは、CMEグループが発信するオンラインマガジンです。本ブログは、日本のトレーダー向けに、主に同マガジンから抜粋した記事を翻訳した
ものです。新たな商品紹介、
ケーススタディ、テクノロジー アップデート、今話題のトピックなど、デリバティブ産業への
従事にお役立てください。