オプションが家畜市場をどう変えたか

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2015年7月29日 || DEBBIE CARLSON

家畜を飼育する農場は、最大限にリスクを緩和しようと全力を尽くしているが、時にはそうした管理が台無しになってしまう出来事が起こる。ここ数年間に発生した出来事とは、2011年と2012年の日照りにより、生体牛の飼育農場は生産減と在庫圧縮で対処する羽目になり、エタノール生産の拡大を背景に、トウモロコシを巡り生産者とバイオ燃料業界で競り合いが生じ投入価格が上昇したといったことである。

一方、2013年と2014年に発生した豚流行性下痢ウイルスの大流行は、豚赤身肉の生産者にひどい打撃を与えた。これは生体牛と豚赤身肉の価格が上下に大きく振れる展開を招き、よって慎重なリスク管理の必要性が浮かび上がった。つい最近の2015年2月、CMEグループのデータが示すように、豚赤身肉の価格変動率が記録的な42.5%へと上昇したのはその一例である。

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高まる勢い
先物市場は前々から、生産者にとってリスクを緩和するための一つの手段であるが、家畜オプションはここ数年間に出来高と取組高が急増している。これは、リスク緩和と生産のヘッジのための証拠金コスト節減を目的に、これらの手段を利用する生産者が増えていることによる。

家畜オプションは、80年代から存在しているとはいえ、これらの手段を巡る知識と教育が功を奏して出来高が伸びている。こうした動向は、テクノロジーの進化だけではなく電子取引の出来高の増加にも一致している。CME Directなどのフロントエンドの電子取引プラットフォームにより、ユーザーフレンドリーな方法によるクオート要求(RFQ)を使用した複数のレグのオプションのスプレッド取引が促される可能性があろう。2014年の生体牛オプションの出来高合計は、2008年と比べて309%増加した。2015年は、6月までで既に2008年通年を78%上回っている。

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エクスプレス・マーケッツのバイス・プレジデント兼豚肉担当アナリストであり、長年家畜のエコノミストでもあるスティーブ・マイヤー氏は、近年の出来事を背景に多くの独立系生産者がリスク管理にオプションを駆使する動きを活発化させていると語った。

「オプションが有用なのは、生産者が将来に行動を起こす義務がない権利を持てることである。プットオプションを購入したらその価格の下限が確定され、一方でコールオプションを購入すれば価格の上限が決まる。コールオプションを購入すれば家畜の飼育場のコストの上限を設定することができるし、プットオプションを購入すれば生体牛と豚赤身肉の売却価格の下限を決められる」、とマイヤー氏は説明した。

生体牛取引会社であるアルカディア・アセット・マネジメントのポートフォリオ・マネージャー、ジョーダン・レビ氏は、相場の変動が大きくなっているため、会社はオプションと通常の先物を駆使して現物のオペレーションを管理する方法を覚えたと述べている。

レビ氏は、ベーシスが拡大する局面では通常はプット買いを行う傾向にあると述べた。プット買いは、下限を確定するのに役立ち、先物取引の売りとは異なり、このシンプルな戦略を執行するのに取引所の証拠金がより少なくて済む。

メイヤー氏は、「日常のキャッシュフローの必要額を管理するのにも役立っている。通常のオプション買い戦略によって最終的に、リスク管理にどのぐらいの資金が必要なのかが定まる。現金をより効果的に管理できる」と語った。

「プットやコールを買う場合、オプションの価値は原先物によって変化するため、買い手は利益を上げるために先物取引を執行する必要はない」とも指摘している。

「メリットはオプションの価格である。それがオプションの長所だ。オプション保有者は、利益を得るために受渡しの価格よりも高めの価格でオプションを売却すればいいだけだ」と、同氏は説明した。

生体牛市場の50年 を読む。

証拠金の節減
農業生産者に証拠金管理サービスを提供するコンサルティング会社、CIHの教育・リサーチ担当バイス・プレジデントのチップ・ウォーレン氏によると、オプションは、現物市場のポジションの補完に用いることできるという。「合成の組み合わせポジションを作って、オプション戦略を現物契約に併用すれば、証拠金の効率性を実現可能だ」と、同氏は述べている。

