エネルギー市場に対応するための新しいツール

Energy-CSO-video_640x360.jpg


2015年10月15日 || OPENMARKETS

ここ1年間において、原油価格は世界の供給増、中国の需要を巡る不確実性、その他の要因を背景に50%下落したことから脚光を浴びている。これは、エネルギー市場の極めて高いボラティリティが一因であり、業界参加者による原油の価格に対する積極的なリスク管理の必要性を想起させる。こうしたボラティリティの高まりを背景に、大きく成長してきた取引ツールが、エネルギー・カレンダー・スプレッド・オプション(CSO)である。

カレンダー・スプレッド・オプションは、売りと買いという2つの異なる先物ポジションを構築するオプションである。コール(買い)オプションは、期近限月の先物のロングポジションと期先限月のショートポジションの組み合わせで行使できる。プット(売り)オプションは、期近限月のショートポジションと期先限月の先物のロングポジションで行使できる。行使価格は、先物のロングポジションとショートポジションの価格差である。CMEグループは、原油、天然ガス、石油精製品に関してCSOを提供している。

足元の変動の激しいエネルギー環境において、CSOは盛り上がりを見せており、10月の取組高が80万6,418枚と、2015年1月から2倍以上に拡大した。CSOの1日平均出来高は、今月これまでで1万8,161枚と、1月の1万3,048枚を上回っている。CSOは先物のフォワードカーブへの投資を実現し、カーブ構造の変化に伴うリスクを柔軟に管理できることから、市場参加者はCSOを活用している。



上記のビデオ(英語)は、シカゴを拠点とするマネージド・フューチャーズ運用会社 Emil van Essen のポートフォリオマネージャーであるJohn Farley氏を特集したもので、ビデオの中でCSOのメリットとその活用方法について説明している。

CMEグループのエネルギー商品担当シニア・ディレクターのJeff Whiteも、 Futures Radio および Options Insider のポッドキャストに出演し、CSOの成長に対する見方を示している。



グローバルな炭素市場: 現実化に向けた野心的な動き

Global Carbon

2015年10月15日 || RUSSELL BLINCH

商品市場は、現物の扱い方を熟知している。麦からコーヒー豆、金から原油まで、農家を始めとする生産者、そして流通や販売に至る当業者たちには、一堂に会する場を定め、値決めを行ってきた歴史がある。

そして21世紀初頭の今日、商品市場には、これまでに無かった様な、非現物的な取引対象が登場しようとしている。そして、この商品の扱い方は今、世界が直面する最大の問題の1つに立ち向かう上で、極めて重要な役目を果たすと考えられている。

その商品とはもちろん、2酸化炭素(カーボン)ガスであり、その取引システムのことである。

炭素ガスは大気圏に撒き散らされ、工業革命以来、地球の平均気温を既に摂氏1度近くも上昇させたとされている。そして現在、この排出に価格(コスト)の観念を導入することで、排出量を抑える効果が期待できる、との考えが大勢を占める状況となっている。

ただ、実体として捉え難いこうした対象商品の値付けについて明確な指針が示されないなか、排出量の抑制を訴える声は拡大の一途を辿っているが現状となっている。市場機能を介しての問題解決については、世界銀行のキム総裁が、「環境汚染や健康被害を改善し、クリーンな未来を保証し、貧困層を保護するための投資を各国政府が行っていく上での資金源を確保するため、カーボンガスの値付けでは最適な仕組みを作り出さなければならない」とした、新たな請願を行っている。

温暖化ガス排出抑制を巡る議論

カーボンガスに値付けする「最適」な仕組みについては、議論が集中している。単なる課税措置から、市場原理を重要視する専門家や企業、国などからも賛同者を集めてきているキャップ・アンド・トレード(排出量の上限設定と差分の取引)まで、「最適」な仕組みについて、提案は数多く存在しているのである。一方、市場原理による解決策については、参加者全てが同一のルールに基づいて取引を行うグローバルなシステムとして、それが実現可能なのかという疑念も呈されている。

