ユーロドル金利先物:グローバル資金流動のバロメーター

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2016年12月14日 || Kira Brecht

このシリーズでは、過去150年超にわたる先物市場の発展の中で開発された、画期的なプロダクトに焦点を当てていく。そして本稿は、このシリーズの最初を飾るプロダクトを取り上げる。

ユーロドル金利先物は1981年12月の上場以来、他商品の追随を許さない程の成功を収めたプロダクトである。世界中で、最も活発に取引されている先物商品の1つなのである。

平均的な投資家のユーロ市場に関する理解はあまり深くないかもしれないが、この原市場は、金融機関の資金調達や債務構造における重要な構成要素となっている。

CMEグループの金融リサーチ/商品開発部門でエグザクティブ・ダイレクターを務めるフレッド・スタームは、ユーロドル金利先物が「世界最大規模の市場流動性」を誇るプロダクトの1つだと明言する。

ユーロドル金利市場の動向はまた、世界的な資本移動、与信需要、金利見通しに関する洞察を与えてくれる。世界を動かしているのが資本だとすれば、スタームは「そのコスト」の指針として捉えられるのがユーロドル金利先物市場だと指摘する。

さて、こうした事実は、銀行融資とは無縁の人々に、どう関係するのだろうか?ポイントは、資金の流れである。

CMEグループの金利プロダクト部門でトップを務めるアグハ・ミルザは、企業、政府、個人、いずれも借り入れに依存していることを指摘する。その上で、「この世界を動かしているのは、膨大な額の資金の貸し借りなのです。こうした資金の動きは、経済活動のエンジン役として、現代社会で必要不可欠な役割を担っているのです。ユーロドル金利先物は数十年にわたり、金利リスクのヘッジ・ツールとして、主導的な役割を果たしてきました。そしてそれは現在、これまで以上に、重要な役割となっているのです」と解説する。

ユーロドル金利先物の主要ユーザーは、資産管理業者、企業の財務担当者、ヘッジ・ファンド、住宅ローン会社、自己取引業者など、短期金利の変動リスクに晒されている人たちである。CMEグループのスタームは、「一般的な米ドル建て無担保ローンのコストに関して、ユーロドル金利先物は事実上の標準尺度となっている」と説明する。

ここで、例を挙げてみよう。ある企業が、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)にその企業の与信リスクを反映したプレミアムを加算した金利で、銀行ローンを設定したとする。ローンが実行されるまでの間、この企業は市場金利の上昇リスクを抱えることになるが、ユーロドル金利先物を売ることで、このリスクをヘッジすることができる。

ユーロドル金利先物の最終清算価格は、当月の取引最終日における3か月物LIBORを参照した上で決定される。従って、ユーロドル金利先物の相場動向は、先々のLIBORに関する知的資金運用者の見方を、垣間見せてくれていることにもなる。

隆盛を続ける市場

CMEでは、ユーロドル金利先物が、最大の建玉枚数と共に、日中平均の売買高で他のプロダクトを凌ぐ存在となっている。11月末時点における総建玉の想定規模は、12兆8400万ドルに達している。

ユーロドル金利先物はまた、金利スワップ取引、一般や住宅向けローンなどで、ヘッジ・ツールとして活用されている。CMEのミルザはこの先物の特徴として、1)高市場流動性、2)市場参加者の多様性、3)多岐に及ぶ利用範囲、4)金利スワップなどの代替え取引に比べて資金効率が高い、等の利点を挙げている。

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FXではないユーロドル

ユーロドルとは言っても、もちろんFX市場の通貨ペアのことではない。ロンドンからリオデジャネイロ、東京まで、米国以外で取引される米ドル建て銀行預金は全て、ユーロ(市場の)ドルと呼ばれる。