ウォーレン氏は以下のように述べている。「コールスプレッドやプットスプレッド、カバード・コールスプレッドなどの戦略は、限られたコストで現物市場の現物取引を補完でき、証拠金の効率が良いポジションの事例である」

同氏は、コールスプレッドの取引例を示した。生産者が12月受渡しでcwt(ハンドレッドウェイト)当たり64ドルで豚赤身肉を精肉業者に販売するが、価格が値上がりするかもしれないとまだ考えている。そして、生産者の証券会社の口座で、64ドルのコール買いと74ドルのコール売りを3.40ドルで購入できる。

「生産者は、売却後に正味価格3.50ドルで実際の価格を10ドル上回る高い価格で取引を行える。効率性を実現するには、現物市場を利用してポジションを構築し、維持証拠金率が不要なオプションを組み合わせて使えば効率性を実現できる」と、同氏は指摘する。

生産者を守る
最終的に、オプションに向かうトレンドで最も恩恵を受けるのは、生体牛の生産者かもしれない。3万頭を抱えるフィードヤードであるテキサスのグレート・プレーンズ・キャトル・フィーダーズにおいては、オプションは、リスク管理手法のカギを握る部分になっている。

「当社と共に生体牛を飼育する生産者は大勢いる。生産者は、収支トントンには興味がなく、生体牛で利益を挙げたいと考えている。こうした生産者に多少の上値の余地を与えるために、オプションを使用している」と、グレート・プレーンズの社長、シェルビー・ホーン氏は述べている。

ホーン氏は、こう説明している。「オプションは価格の下限を設定するのに良い方法であるものの、従来のヘッジ・プログラムを開始する前でも、価値が上昇すれば多少の上昇の余地があった」

「飼育場の仔牛をヘッジしようとする場合、オプションを使うことができれば仔牛の価格設定により柔軟性をもたせられる。天候がどうなるかがわからないことが多々ある。この先日照りになると考えているのならば、仔牛のフォワード取引に少々懐疑的になり、確定した受渡し日までに一定の体重になるように期待して用意を整える。オプションを使用すれば飼育場にいる仔牛に対して多少の価格保護が可能となり、それをかなり前もって行うことができる」



FRBは9月に利上げを行うか

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2015年7月16日 || OPENMARKETS

先物市場の動向や連邦公開市場委員会(FOMC)のリーダー達が前途に見えてきたフェデラルファンド・レートの引き上げを遅らせるよう促しているにもかかわらず、CMEグループのチーフエコノミストであるブル・プットマンは、健全な労働市場と安定したインフレ率は経済の強さを示す兆候であると指摘して、9月の利上げを予想している。

プットマンは時間当たり賃金、労働参入率そして最近の中国やギリシャでの金融危機に関連する適切な懸念について語っている。こういった要因は利上げを確実に遅らせると多くの人の間で信じられているが、プットマンは、FOMCのメンバー間での積極派と消極派との間では、大方の予想より早く妥協が図られると予想する。

上記のビデオをクリックして視聴する(字幕付)。



中国のニューノーマルにおける工業用素材の見通し

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2015年7月15日 || OPENMARKETS

中国の需要の台頭は、過去10年における商品のスーパーサイクルを主導してきたものの、同様に成長鈍化による「新常態(ニューノーマル)」がエネルギーからハード・コモディティにいたるあらゆる商品の大幅な調整を引き起こしている。中国経済は消費主導型に向かってリバランスされ、商品市場は価格下落して調整局面に入っているため、依然として先行きにかなりの不透明感が残っている。

こうした変化がコモディティ界にどのような影響を与えるかについてより深く理解するために、バーンスタイン・リサーチの石油・ガス担当シニア・アナリスト、ニール・ビバリッジ氏(香港在勤)と、SCローウィのリサーチ・アジア責任者であるミハ・チャンドラ(香港在勤)に話を伺った。