IETA(国際排出権取引協会)の国際政策部門でダイレクターを務めるジェフ・シュワーツ氏は、「カーボンガスの値付けに関しては、キャップ・アンド・トレードが最適と考えている」として、「環境問題への対応としてキャップ(排出量上限、排出量抑制)が担保され、排出税などでは不完全な経済環境に対して、排出価格で対応する余地も担保されている」と説明する。

世界銀行の発表では、カーボンガスに値付けする仕組みについて、実働しているもの、計画されているもの、両者を合わせた数は、2012年以来で倍化している。そして、世界の40か国と23の地域で現在、実働している仕組みの市場規模は、カーボンガスで70億トンに及び、世界中で1年間に排出される温暖化ガスの12%に達している。

シュワーツ氏によれば、2015年初頭の段階で、世界の総GDPの40%は排出権市場の対象となっており、2017年から中国がこれを導入する予定になっていることから、その割合は飛躍的に高まるとも考えられている。

全ての道はパリに通じる?

こうした市場原理に向けた動きには現在、特に国連の気候変動サミットが12月に仏・パリで開催予定となっていることもあって、失速する気配が見られない。

IETAのシュワーツ氏は、「パリでの合意は、数10年間とは言わないまでも、今後数年間の気候対策を方向付けるものになるでしょう。気候変動の規模を考えれば、この合意を上手くまとめ上げ、その後の対策に必要となる全ての手段が利用可能となる状況を確保することが重要です」と話している。

実際、パリ合意には、世界に散在する状況となっているカーボンガスの値付けの仕組みのリンク化に向けて、起爆剤となることも期待されている。もちろん、世界共通の仕組みによる対応では、コストの削減と同時に、排出量をより大規模に、世界的規模で抑制することが可能になる。

12月の気候変動サミットに向けては、主要国の多くが温暖化ガスの排出量の減量策や抑制策を次々に表明していて、パリ合意への期待値は現状、高いと言える。さらに、CI(Climate Interactive)とMITスローン・ビジネス・スクールによる最新の分析によれば、こうした政策によって、今後10年間から15年間の地球の平均気温の上昇は摂氏2度以内と、世界各国の政府に広く受け入れられる範囲に抑えられると予想されている。

その上での課題は、こうした政策が適用期限を終えた後に、温暖化抑制のためのさらなる努力が必要となることである。平均気温が摂氏4度から5度上昇し、専門家が地球環境について危険、または破滅的とする水準に達すると予想されている現在、献身的な努力が国単位で継続されることは、必要不可欠なのである。

各国の政策対応についてCIのアンドリュー・ジョーンズ氏は、これまでの政策対応を高く評価した上で、「パリ合意が行動に移されることで、地球の平均気温の上昇を摂氏2度以下に抑えることが可能になります。現在、直面している政治的、社会的な課題は克服できる、と考えています」と、先々についての期待を表明している。

市場の力を利用する

パリの気候サミットで全般的な合意が成されたとしても、カーボンガスを市場に持ち込むことでその排出量を削減するという仕組みは、現実に機能するのだろうか?

実際には、こうした仕組みは既に稼働している。例えば、NYMEX(ニューヨーク・マーカンタイル取引所)は、2008年から排出権取引の仕組み作りに参加している。現在、CMEグループ傘下の取引所であるNYMEXには、米国や欧州、そして批判されることも多いEUに特化した排出権を含めて、一連のプロダクトが上場されている。

ただ、現状で提供されているプロダクトについては、12月のパリ合意を経てカーボン市場が進化することに合わせ、より革新的なものへと変化する必要がある、とも予想されている。

CMEグループでエネルギー・プロダクト部門のシニア・ダイレクターを務めるヘンリク・ハッセルクニップは、パリ合意が革新的なものになると共に、市場では、この重要な変化に対して、新しく、創造的な対応が喚起されるものと考えている。

OpenMarkets とのインタビューで、「パリ合意が定義されれば、必要とされるプロダクトについて、より明確な見解を持つことが可能となります」としたハッセルクニップは、「こうした変化に関して我々は注意を払ってきましたし、状況の見通しが改善し次第、可能な限り早急に対応する方針です」と話している。

