アリババ上場から企業によるベンチャー投資を考える

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2014年9月24日 || MARK FIELDS

9月18日、金融メディアは中国の電子商取引大手、アリババ(NYSE:BABA)のIPO(新規株式公開)に高い期待を寄せるニュースや予測で沸いた。 上場初日に公開価格68ドルを上回って取引されると予想されたからだ。実際、そのとおりの展開となった。金曜日の終値は1株93ドルを付け、時価総額はおよそ2300億ドルに達した。 アリババは、創業から15年で、世界最大級の時価総額を誇る企業となったわけだ。

一方、アリババの主要提携先であり主要株主である米ヤフーの時価総額は、同日終値で約410億ドルだった。同社はアリババ株の16%を保有しており、その価値は現在およそ380億ドルになる。 ということは、米ヤフーにはその差額の価値しかないのだろうか。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると「アナリストはアリババ上場後の米ヤフーの市場価値を約70億ドルと評価している」という。 どうして、こうなったのだろうか。

米ヤフーは、2005年に現金10億ドルの投資および中国事業の譲渡と引き換えに、当時は約40億ドルで評価されていたアリババ株40%を取得した。同時期、米ヤフーの時価総額は約470億ドルだった。
このような取引をした理由について、当時米ヤフーの最高経営責任者(CEO)であったテリー・セメル氏は、次のように説明している。
アリババとの提携は、米ヤフーがこの地域で勝つための最善のアプローチなのです

そして今も昔もアリババのCEOであるジャック・マー(馬雲)氏は、次のように付け加えている。

「アリババ・ドットコムの事業にヤフーチャイナ(中国雅虎)が加わることで、当社のサービスが拡充され、中国のネットユーザーに優れた検索手段を提供できます。 アリババ・ドットコムは中国で、B2B(企業間取引)に勝ち、C2C(消費者間取引)に勝ち、オンライン決済に勝ち、そして今度は検索分野にも勝とうとしているのです

下線を引いたのは、この取引に対して両者が目指すところの違いを際立たせたかったからである。

誰のビジョンが実現したのか?

米ヤフーは創業から20年以上が経つ。 1995年にベンチャーキャピタル(VC)からおよそ700万ドルの資金を調達し、1996年には株式を公開して上場初日の時価総額は8億4700万ドルとなった。それから9年後の2005年には時価総額が470億ドルに達した。VCが当初拠出した資本額の7000倍近くになったわけだ。 アリババと戦略的提携を結んだのは、このころである。そして、それが両社の運命の分かれ道となった。

マー氏の発言に注目してほしい。同氏の焦点は、自社の顧客が求めていることにあった。システムの問題点を明確にし、急拡大する顧客基盤の貪欲な欲求にこたえるため、既存のプロセスとテクノロジーの組み合わせに、さらに新しいテクノロジーを積み重ねていったのだ。それとは対照的にセメル氏の焦点は、中国でのシェア拡大と「検索」分野での成功だけにあった。氏は既存のテクノロジーを用いて新しい地域で成功するつもりだったのだ。その考え方は論理的である。しかし、それはいかにも直線的であり、累乗的(指数関数的)ではなかった。

Alibaba graph

アリババが世界的大企業として急速に台頭した理由のひとつとして、今テクノロジーの発展が「潮の変わり目」に差し掛かっていることが挙げられる。しかも次の「一大潮流(ビッグシング)」は、かつて起きた流れよりも早く起こっているのだ。米ヤフーにとって一大潮流とは、検索技術とワールドワイドウェブ(WWW)であった。 そしてアリババにとって一大潮流とは、テクノロジーの融合であった。それによってサービスが統合され、顧客に大きな価値をもたらしたわけだ。アリババが、この先さらに価値のある成果を生み出していくか、事業をうまく展開するか、あるいはヤフーよりも早く時代に取り残されるか、非常に注目される。

この話はコーポレートベンチャーキャピタル(CVC、訳注:事業会社が立ち上げた新興企業向けの投資会社)、事業開発(BD)、企業M&A(合併・買収)といった動きと関係がある。それは、どれもが健全な戦略的経営に寄与していることだ。企業がCVCを推進するのは、累乗的現象を活用するためである。

