世界食料デーと商品市場

World Food Day

2014年10月17日 || TIM ANDRIESEN

10月17日は世界食料デーで、食料安全保障が世界各国で議論の中心に据えられた日だった。 筆者の私見ではあるが、世界食料デー、そしてその外郭的な課題でもある食料安全保障は、常に商品市場と結びついている。

そんな中、最近、大手輸入会社の穀物部門を率いる友人と夕食を共にする機会があった。 話の中心は、効率的なバリューチェーン(価値連鎖)と、それが依存できる市場の存在が、共にいかに重要であるかだった。できる限り低コストで商品を生産者から世界の市場へ流す、効率の良い、具体的なバリューチェーンを構築し、このバリューチェーンが、同様に効率的で、相場シグナルとして発信される価格を形成する市場に依存し、現物市場の参加者が商品リスクを相殺する場として、こうした市場が利用可能である、という一連の関係が重要だと言うことである。 これは、増大を続ける世界人口に対する食料供給能力の中核を成すシステムで、CMEグループはこのシステムの一部を担っていることを誇りとしている。

今年の世界食料デーの公式テーマは「家族農業」で、食料安全保障の維持と飢餓撲滅に関して、家族農業が果たす重要な役割に焦点を当てている。 このテーマはまた、中西部の農産物生産者が集まり、コストと市場利益の増減をヘッジする場としたことに端を発するCMEグループの歴史とも結びつきが深いものでもある。 ただ、以前にも書いたが、食料安全保障に関する商品市場の役割は、単に経済的な範囲を超えている。 その意味で、商品市場の役割は、人道的なものでもある。 リスクを効率的に管理し、利益を確定することが出来なければ、農家などの生産者は世界中に食糧の提供が出来なくなる。

世界人口は急増しており、中国やインドなど、新興の大規模経済国では中間層が急速に拡大している。 こうした背景は、旧来の土地面積で、旧来以上の食糧を生産する必要があることを意味する。 問題は複雑で、テクノロジー、エネルギー、地政学、投資、そして間違いなく効率的市場が係わってくる。 食料安全保障に関連したこうした問題と、世界食料デーの重要性に着目したメディア報道を、いくつか下にまとめた。

2014年世界の農業生産性に関する報告書は、インドでの明確な農業革命を指摘(グローバル・ハーベスト・イニシアチブ

世界の食料供給に大きな変革をもたらす(かもしれない)3人のティーンエージャー(モダン・ファーマー

食料安全保障の確保に果たす市場の役割(OpenMarkets

インタラクティブ・グラフィックで食品価格に影響する市場要因を説明(フューチャーズ・ファンダメンタルズ

毎日が世界食料デーである理由を語るロジャー・サロー、食料安全保障をテーマとする作家(OpenMarkets

家族農業が世界の飢餓撲滅のカギを握る理由(インターナショナル・ビジネス・タイムズ

先物市場を活用する食料品業界(OpenMarkets

世界食料デーを啓蒙するための資料リスト(ガーディアン紙




家畜市場:その最適取引時間

FINDING THE RIGHT BALANCE ON LIVESTOCK HOURS

2014年10月17日 || TIM ANDRIESEN

10月始め、家畜市場の電子取引時間短縮の方針が示されたとき、市場参加者の反応は、これを支持するものが圧倒的だった。たとえば、ブルームバーグがこれを報じた記事のタイトルは、「CMEが家畜取引時間を短縮 トレーダーは睡眠時間の増加を歓迎」だった。実際、ほぼ24時間稼働していた電子市場が一般的な米国の営業時間に短縮されれば、安心して夜眠れるという人もいただろう。しかし、取引時間短縮による恩恵は、睡眠時間に限定されていたわけではない。

CMEグループでは取引時間を決める際、市場参加者の利便性と市場の流動性を考慮した上で、常に最適なバランスを探るように努めている。 生産者などの当業者に対して、現物リスクを相殺する(ヘッジ)手段を提供することが、CMEグループの役割だからだ。 一方で、現物市場とCMEグループの先物の取引時間が一致しないなか、当業者が価格リスクのヘッジ機会を必要としているのも事実だった。 ただし、市場を毎日、24時間稼働させることは不可能であり、当業者などのヘッジャーが市場を介して価格リスクを移管するためには、市場参加者の多様化が重要であるのも事実である。 取引時間に関する課題は、ヘッジャーの市場参加を維持しつつ、その他の参加者を最大限とするため、両者のニーズが最適化される時間帯を設定することだった。 2014年10月27日、午前9時05分(シカゴ時間)にスタートした新しい取引時間では、生牛、飼育牛、豚赤身肉の各先物市場で、これまで以上に市場流動性が高まると考えている。