ハッセルクニップはまた、「パリ合意を受け、対応作業が必要になるでしょう。ただ、大きな躍進を前提とした意気込み、そしてそれを背景に上場される野心的なプロダクトは、この分野の将来性を予感させるものになるでしょう」と期待している。

中国、そしてエネルギー企業

カーボンガスを取引する仕組みに関して、各国が国境を越えた取引を可能にすれば、そのコスト削減効果はより大きくなると考えられている。ただ、これに関しては、カーボンガスの値付けに懸念を持つ国々の一部が否定的な姿勢を示すなど、国際間における主要な対応課題となっている。

一方で、この課題に関する動きとしては、世界最大の排出国である中国と米国が対応への動きを新たにしている事実もある。地球環境を継続的な問題と位置付けている米国のオバマ政権は、第1次政権でキャップ・アンド・トレードの仕組みを稼働させる試みに失敗したものの、第1次・第2次の政権を通じて温暖化ガスの排出量削減に努力してきた。

国際的に事業を展開しているエネルギー企業もまた、気候変動への対応提起の声を高めている。米国の巨大エネルギー企業、エクソン・モービルはカーボンガスの取引について反対の姿勢を示しているが、欧州の同業会社、ロイヤル・ダッチ・シェルは先ごろ、取引のグローバルな仕組み確立に向けた行動指針を発表し、関係者の多くを驚かせた。

英国紙、ファイナンシャル・タイムスは、「気候変動の課題に立ち向かいつつ、より多くのエネルギーを提供するということについて、我々は現実的で実行可能な答えを、未来の世代のためにも求め続けなければならない」という、同社幹部たちからの書簡を紹介している。

画期的、それとも過剰に野心的?

グローバルなカーボン市場設立に向けたこうした盛り上がりは、実際には初期的な段階にあり、数年前に考えられたほどに革新的な水準に達しているわけではない。市場が成熟するには時間を要するし、カーボンガスの排出抑制に関しては、こうした無色、無臭の汚染物質の取引において、現物商品と同等の適正さが市場取引にあることを証明する必要も、残されているのである。



中央銀行の政策は金にどう影響しているか

Gold-Standard1-640x360.png

2015年10月2日 || GUY ADAMI

金融政策と財政政策両方について、中央銀行がグローバル市場で果たしている未曾有の役割を検討せずに、金市場を語ることはできない。

歴史上、善意から出た考え方と政策により恐ろしい結果が生じたことは幾度もある。シカゴ大火は、1871年10月8日に発生した。この大火は、今日に至るまで他のすべての火災が比較されるほどの出来事である。壊滅状態になったとはいえ、シカゴ大火は、その同日に火災が発生したウィスコンシン州のペシュティゴ大火と比較すると色あせる。その一帯で1,500~2,500名の死者が生じたペシュティゴ大火は、依然として米国史上最悪の火災である。

1876年、ペシュティゴや他の火災へ対応して、米国森林局が設立された。森林局の主な目標の一つとして、山火事の防止が挙げられる。これは完全に筋が通っている。数年前に見られたように、火災は多大な犠牲をもたらし致命的でもある。森林局が火災を多少でも抑制して防止できれば、なおさら良いことであろう。いうまでもなく、この戦略は素晴らしく見事に機能した。それは素晴らしかった。意図しない結果が台頭し始めるまでは。カリフォルニア州では、1960年代まで、ジャイアント・セコイアの新木が生育しなかったのがその証拠である。森林火災は、件数は少なくなったものの、今までよりもはるかに勢いが強まり消火が困難になった。お察しの様に、森林火災は森林のライフサイクルに不可欠な部分であると理解している人は少ない。森林火災が発生すると、老木や元気を失った植物が一掃されて、それにより新たに草木が生えて豊かな成長を遂げる。結局のところ、私の若き頃に流れていた有名なコマーシャルのキャッチフレーズ、「母なる自然をだますのはよくない」に当てはまる。

