米国政策金利:追加利上げは緩慢に

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OpenMarkets 2016年1月21日

昨年12月、FRB(米国連邦準備制度理事)は、9年ぶりとなる政策金利引き上げに踏み切った。そして、大方の市場参加者やエコノミストは、米国経済が安定的な成長への回帰を確固としたものにするなか、幾度となく行われることになるであろう追加利上げがこれに続くと考えていた。しかし、2016年初頭の市場環境は、こうした予想を裏付けるものとはならなかった。株式市場の高ボラティリティーや継続する原油価格の低迷は、市場関係者が、2016年のFRBによる追加利上げは、数度でははく、1度だけとなるとの予想に至る主要な背景となっている。

以下は、こうした中でのFRBの政策アプローチについて、前シカゴ連銀総裁のマイケル・モスコウ氏へのインタビューである。「経済成長のスピードが加速的にならない限り、追加利上げが数回に及ぶことはあり得ない」とした氏は、このインタビューで、FRBが利上げについて慎重な姿勢で臨むであろうことを強調している。氏はまた、米国経済の見通しについて、またその成長要因について、さらに、海外要因の影響についても語っている。インタビューは、掲載の都合上、編集してある。

OM(OpenMarkets): 米国経済について、現状と1年前を比較する場合、その比較対象となるのは何でしょう? ここまでの経済成長とその将来的な見通し、ということになりますか?

MM(マイケル・モスコウ): ここまでの米国経済は、ときとして停滞を伴いながら、スロー・ペースで回復してきていると思います。これは、平均で2%から2.5%の成長となった2015年も同様でした。米国経済の潜在成長力を上回ってはいますが、力強いとは言えない水準です。もちろん、力強い景気回復は誰しもが望むところですが、実際にはここしばらく、そうした回復スピードには達していない状況が続いているのです。従って現状、失業率が低下していることや労働市場が逼迫化していることは、喜ばしいことと言えます。また、エネルギー価格の低迷を主要因として、非常に低い水準で推移しているインフレ率については、そのエネルギー価格が安定するにつれて、目標の年率2%に向けて上昇してくるものと考えています。

OM:  FRBの動向が、市場の注目を集めています。追加利上げのタイミングについては、どう見ていますか?

MM: 重要なのは、短期金利(フェデラル・ファンド金利)の上昇スピードであって、FRBが実際に何月から追加利上げを実施するかではないと思います。FRBは重ねて、追加利上げのペースは緩慢なものになる、との見通しを表明しています。その実施に関しても慎重になるでしょうし、米国経済の成長スピードがこれまでの実績を大きく上回るものにならない限り、追加利上げをFRBが迅速に実施することはない、と考えています。

OM: そうした経済環境では、先々を見通す指標として何が重要になりますか? 失業率の改善について指摘されましたが、2016年の金融政策の実行に際して、FRBが注視する指標にはどんなものがあるでしょうか?

MM: FRBは、完全雇用と上昇率2%を目標とした物価安定という、中央銀行に課せられた2つの使命の遂行を強調しています。現状、いずれの使命も2016年に達成されることはないと思いますが、達成に向けた成果を積み上げていきたいと考えています。そうすることで、中期的にこの使命を達成するというのは、FRBが重ねて表明していることでもあります。

実際、FRBは自ら、2017年末から2018年にかけて、その使命が達成された状況になると予想しています。これまで以上の成長スピードを背景に、2016年は、インフレ率が2%に向けた上昇を続け、失業率は低下・改善を続けることになるでしょう。労働市場参加率が高くない事を指摘する向きもありますが、この背景には人口構成の変化がありますし、これが足元の景気回復の特徴的なものであるという面もあります。

OM: 景気回復を主導する分野としては、どんなものがありますか? 住宅市場、継続的な小売分野の拡大、その他はどうでしょう?

MM: 米国経済のおよそ3分の2を占める個人消費が、最も重要な分野です。最近の指標で収入の増加が指摘されてきていることも、個人消費の拡大に寄与することになるでしょう。また、企業の設備投資も重要です。民間企業はここまで、インフラや設備、機器などへの投資に関して、消極的なスタンスを続けてきました。民間企業が設備投資に対して積極的なスタンスへ転換すれば、米国経済にとっては大きな押し上げ要因となります。

2015年も改善を見せた住宅市場は、望ましい方向に進んでいると思います。更なる改善の余地はありますが、数年前の低迷に比べれば、明確な改善をここまで達成してきていると思います。

OM: ここまでの米国の経済成長軌道について、停滞があったことを指摘されましたが、その要因には、どんなものがありますか?

MM: 今回のリセッションの特徴だった、と言えると思います。金融危機が契機となった今回の景気後退は、これまでの典型的なものとは異なっているのです。要は、収入以上の生活水準を営んでいたということで、多大な負債を処理する必要があったのです。負債軽減というデ・レバレッジが進行中ですし、完了するまでにはもう少し時間を要すると思います。特に、消費者負債を見ると、歴史的にも、非常に低い水準に留まっています。

クレジット・カードからの借り入れや住宅ローンは低水準で、学生ローンが唯一、高水準となっています。ただ、これは対政府のローンで、民間のローンではありません。

OM: EUや中国を始めとするアジア諸国など、海外情勢についてですが、こうした地域の経済成長や停滞について、米国経済への影響をどう見ていますか?

MM: 米国外の経済成長は、低迷しています。世界経済という視点からも、全ての地域において経済が減速しているのは明白だと思います。欧州は悪くありませんが、それでも成長は非常に緩慢です。日本経済も非常に緩慢ですし、中国は減速傾向です。南アメリカの国々も、同様に減速傾向です。こうした状況は米国の輸出に影響しますし、その経済成長にも影響します。

為替市場では、相対的に良好な米国経済を反映して米ドル高が続いています。もちろん、これは米国の輸出競争力に影響しますが、米国内の物価を低下させ、個人消費を拡大する要因ともなります。

OM: 追加利上げに対しては緩慢なスタンスで、FRBが引き続き慎重に臨むであろうと予測されましたが、こうした環境での債券市場について、どう見ていますか? 特に、FRBが継続的な利上げに踏み切った場合は、どうでしょうか?

MM: 債券市場の見通しは、難しいですね。長期債の価格や利回りについては、多様な市場参加者の総意によって、最終的な水準が決まっていくのだと思います。FRBが影響出来るのは短期債に限られており、長期債はその範囲ではありません。従って、FRBの発言や行動は継続的に、最大の関心事としてモニターされ、市場はこれに反応していく、と言うことになるのでしょう。


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