FXがグローバルリスクのモノサシに

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Craig LeVeille 2016年3月25日

先日、ECB(欧州中央銀行)のマリオ・ドラギ総裁が発表した追加緩和策は、金融市場で驚きをもって受け止められた。特に注目されるのは、中銀預金金利が10ベーシスポイント切り下げられてマイナス0.3%からマイナス0.4%になったこと、また量的緩和の規模が200億ユーロ増額されて合わせて月800億ユーロとなったことだ。

しかも、資産の買い入れ対象が高格付けの社債にまで拡大された。これは前回の市場操作から大きく変わった点である。

さらに、ドラギ総裁は、新型の貸付プログラムを発表した。これはつまるところ、ユーロ圏企業への与信と融資を拡大させた銀行は4年にわたってECBの資金で補てんされるというものだ。

こうした政策の大半が想定外のものであり、それがそのままFX(外国為替)市場に反映された。この発表があった当日(3月10日)、CMEグループの通貨先物・オプション市場は、全取扱商品を合わせて44年に及ぶ歴史で最大の出来高となる251万7334枚を記録した。これは前回の記録(2010年5月6日)を14万6000枚以上も上回る。

もちろん、その日の取引の大半を占めたのは、ユーロ通貨先物・オプションである。取引金額ベースで1135億ユーロ相当の約定があった。ただし、記録的出来高がすべてECBの動向によるものだったわけではない。先物がちょうどロールオーバー(限月乗換)の時期に差し掛かっていた。この期間は通常、出来高が増えやすい。

2016年になってCMEグループの通貨先物・オプション市場が総じて活況を呈している。例えば、日本円の1日平均出来高は前年比38%増だ。同通貨を取引する市場参加者の大半が求めているのは、ボラティリティの高い時期に安全な避難先となる通貨である。

また、エネルギー市場と金属市場でボラティリティが激しくなっているのを受け、新興国通貨と“コモディティ”通貨(コモディティの輸出に経済が大きく左右される国の通貨)の取引が増えてきた。具体的には次のとおり。

• オーストラリアドル:21%増
• カナダドル:32%増
• ブラジルレアル:23%増
• メキシコペソ:35%増
• インドルピー:11%増

以上は、通貨市場がいかに他の市場と連動しているかを再認識させてくれる。他の資産市場で先行きに不透明さが増しているとき、リスクを軽減させるツールとして通貨が活用されているからだ。中央銀行が新たな政策を打ち出しており、またコモディティが相場の落ち着きどころを探っているなか、通貨市場の取引動向に注目することは、世界のリスクをしっかりと監視していることにつながるのだ。



コモディティが回復する可能性は?

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Kira Brecht 2016年3月18日

資産クラスとしてのコモディティセクターはこれまで、大幅な下落を2015年に記録した。11月には、S&P GSCI商品指数を構成する商品24品目のうち21品目が下落し、11月としては1970年以来の市場5番目に低迷したパフォーマンスを記録した。一部の投資マネージャーは、コモディティセクターの下げに対して、価格下落は長期インフレに対する保険となり、過去に比べて割安な水準でポートフォリオの分散化を確定する好機になるかもしれないと楽観的な見方を示している可能性もある。

やや大局的にみてみると、S&P GSCI商品指数の3月15日までの1年間のトータルリターンは、25.8%のマイナスであった。値動きは、歴史的事実である。「2015年はコモディティにとって極めて厳しい年であった。7月には、商品24品目のうち23品目が下げたが、こうした事態は今まで一度のみ、2008年に起きただけである」と、S&P Dow Jones Indicesのコモディティ部門グローバルヘッドのJodie Gunzberg氏は述べている。

昨年のコモディティ相場の下落は広範囲に及び、歴史的事実であり、複数の要因により主導されたものだった。とりわけ、かつては銅から大豆に至る一次産品をどん欲に購入していた消費国の中国の成長減速は、コモディティ相場全般の足を引っ張る大きな要因となっている。また、米ドル指数の急伸も多数のコモディティにとってネガティブな要因となっており、これがコモ相場に織り込まれ、ドル建ての世界各国の市場で売られている。米ドル指数は、11%超上昇して12月初頭にピークに達し、このためコモディティ価格は、外国人の買い手にとってこれまでよりも割高になっている。