この話を持ち出したのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の行動が引き起こしたことと全く同じ状況だと私は考えているからだ。アラン・グリーンスパン氏は、1987年8月にFRB議長を引き継いだ。2ヶ月後の10月19日、ダウ工業株30種平均は、前週末比で 22.6%下落 した。それに対応して、当時のグリーンスパン議長は、FRBは、経済・金融システムを支えるために流動性を供給する用意があると確約した。同議長が明白に善意から行動したと少しも疑っていない。ただ、マーケットにとっては、グリーンスパン議長のコメントは警報解除信号と同然だった。グリーンスパン・プット が確固として発動されて、S&P500種株価指数は、1987年秋の250台から上昇して、2000年夏には1,500台にのせた。

この上昇局面は、主としてグリーンスパン率いるFRBの政策が原動力だった。現在、FRBのバランスシート は、4兆8,000億ドルに近づきつつあり、バランスシートは、文字通りファイナンスのシステム救うために膨れ上がった。バランスシートは、誠実な動機付けから膨張した。

さきほどの森林局の事例のように、自然に生じるサイクルの部分を先送りできるものの、サイクルを排除することはできないことについて、我々は教訓を得ている。おそらく、さらにいっそう重要なことは、サイクルを排除しようとすべきではないということだ。FRBの過去の金融緩和姿勢がもたらした意図せざる結果は、途方もなく大きく、以下の様に現れ始めているというのが私の主張である。

大胆な中央銀行

市場参加者は、今後もFRBプットが続くと考える状態にある。このため、現状に対する満足が危険なレベルに達している。為替については、これまで数ヶ月ではないにせよ数日かかっていた動きが、今ではほぼ毎日のように数分で起こってしまう。資金の逃避先である債券市場は、決してそういう状態ではない。FRBの政策が成功したとの認識からみられるように、世界各国の中央銀行は、同じやり方で大胆な行動をとっている。確かに、FRBは、必要な時に介入してシステム全体を救済した。だが、問題の根底にあるレバレッジは、解消されなかった。レバレッジに変化があっただけで、今ではFRBにのしかかかっている。4兆8,000億ドルまで膨張したバランスシートが、650億ドルの現金準備の頂点にある。これは、バランスシートには73倍程度のレバレッジがかかっていることになる。

ちなみに、比較目的でのみでとり上げるが、リーマンブラザーズは、破たん時のレバレッジが30倍を少し超えたぐらいだった。その一方で、国際通貨基金のバランスシートは、レバレッジが約6倍にとどまっている。これらの問題に対処するために、世界各国が自国通貨の人為的切り下げを行っているのを目にする。確固たる証拠は、8月10日に中国人民銀行が取った行動であり、それ以外は探す必要はない。そのため、不換通貨の世界では、準備通貨としての米ドルの支配はどのような意味を持つのか。それについてこれから考えていくが、範囲と力の両方においてIMFの成長ぶりを目にしており、新たなパラダイムとしてIMFが究極のバックネット(安全装置)として台頭するのではないかと、考えてしまうばかりである。

金の上昇と下落

ほぼ当然のこととして、世界のゼロ金利レースは、うまく終わらないだろう。これはむろん、金にもつながる。数年前であれば、地政学的イベント、為替の変動、ヘッドライン・リスク、中央銀行による未曽有の行動で概ね説明でき、順調に3,000ドルを超えて、それ以上に大幅高になると言えただろう。

2009年9月9日、Barrick Gold は、30億ドルの新株発行して既存の金のヘッジの全面的解消のために買い戻しを実施することを発表した。また、Barrickは、金の強気相場の持続にかなり確信しており、第3四半期決算に56億ドルを計上した。思い起こしてみると、これは金が上昇基調をたどり1オンス当たり1,000ドルを突破した頃と一致している。その2年後、金はあと80%上昇し、1オンス1,800ドル超えを果たした。2009年9月に、Barrickの株価は38ドルだった。2011年4月までには、1株55ドル超で取引されていた。本日まで早送りしてみると、Barrick(ABX)は6.5ドル近辺で推移していた。