こうしたユーロドルの3か月物銀行預金金利を原市場として、ユーロドル金利先物はデザインされている。

1950年代から60年代に、ユーロドルは国際政治の緊張を背景として誕生・発展した。当時、東ヨーロッパの傀儡諸国群との関係を強めていたソビエト連邦は、中国と同様に、冷戦の進展に伴って、ニューヨークの銀行にある自国の米ドル資金が米国によって凍結される可能性を懸念していたのである。

現金決済の登場

1980年までに、金、通貨, 政府短期証券(Tビル)などの金融先物の売買高は、取引所の歴史上始めて、農産物先物を超えるまでになっていた。

CMEのレオ・メラメド名誉会長は当初、全世界的に取引されている米ドルの短期金利という、巨大グローバル市場に次の商品開発の標準を合わせていた。結果的に、これがユーロドル金利先物の出発点となった。

CMEでエコノミストを務めていたフレッド・アーディッティは、ユーロドル金利先物という市場を定義し、開発する上で、主要な役割を演じた一人である。この新規先物プロダクトに関しては、差金決済という概念を商品デザインの一部として取り入れることが、大きな課題になると懸念されていた。米国では当時、先物のほとんどが最終的に現引きで決済され、差金決済は稀だったからである。Tビル先物やCD(譲渡性預金)先物など、当時から売買高を集めていた金融商品であっても、現引きによる最終決済となっていた。スタームは、「アーディッティや彼のスタッフは、先物取引において差金決済がどの様に機能するのかを理解してもらうため、本当に骨を折っていた」と、当時を振り返る。

実際、CFTCによるユーロドル金利先物の上場承認を前に、世界の主要銀行へこのプロダクトを打診するため、アーディッティはロンドンに出張するなどしている。帰国後、彼は差金決済という概念を現実のものとするため、商品デザインの下書きを繰り返したのである。

今では電子取引されているユーロドル金利先物だが、当時は立会場取引の最盛期で、上場後には毎日、およそ1500人のトレーダーやクラークがピットでひしめき合い、活発な売買を重ねる状況となった。カラフルなトレーディング・ジャケットを着たブローカーやローカルのトレーダー、クラークやランナーによって、フットボール場ほどの広さがある立会場は埋め尽くされたのである。

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市場の現状

取引の活発さを表すものとして、金融危機を契機とした2008年からの実質的なゼロ金利環境を、ユーロドル金利先物のプロダクトグループが耐え抜いたことが挙げられる。この先物では、10年先までの限月が上場されていることから、取引参加者は金利リスクのヘッジ・ニーズに合わせて、取引を期近から期先限月に移行させたのである。

2008年には, ユーロドル金利先物における売買高の55%は、期近の4限月(直近の4つの四半期毎限月)から発生していた。スタームは、期先限月への取引シフトによって、2014年までに、期近限月の売買高が全体の25%を下回る水準に至ったことを指摘する。彼はまた、「市場の中心は、利回り曲線の先の方へ移行した。なぜなら、その時間軸では取引参加者の相場観に差異があり、売り買いを発生させることが可能だったから」とも説明している。

そして2016年の現在, 期近4限月で発生する売買高は再び増加していて、全体の40%ほどを占める状況となっている。

ユーロドル金利先物の重要な特性の1つは、豊富で継続的な市場流動性が、ほとんど1日を通じて提供されていること、とミルザは指摘する。彼はまた、市場規模、呼び値幅、売買高、建玉など、プロダクトの完成度を測る尺度は全て、ユーロドル金利先物の市場流動性が過去最高水準に近い状態であることを示していると話す。「数十年にわたって先物市場の主力プロダクトであり続けているユーロドル金利先物は今、これまでに増して取引参加者の期待を集めている」と、ミルザは見ている。

先物市場の偉大なプロダクトであるユーロドル金利先物は2017年、上場35周年を迎える。スタームは、ユーロドル金利先物が「アーディッティによる当初のデザインで想定された枠を超越した柔軟性を備えた」プロダクトであるとした上で、「2016年の今、かつてないほどの偉大さを誇るプロダクトとなっている。これこそは、驚くべき話ではないだろうか」として、現状に驚きを隠さない。



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