金融サービスはクラウドへの準備ができているか?

cloud ready

2016年8月2日 || Peter Shadbolt

コストの削減や開発期間の短縮といった効果を持つクラウドは、あらゆる人にとってメリットがあるように見える。

これまでは数ヶ月間を要したインフラの構築も、今ではほんの数分間で行うことができる。

「こうした変化のことを、多くの人は第4次産業革命と呼んでいます」。最近ロンドンで開催されたTech Talk 5.0でこのように述べたのは、アマゾン・ウェブサービスで国際金融サービス業務部門の代表を務めるスコット・マリンズ氏だ。「世界はすでに新しい領域に入っており、テクノロジーの導入や配備についても同様のことが言えます」と、同氏は指摘する。

ビッグデータからモバイルデータのマイニング、リスク分析からデリバティブ取引に至るまで、クラウドが金融のプラットフォームを一変させている。

マリンズ氏は次のように説明する。「私たちの金融サービスの顧客は、主に2つの理由からアマゾン・ウェブサービス(AWS)に乗り換えています。一つは、IT業務をクラウドにアウトソーシングすることで、テクノロジーの管理から解放され、自社のビジネスに専念できるという分業化の効果です。

もう一つは、事業の根幹に関わる理由です。大手金融機関は、法令遵守の厳格化に伴うコストの増加や、頭打ちとなっている収益環境に対応するために、より良い経済性を求めてクラウドに乗り換えてきています」

クラウドの導入が加速する中、規制当局も「クラウド型」の未来に備えている。

参照:Tech Talk 5.0でのクラウドに関する議論

英国の金融監督機関(FCA)が最近発表した声明は、銀行や保険会社などの金融サービスがクラウドに移行することを後押しするものであった。

FCAの声明は、「しかるべき検討とともに、(公共のものを含む)クラウドサービスが私たちの規則に沿った形で実行できないという、根本的な理由はない」と述べている。

英国のクラウド産業フォーラムは、マイクロソフト、シスコ、デルといった大手のベンダーや小規模の会社を含む45の事業者から成る団体であり、クラウドの現況を調べることを目的として、英国内の250社を対象に一年毎の調査を実施している。

同団体のCEOであるアレックス・ヒルトン氏は、次のように説明する。「本年の調査結果の要点は、78%の機関がクラウドを利用しているという事実です。そのうち75%は、この先の一年間にクラウドの配備を拡大することを計画しています」

この調査はさらに、これらの機関がより広範なタスクにクラウドを用いるようになっており、クラウドへの信頼が高まっていることを顕著に示している。

また、ハイブリッドクラウド――オンプレミス(自社設備への導入)とサードパーティのクラウドサービスを組み合わせたもの――が示す統計は、クラウドサービスの今後の方向性を明確に物語っていると、ヒルトン氏は指摘する。

クラウド産業フォーラムが1年前に実施した調査では、55%の機関がハイブリッドクラウドによるIT業務の運営を計画していた。しかし、最も新しい調査では、その割合が37%まで低下している。

「ここでのポイントは、全てをクラウドで運用する“クラウドオンリー”へと舵を切る方策です。IT基盤をクラウドオンリーで整備したいという願望が、機関の間で顕著に見られます」と、ヒルトン氏は説明する。

同氏によれば、金融サービス業は規制問題(特に治外法権に関する問題)に直面するリスクがあり、旧来からの統合問題に経営陣が頭をかかえる中、多くの英国企業は変化を熱望するようになっている。

最も重要な質問
クラウドは、企業がこれまでITに投資してきた巨額の予算を侵食することになるかもしれない。しかし、依然として導入の妨げになっている主要因の一つが、セキュリティの問題だ。

マリンズ氏は、潜在的な顧客からクラウドについての問い合わせを受ける際に、最も多く聞かれる質問がセキュリティ関連であることをTech Talkで語った。実際のところ、これらは認識の問題であることが多いと同氏は指摘する。

「もしあなたがリスク回避を望むビジネスオーナーであるなら、クラウドを利用することの安全性について漠然とした疑問を持たれるかもしれません」

「一方、同じ企業のITセキュリティ部門、第三者監督部門、または内部監査部門の担当者であれば、AWSクラウドのセキュリティ構造を理解した上で、セキュリティの義務を履行するためにクラウドが果たす役割について、より強い確信を持つことができるでしょう」とマリンズ氏は述べる。

同氏によると、寄せられる質問の内容は目まぐるしく変わっているという。

「規制の順守に関する話題が引き続き主要なテーマですが、『クラウドの導入を支援してくれる有能な人物はどこで見つかりますか?』という質問がより多く寄せられるようになっています。クラウドの包括的なスキルに対する需要は、今日の市場で指数関数的に高まっています」

セキュリティの侵害やITの外部委託管理による影響、またはデータの物理的な保管場所に関する規制当局からの警告などは、企業の評判を揺るがしかねない。こうした懸念は、潜在的な顧客がクラウドの導入を断念する理由にもなっている。

クラウド産業フォーラムは、セキュリティ侵害に関する直接的なアンケートを実施している。ヒルトン氏によれば、現実にセキュリティの過誤が生じたことを示す確たる証拠は、稀にしか見られないという。

同氏はこう説明する。「その割合は非常に低く、1%から2%程度に収まる傾向があります。多くの場合、(クラウドを通じて)より堅牢なテクノロジーになると考えられます」

法域を越えて移動するデータ
テクノロジーの問題に加えて、法令遵守の課題も残る。

CMEグループのマーケット・テクノロジー/データサービス部門でマネージングディレクターを務めるクレーグ・モーハンは、Tech Talkの会合の中で、データが法域を越えて移動することについて業界は注意すべきであると語った。

「個人情報の保護規定はどうなっているか? 州、国または地域によって、それはどう異なるか? あるデータの取り扱いで、私たちに許可されていることは何か? こうした検討課題は、従来は考慮する必要のないものでしたが、現在は避けて通ることができません」

しかし、クラウドが生み出した問題は、最終的にはクラウド自身によって、他のどんなテクノロジーよりも優れた解決策がもたらされるだろう。

BMLLテクノロジーズの最高技術責任者(CTO)であるスティーブ・ホールデン氏は、Tech Talkで次のように述べた。「クラウドの普及により、クラウド自身が法令遵守を支援するための有効な手段になりました。データの所在地は、今後の5年間で私たちが取り組まなければならない最も重要な法令遵守の一端となるでしょう」。




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