これはBarrick Goldを指名して非難しているわけではく、業界全般に言えることである。しかし、次のことをほぼ保証できる。金のヘッジ解消のための買戻しを行うようにこれらの企業に提案し、懇願し、また無理強いしたのと同じ取締役会は、今では輝かしかった株価のパフォーマンスが落ち込んで厳しい非難を浴びている。業界は、何か手を打つように途方もないプレッシャーをかけられており、私はそうした状況をうらやましいとは思えない。そうとは言え、航空業界とかなり似ており、ある参加者が行動を起こすと、通常は残りが追随する。最初にまばたきする人物は、現時点では不明である。しかしながら、金市場に対する中央銀行の政策の副次的影響も現時点では不明である。8,000トン超を有する米国は、依然として世界最大の金保有国である。ドイツは、約3,500トンを保有し2位の座を守っており、前述の表に出ないわけではないIMFは3,000トン近くを抱えて3位につけている。

その点について、2013年1月の新聞の見出しが目に留まった。ドイツ連邦銀行は、パリで保管していた金のうち374トンをドイツに戻し、ニューヨークに300トンを保管すると宣言した。これは、容易に決断できることではなかった。そして、ドイツの決定が単発だと考えられるといけないので、いくつか例を挙げると、オランダ、ベルギー、ベネズエラが本国移管の取り組みを進めている。これらの国はすべて、何かを懸念しているのは明白であり、中央銀行の行動と不換通貨システム全般への不信感を巡る懸念の高まりが中心にあると思われる。

さらに、金価格はかなり長い間低迷しているものの、見聞きした全てのことを踏まえると、金の現物市場は、決して強くなっていなかった。Chris Carreraは、金市場に30年間近く関わってきた。同氏は、この市場について、私が知ろうとすることを沢山無視してきており、詳細と焦点への彼のこだわりは他の追随を許さない。彼の言い分の一つに今、共鳴している。誰も何か起こるまでは金市場に関心を持たないと。株式市場は、毎日ニュースがあるが、金価格に関心を持っているのはごくわずかである。そうとはいえ、私の意見では金は再び注目を集め出しそうなので、この部屋にいる全員に用意してもらいたい。

この分析は、CMEグループ主催の 2015年貴金属ディナー(Precious Metals Dinner) におけるGuy Adamiの講演からの抜粋である。



量子コンピューティングの将来性

Quantum Computing

2015年10月7日|| MACKENZIE RECH

高度に複雑な問題を解決するにあたって、量子(クオンタム)コンピューターはこれまでのコンピューターに比べて、より効率的である潜在性が高いとされている。そして現在、この分野は急速な進歩と革新の渦中にあり、1Qbitはそうした動きの中核的な会社の1つである。

カナダ・バンクーバーに本拠を置くこの新興企業は、クオンタム技術を適用することで、扱い難い課題に対するソリューションの提供を可能にするソフトウェアーを開発している。QA(quantum annealing、量子焼きなまし法)を用いたこのソフトは、課題に対して数限りなく存在する解の中から、最良の解の選択を可能にするのである。そして、こうしたアプリケーションの実用化については、その多くが今後数年を要するとされる一方、既にポートフォリオ管理や通貨取引などの金融分野での効用が期待されている。

CMEのベンチャー・ポートフォリオの中で、1Qbitは 世界経済フォーラム が最近、テクノロジー・パイオニアの称号を与えた 3番目の会社 でもある。ここでは、量子コンピューティングの現状と将来性について、1Qbit の共同創業者でありCEOを務めるアンドリュー・ファースマンとの会話(要約)を以下に掲載する。

最初に基本的なところからですが、「量子コンピューティング」とは何でしょう?