VC業界には、中核事業に新たなテクノロジー、破壊的な影響、あるいは持続性をもたらしてくれる人材がいるはずだ。 投資して新たな価値を創出できなければ、置いていかれるだけである。

1995年にヤフーに投資した唯一のCVCが、ロイターであった。 当時ロイターは世界的変化に直面していた。同社の閉鎖的な情報インフラが、複数の媒体から無料でニュースや情報を得られるWWWとの競合にさらされていたのだ。そしてロイターは、事業内容が変化しているものの、今も世界とのつながりを維持している。米ヤフーに市場データを提供していなかったら、1995年に投資をしていなかったら、その投資ですぐに軍資金を増やしていなかったら、そして中核事業を収益化させる新しい道筋を見つけていなかったら、どうなっていただろうか。

マー氏は、アリババを上場し、BDやM&Aを活用して、成長そして価値の創造を加速させている。氏は、市場、勢力図、そして顧客の好みが急激に変化しており、それに遅れをとらない唯一の方法は、テクノロジーを相互に積み重ねて生き残ることだと読んでいたのだ。

これからの潮流の変化は、これまでよりも早いだろう。こうした変化に真正面から取り組み、ベンチャー投資、提携やM&Aの賢明な活用をとおして、機を見るに敏であれば、うまくいくはずだ。

マー氏は、正しい時期に、正しい取引をまとめ、うまく遂行した。一方、米ヤフーは経営者の交代を何度も繰り返している。初期段階では直線的思考でもかまわない。累乗的傾斜も最初はさほど急ではないからだ。 テクノロジーがその傾斜を急にしていく。 累乗化の時代はまだ幕を開けたばかりである。


アルミニウム製造業者の新たな挑戦

THE NEW CHALLENGES FOR ALUMINUM PRODUCERS

2014年9月23日 || EVAN PETERSON

本記事は、アルミニウム市場の現況と、生産者および消費者にとっての好機に関するCMEのインタビュー・シリーズの第4部である。 全てのインタビューを見るには ここをクリック。



アルミニウム・インタビュー・シリーズ、第3部まではアルミニウムの需要に注目し、自動車業界で必要な水準が増加していることから、ビール会社での従来型のニーズといった話までを取り上げてきた。 ジョージア州ニューマンに本社を置く Bonnell Aluminum 社の Andy Massey 氏が、需要を喚起する要因をさらに付け加えた。

「この2、3年、事業はすばらしい状況を続けています……。 建築業界では、アルミが主に断熱性や外見上の目的から選ばれています。最近はおしゃれでカラフル、派手な外観のビルが求められているため、そうした理由からアルミの需要は増加し続けているのです」

Bonnell 社はアルミ押出成形において米国のトップ企業の1つで、商業ビルの外壁、歩道、ハリケーン シャッター、ライトトラック、工業用機械といったものを生産している。 アルミニウムの需要が変化すると、Bonnell社はそれを感知して価格リスクを管理する必要がある。これについてMassey氏は「取引価格だけでなく、需要にも左右される循環型ビジネス」と認識している。

しかしインタビューを行った他のアルミニウム・ヘッジャーと同様に、今年のMassey氏の会社は、中西部プレミアムの上昇で現在 $0.20/lb付近となったアルミニウム価格の影響を受けたと述べている (同氏は、$0.08/lbあたりが妥当としている)。 このプレミアムにより、アルミニウムのヘッジが難しくなり、アルミニウムの消費者や Bonnell社のような生産者は、今年初めから CMEグループが取引を開始した新しい銘柄を使い始めている。

Massey氏はこの銘柄と、アルミニウム事業の今後について、上記のビデオ(英語)で語っている。



スコットランド住民投票後も続く英ポンドの動き

POST-SCOTTISH VOTE, POUND ACTIVITY CONTINUES

2014年9月22日|| SEAN HAYDEN

スコットランドでの住民投票が行われた日、英ポンドの通貨先物では、期近限月の売買高が、前月の日中平均を36%上回った。そして、独立拒否は決まったが、英ポンドに関しては先物もオプションも、高水準の売買高が続いている。 実際に投票翌日、開票が行われた日には、オプションの行使価格別売買高は、その上位10位までが英ポンドだった。

