次世代金融データの到来

next gen

2016年7月29日 || Peter Shadbolt

ビッグ・データ分析に関しては、その規模と奥行と言う点で、マスタ―カードに勝る会社はないだろう。

この金融サービス会社のクレジットカードは、世界で23億枚が発行されており、205ヶ国の3800万に及ぶ加盟店で、1時間に平均で1憶6000万回の取引が行われている。

7月に開催されたCME Groupの「テックトーク5.0: 次世代金融テクノロジー」では、マスタ―カードのグローバル・パートナーシップ&事業開発部門でシニア・バイスプレジデントを務めるデビッド・リッチ氏が、大量のデータから有意義な結論を浮かび上がらせるには、同じく大量のプロセスが必要となる、というテーマを展開した。

「取引の報告が入る毎に処理が行われる」としたリッチ氏は、「処理とは、その取引におよそ190万のルールとアルゴリズムを適用し、その意味をくみ取る事」、と説明した。

この取引処理を長年続けているマスタ―カードでは、データの洗浄、標準化を通じて、過去40年に渡る変化の眺望を可能にしている。

ただ、業務の中心テーマとしてリッチ氏が強調したのは、個人情報の保護だった。

「データを扱う場合の基本デザインの一環として、個人情報の保護がある」として、「個人情報の保護を前提とした上で、大規模なデータ分析は可能となる。そうすることで、情報の詳細レベルとは無関係に、データに関して非常に高レベルの分析を実行することが出来る」、と話した。

実際、データ分析は多くの業界で行われていて、マスタ―カードは、グローバル・リテーラーの100社中44社、大手レストラン15社中10社、そして25社の大手ホテルチェーン中10社と業務契約を結んでいる。

リッチ氏によると、データの収集方法によっては、顧客動向のトレンドをリアルタイムで分析することも可能だと言う。
「これは、マクロ経済の観点から景気予測をする上で、非常に重要となる」と話す氏は、場合によっては数か月後となるなど、米国商務省が発表するデータが現実から大幅に遅行することを指摘している。

「例えば、ガソリン消費について考えるなら、ガソリン価格の下落によって発生した可処分所得の上昇が、必ずしも小売売上に反映されていないことが分かる」、としたリッチ氏は、

「リアルタイム分析なら、この事実を指標発表の前に把握することが出来る」、と話した。

金融とAI(人工知能)
スパークコグニション社はテキサス州オースティンの新興会社で、次世代の自動制御型データ分析を研究している。

アミア・フセインCEOは前述のテックトークで、多様で不規則なデータから、変則的なパターンを認識する同社の金融プラットフォームについて講演した。

氏は、「上手くいくこと、それも非常に上手くいくことが証明されている」として、「我社の顧客数は、世界的に有名な数社を含めて、40社に達している」、と話した。

現在、風力タービンからポンプまで、業界に多様なアプリケーションを提供する一方で、スパークコグニション社のプラットフォームは、機器の障害発生予想を、人の手を介したモデルによる5時間前から、自動型制御モデルで5日前にまで前倒しすることに成功している。

氏はさらに、こうしたモデルは、金融サービで取り入れられるべき段階に達しているとも考えている。

「これまでは機器が対象であり、金融市場とは別世界であるとの見方がある。ただ、数学的には、両者の共通性は多く存在する」、と氏は指摘した。
AIモデルについて氏は、その処理能力の規模に加えて言葉のニュアンスを理解する水準に達していることから、人間の手を介したモデルを超える能力を有している、と考えている。

そして、「という事は、AIサービスの理解力は、ほとんど人間と同格な水準に達していることになる」、と付け加えている。
「優秀なトレーダーは相場に対する感があると言うが、その感とは何だろうか? それは、匂いや味、見かけなどから、そのトレーダーの神経回路に刻み込まれた過去のパターンが想起される状態のこと」、とする氏は、

「こうした側面や数学的知識、さらに言葉の理解が加味されることで、金融データからの価値生産を、さらに一般化することが可能になっている」、と指摘している。


ブロックチェーンを超えた電子決済へ

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2016年7月28日 || Peter Shadbolt

もしもタイムマシンがあれば、1900年ごろに飛んで、ロンドンの波止場を見に行くとよい。いろいろな形や大きさの貨物を(樽、茶箱、梱包など、船蔵に収まるものなら何であれ)積み降ろしている荷役労働者でごったがえした光景を目にするだろう。

そして、それから50年。貨物の世界に革命が起こった。コンテナ輸送の登場である。標準化された箱が、かつての半数にも満たない人的資源で、自動的に積み降ろしされるようになったのだ。

リップル社で戦略的顧客管理のグローバルヘッドを務めるマーカス・トリーチャーは、今まさにこうした革命に差し掛かっているのが「国際決済システム」だと語る。

「多くのエコノミストが指摘しているように、1950年から2000年にかけて世界貿易が7倍に拡大したのは、この非常に単純ながら創造的な革新のおかげでした。その観点から国際決済を見てみると、1900年ごろの世界貿易と非常に似通っているといえるのです」

「国境を越えたおカネのやり取りは、ほとんど標準化されていません。各国内でそれぞれの法定通貨がやり取りされているのに比べれば、はるかに面倒で困難です」

前の記事「価値のインターネット化」と 決済システム」でも触れたように、トリーチャーはロンドンで開催された「CME Group’s Tech Talk 5.0で、今企業が求めている決済システムについて述べている。それは、即時性があり、膨大な金額を僅少なコストでやり取りできるものだ。また運営管理が正確かつ簡単にできなければならない。

「アマゾン、ウーバー、アリペイなど、デジタル関連で成長している新興産業は、既存のサービスよりも、はるかに低いコストで、はるかに大きな金額で、はるかに大量の国際決済システムを求めています」

関連記事「価値のインターネット化」と 決済システム


ビットコイン取引のパブリックレジャー(公開台帳)であるブロックチェーンは、国際決済のひとつの解決策を提示している。しかし、トリーチャーは「それはまだ道半ばにすぎない」という。

「まさに21世紀ならではの世界的な資金移動の方法を創造するには、ブロックチェーンで十分に適応するといえません。ブロックチェーンの思想と技術をかなり違ったやり方で応用する必要があるのです」

現在、リップル社が取り組んでいるのは「インターレジャー(中間台帳)」の概念である。標準化されたプロトコルを使って双方の台帳をつなげるという発想だ。それはブロックチェーンの分散型台帳と暗号技術の思想を多分に取り入れているものの、その処理で国際決済と銀行をつなげている単一のブロックチェーンに集中せずに済む。

「私たちがやりたかったのは、銀行を直接的に、ただし中央集権的なものは何も存在することなしに、つなげることでした。ブロックチェーンを超える必要があったのです」(トリーチャー)

リップル社では、このシステムには資金移動の開放と民主化をもたらす可能性があると考えている。

「25億の人々が銀行システムから排除されています。インターレジャーが連結したシステムによって、この人たちが、その世界と極めて簡単につながりを持てるのです」



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