なぜなら、この取引時間の設定には熟慮が重ねられたからである。 これまでの取引時間について、数人の市場参加者から問題を指摘されて以来、生産者を含めた当業者や業界関係者、トレーダーなど、広範な分野の市場参加者から聞き取り調査が行われた。 結果、得られたフィードバックは一貫したものだった。 それは、取引時間の短縮によって、家畜市場での売買はより安易になり、市場流動性も改善するだろうという点で、一貫したものだったのである。

実際、家畜市場は、その他の資産クラスとは異なる性質をもっている。 また、この市場に関心を持つ取引参加者には、それぞれに異なるニーズを抱えた多様なグループが存在するのである。 たとえば、オクラホマ州で牛を飼育する牧場主には、ノースカロライナ州で養豚業を営む業者とは異なるニーズがある。 したがって、フィードバックの取集では、いくつか異なる意見も散見された。 夜間の取引時間維持を要望するものもあったし、短縮すべきというものもあった。 また、山岳部標準時の地域にある牛農家にとっては早過ぎるし、東部標準時の豚農家にとっては遅過ぎるなど、標準時間の違いも取引時間を設定する上で考慮されなくてはならなかった。

こうした全ての意見と側面を踏まえて比較検討し、取引を日中に集中することで、結果として取引時間を短縮化することが生産者のニーズを最も満たす、とする市場参加者の総体的な認識と合致することが分かった。 こうして、月曜日は午前9:05から午後4:00まで、火曜日~木曜日は午前8:00から午後4:00まで、金曜日は午前8:00から午後1:55までを取引時間とすることが、最も理に適っていると結論付けられた。実際、それまでの24時間取引においても、日中売買高の98%がこうした時間帯に集中していた。

もちろん、こうした決定をする場合、あらゆる市場参加者の声が考慮される。ただ、ヘッジャーによる一貫した意見は、特に重要な意味を持つことになる。 ヘッジャーは先物市場の中核を成す参加者であり、先物市場が存在するそもそもの理由でもあるからだ。

CMEグループの最大の目標は、完全性の高い市場を提供し続けることなのである。 その上で、取引時間の決定には、利便性と流動性のバランスを慎重に比較検討することが求められる。トウモロコシ市場のように、世界中に取引ニーズが存在する市場には、それなりのバランス感覚がある。 一方で、家畜先物の取引は、地域性がより高い市場であるもの事実なのである。 実際、CMEグループの家畜市場でヘッジ目的の取引を行っているのはほぼ全て、米国内の参加者である。したがって、取引時間の長さよりも市場流動性を優先させることで、取引ニーズが高いこうした市場参加者が利用しやすい市場とすることが優先された。

農産物市場における電子取引の普及と並行して、最大限の市場アクセスを実現するため、家畜市場の24時間電子取引化は2007年に実施された。 もちろん、これによって取引の利便性は向上したが、その一方で、夜間には流動性が低下する時間帯もあった。 農産物市場における当業者のヘッジ取引は、有限なのである。 今回の取引時間短縮は、こうしたヘッジ取引を米国の日中時間に集約することで、安定した流動性を市場が維持することを目的としている。



ノーベル経済学賞受賞者ジャン・ティロールと先物の関係

NOBEL WINNER JEAN TIROLE’S CONNECTION TO FUTURES

2014年10月14日 || EVAN PETERSON

ここしばらく、毎回、複数の受賞者を出していたノーベル経済学賞は2014年、ジャン・ティロールただ一人の受賞となった。その意味では、これまでの流れが変わったとも言えるが、CMEグループとノーベル経済学賞受賞者との関係は、2014年も変化はなかった。 昨年の受賞者であるロバート・シラー、ピーター・ハンセンと同様に、ティロールも、革命的なクオンツの応用研究でCMEグループMSRI賞(2010年)の受賞者だったからである。 両賞を受賞したのはシラー、ハンセン、トーマス・サージェントに続いて、ティロールが4人目となる。