先物価格は投票日が近づくにつれて上昇基調となり、市場は独立賛成派の敗退を示唆する展開となっていた。 実際に、投票結果は独立反対が55%、賛成が45%だった。また、今回の住民投票の投票率は、過去最高の85%を記録する結果となった。 こうして、住民投票は終わったが、結束を維持してくため、連立王国(UK)には変革が必要であることを各政党のリーダーたちが指摘していることなどから、英ポンドは市場の注目を集め続けることが予想されている。

530万ほどの人口を抱えるスコットランドは、独立するのかUKに留まるのかで、世界の熱い視線を集め続けた。 結果、英ポンド先物には取引妙味が生じ、相場は動きを速める展開になった。 直近では、ロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)が、その本体をスコットランドに据え置く方針であることを発表し、英ポンド先物の更なる上昇に拍車をかける要因ともなっている。

また、住民投票実施の当日には、第3週と第4週を中心に、英ポンドの週間オプションが、英ポンド・オプション全体の28%を占めた。

Scottish vote and pound graph

特に第3週の週間オプションは、住民投票の翌日が権利失効の日となっていたことなどから、週間オプションの相場には上昇が見られた。 また、投資資金に対するリターンが大きいことから、短期オプションに対する取引参加者の興味も高まった。 オプションの対象となっている先物市場で大きな動きが予想される場合、週間オプションは比較的安価なプレミアムで購入可能な取引ツールの1つとなっている。

市場の流動性と指値の厚みを兼ね備えた週間オプションは、相場状況がけん引する形で、さらなる取引の活発化が見られている。



コモディティ投資の復活

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2014年9月11日 || DEBBIE CARLSON

ここ数年、投資家の間には、コモディティ(商品)をポートフォリオに組み入れることに冷ややかな声があった。近年の投資環境では、もはやポートフォリオの分散化やインフレ対策として天然資源を保有することに意味がないというのだ。しかし、コモディティ投資の専門家からは、違う声が聞かれる。投資環境が変わっており、今こそこの市場について再考すべきであると。

※どの資産市場でも同様ですが、資産運用マネジャーがコモディティ市場への投資を再開する場合、さまざまなリスクの取り方があるため、事前に顧客の要望を確認しておく必要があるとの専門家の指摘があります。

かつてコモディティは、株式や債券と相関性がないとして、ポートフォリオの分散化に役立つと考えられていた。 しかし、世界的な金融危機以降、運用の流れが「リスクオン」「リスクオフ」になると、多くの市場が相関性を持つようになった。 S&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズ社のコモディティ部門グローバル本部長、ジョディ・ガンズバーグ氏が解説する。「コモディティと株式の相関性は、90日間隔で見ていくと、平時ではゼロ近辺です。ところが、異常時には0.7ぐらいの高い水準に跳ね上がることがあります」

ただし氏によると、コモディティと株式が高い相関性を示すのは、歴史的にまれだという。1970年以降、同時に値を下げたのは、1981年、2001年、2008年、そして2011年の4回のみだ。

PIMCO社の副社長兼リアルリターン商品マネジャー、ボブ・グリア氏が指摘する。「24カ月間隔で見れば、1973年以降、コモディティと株式の相関性が0.6に達したのは一度しかありません。しかもその後、相関性は低下したどころか、マイナスに転じているのです」

そして、それこそがコモディティ市場の現状なのだ。

「(相関性が平時に戻ると)株式と債券だけで構成されたポートフォリオに比べて、コモディティを含めたポートフォリオは、より分散されているため、より優れたリスク調整後リターンを実現する可能性があります」(グリア氏)

ガンズバーグ氏とグリア氏が口をそろえる。「コモディティが独自の需給に基づくファンダメンタルズで取引されるようになると、株式との相関性が低くなるのです」

「在庫が減ると、干ばつ、パイプラインの破裂、地政学的緊張といった、供給サイドからのショックが大きな意味を持ちます。 それが各コモディティで異なるリターン動向をもたらし、また株式のリターンとの違いを生むわけです」(ガンズバーグ氏)

プラスのロールイールド
グリア氏はさらに「ロールイールドが現在プラスになっている」と指摘する。 プラスのロールイールドとは、投資家が先物限月の逆ザヤを利用して、先物の建玉を割高な期近から割安な期先に乗り換える(ロールオーバーする)と利益が出る状況だ。