原油価格の調整について、中国要因はどのぐらいありますか。

ニール・ビバリッジ(以下、NB):原油が1バレル当たり100ドル超のレンジに達した主な要因は、中国の需要と石油輸出国機構(OPEC)の非加盟国の供給減少でした。ただ、最近の価格調整は需要ではなく供給面に問題があるのです。昨年は、米国におけるシェール生産拡大を背景に、供給が1980年代以来最大の増加をみせました。同時に、一部の工業用素材と比べると、原油は中国の需要への依存度がかなり低く、世界の需要全体のわずか10%にとどまっています。

世界の原油需要は、主として輸送需要にけん引されてこの10年の終わりまでにさらに3~4%伸びるとの見方を変えていません。韓国や日本の車両密度と比べてみると、中国の車両台数はあっさりと3倍増に達する可能性があります。

中国は、4月に初めて世界最大の原油輸入国に転じました。これは強さの高まりの兆しですか。

NB:これには2つの要因が存在します。一つは供給状況です。中国のオンショアの国内原油生産量は、今年3~4%前後減少すると思われます。もう一つの要因は政策であり、中国は、原油安を利用して自国の戦略石油備蓄を補充してエネルギー安全保障を増強しています。緊急時対応用として、国際エネルギー機関(IEA)が推奨する90日分をいまだかなり下回っています。中国はちょうど今、2億5,000万バレルを保有していますが、さらに6億バレルを積み増しする必要があり、今後5~6年間については日量30万バレルのペースで積み増す可能性は高いです。

今年上期に回復した原油価格の見通しについて、どのようにみていますか。

NB:これまでと全く異なる価格環境に置かれており、原油価格が1バレル当たり100ドルにすぐに戻るとみている人は誰もいません。価格がどのように供給に影響をもたらすかが重要な問題なのです。1バレル当たり60~70ドルで推移すれば、シェール生産は引き続き利益を上げられますが、その価格帯を下回っており、稼働リグ(掘削装置)数はいまだ減少傾向にあります。原油価格について、最近の調整局面と10年間に及ぶ下落局面につながった1986年のそれと比較してみて、今回はそのような状況が繰り返されることはないと予想しています。

原油価格が1バレル当たり60ドルになったと仮定すると、そうなればヘッジ取引が発生しますか。

NB:どの業界に属しているかに左右されると思いますが、航空会社や海運などの下流部門の需要家であるならば、これらの水準でのヘッジに関心を示します。しかし、上流部門の企業(生産を含む)については、原油価格が単に低すぎます。

では、鉄鉱石について検討してみましょう。価格が2011年の1トン当たり180ドルから今年同50ドルを割り込んだことを考察してみると、中国の景気減速が実際に重荷になっています。市場の見通しをどのようにみていますか。


ミハ・チャンドラ(以下、MC):ええ、鉄鉱石は、海上輸送市場全体の3分の2程度を占めているため、中国の景気低迷の影響を最も受けています。

全体的に需要がかなり旺盛であるので、中国が鈍化したら他にどの国が代役を果たせるのでしょうか。国内の低迷を補うために、中国は鉄鋼輸出を昨年拡大しており、2015年の年初来の鉄鋼輸出量は約1億トンに達しています。これらの輸出量を受けて、反ダンピング(不当廉売)の訴えが生じる可能性は高く、つまり鉄鋼生産は短期的に横ばい、あるいは場合によっては減少に転じると公算は大きいことになります。

とはいえ、支配的な要因は、低コストの鉄鉱石という壁が立ちはだかる供給状況です。4大生産者、つまりブラジルのVale、BHP Billiton、Rio Tintoそしてオーストラリアの生産者Fortescue Metalsが、海上輸送市場の75%を支配していると推定されており、増産を続けています。2014~2017年にかけて、生産量全体は、推定2億トンまで増える見込みです。

供給削減に至るにはもう一段の価格下落が不可欠ですが、これはそうあるかもしれないほど急速には起こりません。鉱山会社は、鉄鉱石の価格下落に適応するために果敢にコスト削減に取り組んで資産売却に努め、そのうえかなり割安になった流動資産である経営難に陥った鉱山会社を支援しています。