ティロールへのノーベル賞経済学賞は、競争相手が少ない環境下で、大企業の規制判断に関する分析に対して与えられたものである。 受賞発表の際、ノーベル委員会は、この分野での彼の功績を、次の様にまとめている:

産業分野の多くは、少数の大企業、または単体企業の寡占常態となっている。 こうした状態が放置されれば、コスト反映の範囲を逸脱した価格、新規の参入やより生産的な企業の参入を阻止することによって生き延びる非生産的な企業など、市場は社会的に好ましくない結果を導く場合が多い。

1980年代半ばから、こうした市場の失敗について、ジャン・ティロールは新しい息吹を吹き込み続けてきた。 市場で力を持つ大企業に対する彼の研究は、企業買収や合併、カルテル、市場独占などに対する政府の対応について、その政策の中心的な部分に深く関連する統合的な理論を提供するものである。

ティロールの関心はまた、産業組織、規制、組織論、ゲーム理論、財政論、マクロ経済、心理学など分野にも及んでいる。 さらに、2013年のCMEグループMSRI賞受賞者であるベンクト ホルムストロームとの共著で彼は、市場流動性についても論じている。「Inside and Outside Liquidity」と題されたこの論文は、金融危機発生時における安全資産の可用性に焦点が当てられている。そこでは、危機状態において、企業や国民が利用可能な範囲に借入コストを維持するために必要となる市場流動性を供給する能力を有しているのは政府であるとして、破たんした銀行の救済は納税者のコストで行われるべきではないとする一般の議論に、真っ向から対峙する論点で分析を行っている。CMEグループMSRI賞は毎年、称賛されるべき数理分野の研究、世界の金融市場の未来を形作る上で大きな影響を与え得るクオンツ・リサーチに対して授与される。 CMEグループMSRI賞についてさらに詳しく、また過去の受賞者のリストはこちらを参照。



オプションの売買高が記録的水準に

TODAY’S NUMBER OPTIONS TRADING RECORDS A REFLECTION OF GLOBAL EVENTS

2014年10月2日 || DEREK SAMMANN

オプション取引の売買高急増の背景には、もっともな理由がある。市場のファンダメンタルズでは今、ボラティリティの劇的変化が多方面で発生する可能性が示唆されている。例えば、FRBは量的金融緩和政策を近々打ち切ると見られており、短期市場における超低金利政策がいつ放棄されるのかについての予測が、市場で交錯している。 また、ここ数年来、株式市場では過去高値の更新が相次いでいるが、中国経済の減速と欧州経済のデフレ懸念を背景に、市場のボラティリティは高まりを見せている。さらに、米国と英国の経済が日本と欧州のそれをアウトパフォームする状況になっていることで、外為市場の動きも再び活発化している。 こうして各種のボラティリティが高まりを見せている状況は、リスク管理ツールとしてのオプションが、その本領を発揮する状況でもある。

事実、リサーチ会社のTABBグループは今年初めに発表した調査書(「先物オプション:さらなる拡大への準備を整えた市場」)で、先物オプション取引の活発化が予想される理由を概説している。このリポートでは例えば、金利政策の転換、そしてオプションやその原資産である先物市場で電子取引化が進み、こうした取引が投資家にとって一段と魅力的になっていることを指摘し、オプション取引拡大を予想する根拠としている。

こうした要因は、より多くの市場参加者とより高い市場流動性をもたらし、取引の仕掛けと仕切りをこれまで以上に容易にする。 また、先物オプション取引は低コストであり、あらゆる市場に対するリスクの取捨を柔軟に実行することを可能にする投資手段でもある。 金融危機以降、オプション取引は全ての資産クラスにおいて、その人気度を高めている。5年ほど前、売買高が月間で約3,000万枚に過ぎなかったオプション取引は、2014年の月間平均では約5,000万枚に達する水準となっており、日中平均では250万枚近くとなっている。