コンピューターの利用価値について私は、比較的広義に定義しています。情報のインプットがアウトプットを超える場合などでは常に、コンピューターを意識します。重要なのは、既存のアーキテクチャーを前提にしてコンピューターを定義しない、ということです。私にしてみれば、計算機ではなくても、問題の解を算出するシステムなら、それはコンピューターなのです。

1980年代には、著名な理論物理学者のリチャード・ファインマンを含めて、高い評価を受けていた科学者たちが、通常のコンピューターをCbit(古典ビット)から量子bitに置き換え、特殊機能を備えた量子コンピューティングへの転換を呼びかけました。概念としては素晴らしいものでしたが、現在まで、そのアイデに立脚したシステムは未完成です。したがって、量子bitは既存のアーキテクチャーとは全く異なる枠組みの中で、未来的なシステムとして発達してきたのです。ただ、両者の関係が科学的なものではなく、仕分け上のものに過ぎないという事実は、面白いと思います。

今日の量子コンピューターは、どの様な問題の解決を可能にしていますか?

典型的な例として、「巡回セールスマン問題」があります。これは、例えば宅配業者が、100個の荷物を届けた上で、その日の終わりまでに集積所に戻るとして、これを達成する道順には天文学的な数の選択肢があり得ます。ただ、最短の道順は、1つしか存在しません。こうした組み合わせの最適化に、量子コンピューターは非常に優れています。例えばここでは、荷物を配送するためにあり得る全ての道順の組み合わせから、最短距離のものを選び出すということです。

全ての組み合わせを評価し、その中から最適なものを選び出すというのは、通常のコンピューターにとっては過剰で膨大な作業なのです。もっとも、使い慣れることで、ある程度の時間内にそれなりに適切な解を得ることは可能です。ただ、その場合、時間を優先することで、解の正確性が犠牲にされていることを忘れてはなりません。新しい世代の量子コンピューターでは、特にこの辺の改良が成されていて、正確性の高い解を、場合によっては最適な解を、より短時間で得られる様になっています。

andrew fursman

「組み合わせ最適化」について、もう少し説明してください。

量子コンピューターにおける象徴的な機能です。例えば、部屋の中に10個の照明器具があって、それぞれにスイッチが付いているとします。この部屋を明るくする方法は、各々のスイッチが入っているか/いないかの組み合わせによって決まります。照明器具が10個なら、およそ1000通りの照明パターンがあり得ます。20個なら100万通り、30個なら10億通り、40個なら兆単位となります。照明器具が250個なら、その組み合わせパターンは観測可能な宇宙空間に存在する原子の数を超える域に達します。こうした膨大な選択肢の中から、制限があることを前提に、最適な組み合わせを選定しなくてはならないのです。そして、膨大な選択肢の中から最適なものを選び出すというのは、量子コンピューターが最も貢献できる分野なのです。

「量子コンピューター」という言葉が一般化する日は近い、とお考えですか?

量子コンピューターは、長い間に培われてきた概念です。ただ、ここ数年、技術的な快挙が続いたことで、実験的な段階から実用化に向けて大きく飛躍しました。もちろん、量子コンピューターが既存のコンピューターを凌駕する、ということではありません。実際には、量子コンピューターの分野における独自発展がここから始まるという、歴史的なタイミングを迎えているのだと思います。その意味で、私にはコンピューター業界の聡明期が思い起こされます。フェアチャイルド・セミコンダクターや、その後のインテルなど、初期の巨大企業が設立された時代です。コンピューター革命を語る上で最も刺激的な時代だったと私は考えています。量子コンピューティングも同様に、ファンダメンタルな技術革命なのです。新しい歴史が刻まれる場に遭遇することは稀だと思いますし、1Qbitがそうした変化の一翼を担っていることは、非常に光栄なことでもあると思っています。

CMEグループについて

CME Group
CME、CBOT、NYMEX、
COMEXから成り、世界を
先導する多彩な金融市場です。
グローバルおよび地域的経済・
金融に関するブログをお届け
します。CMEグループの日本語サイトはこちらをクリック。

CMEグループのリソース
CMEグループのツイッターで
@CMEGroupJapanをフォローください。
月次アーカイブ
検索
QRコード
QR
OpenMarketsについて
OpenMarketsは、CMEグループが発信するオンラインマガジンです。本ブログは、日本のトレーダー向けに、主に同マガジンから抜粋した記事を翻訳した
ものです。新たな商品紹介、
ケーススタディ、テクノロジー アップデート、今話題のトピックなど、デリバティブ産業への
従事にお役立てください。