中国が重要な役割を果たしているもう一つの商品、一般炭の見通しはどうですか。

MC:中国が一般炭の海上輸送市場に占める割合は20%を少し下回っており、インドのそれと同じようなシェアになっています。とはいえ、中国は汚染を抑制するために内陸部の石炭火力発電所を稼働させており、このため海上輸送の石炭の輸送コストが上昇し、国内の石炭に対する競争力がないため、輸入は減少する見込みです。インドの需要がいずれ、価格に対する変動要因になる可能性の方がより高いです。そして政府は、かなり前に交付した石炭採掘権免許を取り消して、免許を再び競争入札にかけています。2020年までに石炭生産を倍増させて15億トンまで引き上げるという政府目標を掲げており、こうした動きが国内生産の拡大につながるかどうか見極める必要があります。

その他のハード・コモディティの見通しはどうなっていますか。

MC:まず銅から話を始めると、全般的に中国の成長減速の影響をそれほど受けていません。鉄鋼などのその他の金属とは異なり、不動産市場からの影響は小さいです。また、予想される供給の伸びを背景に今後数年間は逆風に直面したとしても、超高圧電力ケーブルへの銅の使用を踏まえると、成長の余地があります。

アルミニウムは他よりも消費に左右されるため、需要の観点からみると、相対的に見通しは良好ですが、膨大な在庫のだぶつきと中国における生産能力の増強を背景に、価格は抑制されるとみられます。全般的に亜鉛は、市場が依然として供給不足に見舞われているため、需給見通しが最も良好です。

中国の景気減速とスーパーサイクルの終焉に直面している商品の展望について、どのような大局的な見方をしていますか。

NB:今を商品市場のスーパーサイクルの終焉と言うには少々ピークを過ぎていると思います。重要となる変化を経験しているとあえて言いたいです。鉄鋼の需要、おそらく鉄鉱石がピークを過ぎていますが、原油とガスはまだピークに達していません。そして、天然ガスの見通しは、特に明るいようにみえます。天然ガスは、「将来に向けた低炭素の橋渡し燃料」と呼ばれています。

世界の原油市場動向に対する中国の影響をどのように予想していますか。今年、中国は、上海の自由貿易試験区で売買される原油先物取引を新たに導入する計画を発表しました。

NB:原油市場における最大の買い手であることは、一定の影響力を与えます。中国は、価格受容者ではなく価格形成者になりたいと考えています。指標価格を形成して物理的に貯蔵することは考えられます。とはいえ、資本取引での通貨の完全交換性に欠けていることを踏まえると、それは流動性次第です。


雨季と穀物市場の出来高記録

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2015年7月13日 || SUSAN SUTHERLAND

米国農務省が7月の需給報告で、2015穀物年度末のトウモロコシと大豆の在庫量を、全体で1億7500万ブッシェル引き下げことから、両穀物の先物市場はそれぞれ上昇する結果となった。ただ、こうした相場展開は、歴史的に価格変動率(ボラティリティー)が高い市場での、ごく最近の出来事に過ぎない。

本穀物年度については当初、2014年が豊作だったこと、さらに今年につても高い収穫率を示唆するデータが多かったことから、トウモロコシ、大豆、小麦などの穀物相場について、市場では弱気の見方が主体的だった。ただ、春から初夏にかけての降雨、さらにその他の要因によって、こうした当初の相場見通しは修正を余儀なくされる結果となった。実際、これらの3市場では共通して、5月・6月がボラティリティーの高い時期となっている。

例えば6月の最終週には、トウモロコシと大豆で、先物とオプションを合わせた総取引枚数の日中記録を、2度も更新している。また、同じ週にはシカゴの軟質赤色冬小麦も、同様の日中記録を1度(6月26日)、更新している。トウモロコシと小麦は1887年に、大豆は1936年に、それぞれの取引が開始された先物商品である。