そして今年9月、TABBグループが予想したところの「大きな成長」が、実際のものとなった。 CMEグループの農産物、株価指数、金利、そして外国為替の各市場において、日中売買高の記録更新を含めて、記録的な売買高が達成されたのである。オプション取引の総数は日中平均で308万7724枚に達し、これも過去最高を記録した。この日中売買高は、それまでの記録となっていた2008年1月の記録を、3万枚以上も上回るものだった。

options graph

オプション取引が爆発的に増加するとの予想は正しかったが、これほど多岐にわたる資産クラスで、これほどの売買高水準が、それも同時に達成されるとの予想はあったのだろうか? この現実の背景としては、農家からヘッジファンド・マネージャーまで、あらゆる市場参加者に影響を与える多くの要因が集中したことを挙げることが出来る。 例えば、先に見た9月の記録的な売買高では、その背景となった世界的な出来事を様々、振り返ることが出来る。

外為オプション(過去最高の日中売買高平均=110,226枚を達成) 9月4日、ECB(欧州中央銀行)は、大方の市場予想に反して、政策金利を記録的な低水準に引き下げた。 この結果、ユーロ/米ドルのオプションは過去最高の売買高を更新している。 加えて、予定されていたスコットランドの住民投票に関する世論調査が「接戦」を予想する内容となり(英ポンド/米ドルオプションの記録にも反映)、 ブラジルでの総選挙実施も間近かに迫っていたこともあって、同日の外為オプション取引額は想定額面で324億ドルに達し、過去最高を更新した。

米国債 週間オプション(過去最高の日中売買高平均=95,110枚を達成) 債券オプションが2か月続けて記録的な売買高を達成したのは、その大部分において、短期金利政策に対するFRBのスタンスに起因している。 9月に開催されたFOMCの前後には、イエレンFRB議長が「(超低金利環境は)相当な期間(継続される)」という表現を用いたことから、現状の水準が長期的に維持されるという前提で、市場参加者は金利リスクの管理を先行させた。

E-mini S&P 500 週間オプション(過去最高の日中売買高=139,315枚を達成) 9月初め、株式市場のボラティリティは約12%に過ぎなかったが、月末時点では16%超まで上昇した。こうしたボラティリティの上昇は、E-mini S&P 500週間オプションを使った短期のヘッジ、そして取引機会の増加をもたらした。

農産物市場のオプション(前年同月比40%増=302,914枚を達成) 大豆先物オプションの日中売買高は、前月比で55%増となるなど、農産物市場のオプション取引は9月に大きな増加をみせた。 とうもろこしと大豆については今年、記録的な収穫量が予想されていて、価格リスクを管理する需要家のヘッジ加速を背景にオプション取引が活発化した。さらに、新穀短期オプションなど、新機軸のオプション取引も急拡大している。

9月に起こった地政学的な出来事やマクロ経済のイベントも、オプション取引拡大の契機となった可能性がある。 一方で、TABBグループのレポートが示すように、電子取引の稼働拡大という要因も、オプションの記録的売買高と大いに関係している。

「現在、取引所によって運営される電子市場では、公平性を背景として、より効率的で途切れることのない注文執行など、市場参加者に対して「卸売市場」の利便性が広く提供されています。 2009年時点では、先物オプション取引全体における電子取引の割合は13%に過ぎませんでしたが、今では50%以上の取引がここで執行されています。 売買高が増加することで市場の呼び値(買い値と売値の価格差)が縮小し、注文執行ツールの進歩は自動取引も可能となっています。電子取引は今後も、先物オプションの主体的な取引場であり続けるでしょう」

9月には、過去最高となる3010万枚のオプション取引が電子取引で成立した。世界各地でのイベントが市場動向に不確実性を加味し続けるなら、今後もオプション取引の人気はあらゆる市場参加者の間で高まり、近い将来、さらなる売買高の過去最高記録更新が見られるかもしれない。



CMEグループについて

CME Group
CME、CBOT、NYMEX、
COMEXから成り、世界を
先導する多彩な金融市場です。
グローバルおよび地域的経済・
金融に関するブログをお届け
します。CMEグループの日本語サイトはこちらをクリック。

CMEグループのリソース
CMEグループのツイッターで
@CMEGroupJapanをフォローください。
月次アーカイブ
検索
QRコード
QR
OpenMarketsについて
OpenMarketsは、CMEグループが発信するオンラインマガジンです。本ブログは、日本のトレーダー向けに、主に同マガジンから抜粋した記事を翻訳した
ものです。新たな商品紹介、
ケーススタディ、テクノロジー アップデート、今話題のトピックなど、デリバティブ産業への
従事にお役立てください。