コモディティ市場を主導するこれらの需給の大部分は、単に需給が一致していないに過ぎない。世界の生産量が記録的水準で推移する状況に需要の低迷や減少が重なり、過去1年間において、多くのコモディティは、不利な状況に置かれている。エネルギーセクターでは、世界の生産量ペースは引き続き世界の消費量を凌いでおり、世界的に原油がだぶつき、原油在庫が高水準で推移している。穀物セクターでは、トウモロコシ、大豆、小麦の2015年の世界の生産量は、ほぼ過去最高水準に達し、2016年の見通しについてはほんのわずかな減少にとどまっている。産業用金属セクターでは、銅の世界の鉱山生産量が増加しているのに需要水準が減少している。

商品指数の主な利用

最近の下落局面にもかかわらず、コモディティ指数を見直す理由がある。原油などのコモディティは、均衡に向かう兆しをみせている。3月初頭以来、S&P GSCI商品指数は既に7%を超える上昇を示している。

これまで、機関投資家は、分散とインフレに対する保護の目的で商品指数の組み入れに関心を抱いていた。2000年代初頭、投資家はより高度になり、資産クラスとしてのコモディティに慣れてきて、「投資家はリスクをとりたいと考え始めた。ファンドマネージャーは、単一の商品指数を利用し始め、商品の先物取引の期先物で市場の見通しを見据えたポジションをとっていた」と、Gunzberg氏は説明している。

年金基金、基金、財団などの商品指数の投資家は、長期配分の一環として戦略的な方法でコモディティに対する投資を活用している。最近のコモディティの下落を指摘し、Gunzberg氏は、「小規模な配分については、大方の投資家の目から見て、下落リスクに比べてみても上昇の余地が有望にみえているようだ」と述べている。

予想外のインフレに対するヘッジを目指す投資家は、商品指数を活用して自らの投資額の大当たりを模索している。「インフレに対する保護は、倍数の性質を有する。消費者物価指数(CPI)が1%変動するごとに、S&P GSCI商品指数は15%変動する。予想外のインフレがいつ発生するかはわからない。インフレ発生のために、保護目的で保険を付けておいた方がよく、これが現在、投資の原動力となっている」と、Gunzberg氏は説明する。

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世界の生産量を加重平均した構成比率

S&P GSCI商品指数の構成比率を見れば、投資家は世界の生産量ベースで見たコモディティの状況を把握できる。S&P GSCI商品指数は、商品24品目で構成されており、世界の生産量を考慮して年一回見直される。世界の生産量データをもとに商品の加重平均を算出し、商品の生産金額を平準化する方法を採用している。大まかなコモディティの構成比率は、エネルギーが70%、農産物が15%、家畜が5%、貴金属が5%となっている。生産量の加重平均については、以下の表2に示した。投資家に対して、「関係のあることは、均等加重ではないということである」と、Gunzberg氏は説明している。

2015年11月、S&P Dow Jones Indicesは、2016年について、WTI原油はブレント原油を凌ぎ、最大の構成比率を維持すると発表した。生産量と取引高ともに変化を遂げた。

「商品指数は、世界経済にもたらすコモディティの影響を測定でき、現時点では、WTIの方が大きな影響をもたらしている。GSCI商品指数は、コモディティ市場の現実を反映している」と、CMEグループのエネルギー商品担当エグゼクティブディレクター、Peter Keaveyは指摘する。

「北海で生産されるブレント原油が枯渇しつつあるとの懸念がやや浮上している。昨年のWTI原油の生産量は、ブレンド原油を上回った」と、Gunzberg氏は付け加えた。

また、エネルギーセクターにおけるマクロ動向の変化は、原油市況の転換を促した。「WTI原油とブレント原油の価格差は縮小して安定した。WTIは現在、世界経済により重要な影響をもたらしている」と、Keaveyは指摘している。

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出所:S&P Dow Jones Indices

長期サイクル

また、投資マネージャーは、長期サイクルの枠組みで足元の市場環境を見直しつつある。株式と債券は、逆の市場サイクルで動くことが多い。2015年には8年連続で株式はコモディティをアウトパフォームし、記録を達成した。前回、株式がコモディティをアウトパフォームした1980年代には、7年間と長く続いた。このサイクルが転換したとき、コモディティが力強い上昇をみせた。

「1980~86年に7年連続で長期にわたり株式がコモディティをアウトパフォームした前回のあと、コモディティは、S&P GSCIトータルリターン指数によると、1990年までに約300%のリターンを記録した」と、Gunzberg氏は指摘した。

2016年にコモディティが回復に転じるかを判断するのは時期尚早ではあるものの、S&P GSCI商品指数などの商品指数は、長期の見通しを示してくれるだろう。



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