長い取引の歴史のなかには、もちろんボラティリティーの高い相場展開も多くあった。しかし、今回の相場展開が特別なのには、理由がある。

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その1つは、米国の穀物産地で今年、例年では考えられないほどの広範囲で、記録破りの降雨量があったことである。主体的だった当初の弱気相場見通しはこれにより、短期間に劇的な修正を迫られることになった。トウモロコシ、大豆、小麦の相場でポジションを抱えていたファンドは、概して売りに偏っていたなか、新年度の作付けの遅れ、作付けされた作物の流出、収穫前の冬小麦に被害が出るなど、米国中西部の平野やコーンベルトにおける降雨が穀物の作柄に影響を与えていることが明確になると、大挙してこうしたポジションを閉じる結果となった。さらに、米国海洋大気庁による直近の湿度指数は、小麦、トウモロコシ、大豆の主要生産地となっている各州について一様に、「通常から過多」としている。

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一方で、ADMインベスター・サービセズのリサーチ部門でバイス・プレジデントを務めるスティーブ・フリード氏は、前述の様に6月末の取引枚数が記録を更新した背景は、単に「売り」から「買い」へ市場参加者がポジションを変更したからだけではない、と考えている。

「旧年度の穀物在庫に関して、米国と南米の生産者は活発な売り手となっていた。このことも、取引量の増加に貢献した」とするフリード氏は、「市場での売りポジションは、ファンド系から当業者へ、短期間に劇的なシフトを見せた」と指摘している。

フリード氏の指摘は、天候以外にも相場に影響した要因があったことを示唆するもので、今日の穀物市場は、グローバルなイベント、他の商品市場や金融市場の動向などに、より敏感な反応を示す様になっている。米国産穀物に依存する国は多いが、価格と供給の要素でブラジル産穀物が優位に立つ場合、その影響は米国市場にも現れる。ブラジルの天候、中国株の動向、全ての要素が米国のトウモロコシ、小麦、大豆などの相場に影響するのである。その意味では、最近の米ドルの上昇も、米国の穀物輸出に影響する可能性がある。ただ、こうした様々な市場要因は、市場参加者に一様の見通しを示唆する訳ではない。従って、相場展開には不確実性が生じ、結果としてボラティリティーが上昇することになる。

米国農務省の6月30日付需給報告に関するスティーブ・フリードとダン・ベースの分析(ビデオを見る、英語)

前出のフリード氏は、「優秀な市場アナリストの中には、米国産穀物の収穫量見通しの引き下げを背景に、相場の上昇を予想する人たちがいる。その一方で、同様に優秀なアナリストたちは、弱気見通しは既に相場に反映されているのであり、天候がさらに悪化しない限り、ここからの相場については下落方向を予想する向きもある」と指摘している。

至る所に経済のさざ波が立つなか、確実なのは、不確実性が市場に停滞するであろうということだ。ただ、フリード氏は、その中でも天候に最も注意するべきだとして、「その日によって相場の材料は異なるが、市場参加者が通常、最も注意するのは天候」なのだと言う。

アグリソース社のダン・ベース氏も、記録的な降雨と直近の米国農務省報告を受けて、穀物や油科種子などの相場の次の動きは、天候に左右されると考えている。

その上で氏は、「さらなる悪天候の材料がなければ、買い手側は市場から撤退することになる。市場が強気見通しを維持するには、穀物の収穫予想がさらに引き下げられる必要がある」と指摘している。

米国中西部では7月、例年を下回る気温が予想されているなか、8月12日には、米国農務省の需給報告が発表される予定となっている。相場の不確実性は、停滞を続けることになる。


深層学習は未来を創る

Deep Learning

2015年7月9日 || OPENMARKETS

CMEグループは、サンディエゴのスタートアップ企業であるネヴァーナ・システムズの2,050万ドルの資金調達ラウンドに参加した企業の1つである。ネヴァーナは、深層学習(ディープ・ラーニング)として知られる生物学からインスピレーションを得た人口知能を専門とする会社である。この技術は神経科学に基づいてアルゴリズム・モデルを使用して、巨大なデータセットからの表現を学習する。この技術は現在、音声コマンドや顔認証機能に利用されているが、ネヴァーナ・システムズのCEOであるナヴィーン・ラオは、金融サービス、農業および医療診断を含めた幅広い業界での応用を期待している。

ラオはコンピュータ・エンジニアとしてキャリアを開始し、コンピュータを使った神経科学で博士号を取得し、クアルコムの神経形態学的設計調査グループで働いた後、2014年にネヴァーナ・システムズを設立した。 ベンチャービートによると、同社は現在までに、2,440万ドルの資金を調達した。またネヴァーナ・システムズは最近、オープンソース・ライセンスで、ネオンという深層学習ソフトウェアを発売した。ネヴァーナ・システムズおよび世界経済における深層学習の位置付けについてより詳しく知るために、CMEではラオにインタビューを行った。本レポートは、そのときの会話を編集したものである。

現在はほとんどの人が、データが全てに影響するという考えに馴染んでいます。深層学習とは何ですか、またそれはどの様に異なりますか
深層学習は、機械学習の問題に対するニューラルネットワークを使ったアプローチの最新版といえます。基本的に当社では、ニューロンがどのように機能し、またニューロンがどのように情報を処理しているといわれているかについて極めて高水準の抽象的概念を得ており、そこから数学的なモデルを構築しようとしています。これは新しいフィールドではありません。こういった努力は、ニューロンでどのように情報が伝達されるのかが発見された1950年代から続いています。

深層学習は、ニューラルネットワークが情報をどのように表し、データ内の構造を実際に発見するのかということを学ぶ、進化的なプロセスの最終プロセスなのです。

深層学習へのアクセスを高めるために、ネヴァーナは何を行っていますか
深層学習に関する問題の1つとして、深層学習には実際のデータ問題上で機能させるのが難しい多くの側面が存在するということがあります。当社では、これを取り囲むソフトウェアの階層をひとまとめにしてこれを極めて簡単にして、誰もが安全にその問題スペースを俎上に載せられるようにしようとしています。

もう1つ、深層学習は基本的に多くのコンピュータ資源を必要としますが、こういった新しいコンピュータ資源を保有している人は実際にはいません。現在はグーグル、フェイスブック、そしてマイクロソフトの世界が支配していますが、当社ではこういった能力を他の全ての人にもたらしたいと考えています。

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ナヴィーン・ラオ - 2014年にネヴァーナ・システムズを共同で設立

深層学習は近い将来どの業界で最も影響を及ぼすでしょうか
今後5年から10年の間に、機械学習の技術により世界の姿は大きく変わっていくでしょう。しかし、これから初期段階で重要になっていくと私が考える分野の1つが金融です。金融サービス会社は規制の実施に大きな関心を持っており、また当社は複数の側面からこれにアプローチしています。
その他の面としては農業があります。農業は、当社がこの極めて古い問題に技術を突然適用するようになった転換点と言える分野です。世界に食糧を届ける必要があり、当社はそのためにこの技術を使った新たな方法を見つけ出そうと努力しています。

私の家族は全員医者であることから、医療診断は私が個人的に興味を持っている分野です。レントゲンの読像に優れた医師をどこかに抱える代わりに標準化が可能である問題に取り組みことに、非常に興味を持っています。正面から取り組まなければ、最善の結果は得られません。診断のためには標準化して、アルゴリズムに組み込む必要があります。細胞がいつガン化するか否かの規準が得られるようになり、これを標準化して暗号化してアルゴリズムにすれば、意見ではなく完全で信頼のおける診断となります。

この種のアルゴリズムが既に実現しているのはどの分野ですか
Windows Phone、Android phone、またはiPhone、すべてのスマートフォンがそうです。音声による個人アシスタントでは、深層学習を使って利用者の声を解読します。こういった機器が現在有用となってきているのは、深層学習のおかげです。

音声認識は長い間使われてきましたが、わずか5年前までは役に立ちませんでした。あまりにも間違いが多いので、有用と判断する基準を超えられなかったのです。しかし現在、携帯電話に話しかけて質問をすると、ほとんどの場合正しい反応が得られます。

スマートマシンが今後どのようになっていくのか、一部の人々は恐れも感じています。人工知能に脅威を感じるのは誤った概念なのでしょうか、それとも脅威なのでしょうか
現在は脅威を感じるような段階には遙かに達していません。絶対に起こりえないとは言えないと思いますが、現時点では、そこに話を結びつけるのは良くないと思います。当社が現在構築しているのはよりよいツールであり、人間が何百トンものゴミを運べないがそれを片付けるのにブルドーザーを作り出して何百トンものゴミを片付けられると同じように、人間の能力を拡張するものです。

同様に、1,000万枚の写真を数秒でふるい分け、そこに何が含まれているのか実際に明らかにするアルゴリズムを作ることはできますが、これは個人としては行うことはできません。これは私の心の中ではツール以上のものであり、様々な方法で人生を実際によりよくするものだと考えています。

深層学習の経済的影響が最も大きいのはどの分野だと思いますか
これは産業革命の時と同じようなものです。産業革命では農業や他の産業の機械化が起こりましたが、トラクターその他の機械的手段により混乱が生じました。また労働市場は、現在日常的と考えられるが他に方法がない作業から人間を解放しつつあります。例えば、机の上に何百ものローン契約があり、文字通りリスクの計算を行う必要がある人といった例が挙げられます。単純な問題のように見えますが、これを何百もの様々に異なる契約に拡大していけば、こういった作業を行う人が多く必要であり、また時間もかかります。これは、単純にアルゴリズムを構築できるものです。これは標準化が可能で、完璧に機能し、1年ではなく数分で行うことができるようになります。

ネヴァーナの設立をどの様に決断しましたか
2007年に、私はコンピュータ・エンジニアとしての仕事を辞め、学校に戻り、コンピュータによる神経科学の博士号を取得しました。これは、実際にコンピュータの使用が生物学の文脈からどんな意味を持つのか理解するためでした。視覚データを見てそれを音声や臭気や触感といった全てと統合し、その全てを結合力のある世界にまとめ上げること、これが人間の脳が行っていることです。そしてこれこそが、当社が巨大なデータセットに対してやりたいことなのです。

私は実際に、クアルコムの神経形態学的設計調査グループで働いていました。神経形態学的設計は基本的には、低レベルつまり回路レベルで生物学からヒントを得て、そこから合成機械を作り出そうとしています。これは調査プロジェクト以上のもので、私はここで、私の製品を使う可能性がある潜在的な顧客に話をし始め、また深層学習への増え続ける需要を見つけました。

現在データがあり、深層学習というコンピュータを使った技術があり、そして市場ニーズもあります。膨大な数のデータがあり、それを理解する必要があります。企業はデータの中に洞察を見いだす必要があります。こういった要素すべてが絡まって、ネヴァーナの設立に至ったのです。

ネヴァーナにとって次のステップは何ですか
今回のラウンドを終了するに当たって、当社は開発プロセスを継続するための資金が得られました。当社はかなりの人数の雇用を続けています。当社ではまもなく、誰もがアクセスできるようなクラウドサービスを立ち上げる予定です。これは、実際にこの最高技術水準のパフォーマンスと能力を、お金を支払う意志がある人には誰でも小規模で提供しようというものです。

単に現在のアーキテクチャでは不可能なため誰もが試すことさえもしたことのないある種の技術やモデルが存在することから、当社ではこのサービスに大いに期待しています。例えば、ある特定のアルゴリズムを巨大なデータセット上で仕込むのに1年かかるとすれば、誰もやりたがりません。しかし当社はこういった1年かかるであろうものを、文字通り1日あるいは数時間で行うことができます。新たな可能性の一群が幕開けするのです。これからこの分野での1年半は、当社にとって極めて活気に満ちた時期となるでしょう。


原油輸出を解禁した場合

A Case for Crude Oil Exports

2015年7月9日 || EVAN PETERSON

米国におけるエネルギー技術の向上と原油生産の大幅な伸びを背景に、米国では40年以上続いている原油輸出禁止措置を解除すべきか否かを巡る論争が再び浮上して活気づいている。これこそが7月8日に開催した米下院農業委員会の公聴会にて議論され、公聴会で証言したCMEグループのテリー・ダフィー執行役会長兼社長がCNBCの論説(op-ed)に執筆した話である。ダフィー執行役会長兼社長は、1973年の中東の産油国による輸出禁止に対抗して制定されたこの原油輸出禁止措置が、掲げられた目的を果たされなかったと記載している。

利己的な政略で好ましくない政策であるは明らかだ。米国を激しい価格変動から守り、他国からの原油輸入の依存度を抑える代わりに、この人為的な障壁は実際に、ノースダコタ州やテキサス州のような地域でシェールオイルを豊富に埋蔵する油田から原油を採掘する生産者に打撃を与えている。米国産原油と世界市場が分断されているために価格に歪みが生じ、投資の意思決定がゆがめられ、意図された合意とは全く逆に、海外の生産者が優位な立場になっている。

分断された米国産原油は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)、つまり北米産原油の指標価格であり、また北海ブレントと共に世界の2大価格指標の一つである。ダフィー執行役会長兼社長は、今回の証言と論説において、米国は既に世界の指標価格を決定できる極めて高度な金融市場となっているため、禁止措置を解除すれば、米国が世界の原油取引の中心的な立場になれるだろうと主張していた。「議会は、原油輸出禁止措置を解除し、エネルギー政策を現在の市場動向に合わせるべきである」とも書いている。

輸出禁止策の廃止の要請は、米国の原油生産量が前例のない規模に達した時期に生じた。エネルギー情報管理局(EIA)は、2016年に 米国の産出量が日量920万 バレルに達すると予想しており、米国はロシア、サウジアラビアに次ぐ世界第3位の産出国である。

また、上院と下院では、輸出禁止の解禁に向けた法案が提出されて審議されている。 主要な法案 は、リサ・マコウスキー上院議員(共和党・アラスカ州)が提出したものであり、一方で下院農業委員会のマイク・コナウェイ委員長(共和党・テキサス州)とヘンリー・クエラー議員(民主党・テキサス州)は類似法案を提出した。

米国産原油が市場動向によって調整されることに加え、賛成派と研究者が輸出禁止措置の解除で米国が恩恵を享受すると主張するその他の主な理由は以下の通りである。

雇用増加: エネルギー・コンサルタント会社のHISは、禁止措置が解除された場合、2016~2030年までに 米国で雇用が年間約12万4,000人創出 されると示唆している。

ガソリン価格の低下: 輸出が解禁されれば世界の原油価格が押し上げられ、その結果国内のガソリン価格が下がる可能性があると、賛成派は指摘している。下院の農業委員会の場において、Continental Energy社の創業者Harold Hamm氏は、輸出禁止措置を「現在の米国経済に実害をもたらしているニクソン時代のひどい遺品と呼び、国内のガソリン価格とディーゼル油価格があるべき姿よりも押し上げられている」と発言した。Hamm氏が寄稿した禁止措置解除の緊急性に関する 最近のWall Street Journalの論説 を参照。

国内のエネルギー生産の拡大: 会計検査院の調査 は、2030年までに生産量が日量13万~330万バレル増加するとの見通しを示した。また、同報告書には、禁止措置の解除により、米国経済は拡大する見込みであると記載されている。

通商政策の向上: 米国は既に、精製ガソリンと精製品を含む農作物とエネルギー源を輸出している。 外交問題評議会のまとめた報告書 は、輸出を解禁すれば、2017年までに経済成長が年間150億ドル押し上げられ、原油輸出国になれば、その他の通商問題において自国の立場を強められることを示唆した。

詳しくは、原油輸出禁止措置に関する公聴会に関しては ここここ、そしてテリー・ダフィー執行役会長兼社長の証言については ここを参照してください。



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OpenMarketsは、CMEグループが発信するオンラインマガジンです。本ブログは、日本のトレーダー向けに、主に同マガジンから抜粋した記事を翻訳した
ものです。新たな商品紹介、
ケーススタディ、テクノロジー アップデート、今話題のトピックなど、デリバティブ産業への
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