「コモディティを保有して、お金を受け取れるとは、実に素晴らしいことです」(グリア氏)

ガンズバーグ氏が解説する。「2013年は10年ぶりに、コモディティにプラスのロールイールドが現れました。ところが、投資家の多くは2005年のブームに乗ってコモディティ市場に参入したため、逆ザヤという概念に馴染みがないのです」。 そして、コモディティ指数でプラスのロールイールドが今年も続いているのだ。

「コモディティ指数の先物を当限で建玉している投資家にとっては、(逆ザヤで)景色が一変しているといえます」(ガンズバーグ氏)

プラスのロールイールドは、しばらく続く可能性がある。

参考記事:Bob Greer「今、コモディティ市場がより魅力的に」- 英文

プレミア・リスク・コンサルタンシー社の代表であり、EDHECリスク・インスティテュートの研究員でもあるヒラリー・ティル氏は、原油先物の限月サヤ曲線の形状が1980年代から2000年代にかけてよく見られたものに戻りつつあるといった内容の研究論文を執筆している。 研究対象に原油先物が用いられているのは、いくつかのコモディティ指数で原油が大きな比重を占めているからだ。

ティル氏は、ゴールドマン・サックスの研究を引用し、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI先物が、1983年3月から2003年2月までの間に62%で逆ザヤがあり、月平均で0.78%のロールイールドを生み出したと指摘する。 ところが2004年に、ある変化が起きた。中国からの需要が劇的に増加したのだ。これによってOPEC(石油輸出国機構)ですぐに受渡ができる予備容量が、一時的に激減したという。

しかしその後、米国でシェールオイルの生産が増えた。これで世界の原油事情は、さらに変化したわけだ。 ティル氏は「米国産原油の増加でOPECの予備容量に対する圧力が和らぐほど、OPECから必要とされる原油は減少するだろう」と記している。

コモディティを用いて適切に分散する
ここ数年、インフレが問題になることはなかった。だが、将来的には懸念されるかもしれない。 グリア氏によると、PIMCO社では2014年にインフレ率が若干上昇すると予測しており、中央銀行の超金融緩和政策から、長期的にはインフレの懸念があるという。 そしてインフレ率が予想外に上昇した場合「コモディティがその衝撃を直接的に吸収してくれるだろう」と語る。

またグリア氏は、コモディティが再びファンダメンタルズに基づいて取引されるようになったことで、アクティブ運用の投資家に、より多くの機会があると指摘する。

「しっかりとアルファ(訳注:市場平均を上回るリターン)を作り出せる機会が増えています。コモディティ価格がファンダメンタルズ要因で動くようになったからです」(同氏)

参考記事:「コモディティ指数の新たな役割」- 英文

経験豊富なコモディティ投資家は、戦略的かつ戦術的な建玉ができる。 ガンズバーグ氏は、より積極的なスタンスの投資家でも、例えばスプレッド取引でコモディティ指数を利用できると説く。これはWTI原油とブレント原油のスプレッドや、限月間スプレッド、類似した市場分野の商品間スプレッドぐらい単純であるという。

「実はこれがインデックス運用の世界で人気があるのです。 インデックス運用が登場してから、だいぶ経ちます。今では投資家は、個別のコモディティや単独の戦略を用いて独自のアルファを作り出すほうが楽に感じるようになってきました」(ガンズバーグ氏)

ティル氏は、コモディティのリターンに関する歴史的分析から、コモディティへの分散投資を検討している投資家に向けて、いくつか注意点を挙げている。 「ポートフォリオを分散化させたい投資家や、石油ショックに備えておきたい投資家は、石油市場への比重をしっかりとかけておく必要があります。また、過去の成績は将来の結果を保証するものではありません」

さらにティル氏は、一貫したリターンを目指すなら期間構造に目を向けてほしいと忠告する。 「長期的に見ると、プラスのロールイールドを持つコモディティは、構造的に逆ザヤです。 また、現物価格の平均回帰という特性から生じる効果をポートフォリオにしっかりと反映するには、定期的に適切なリバランスをしておく必要があります」



ミラークアーズ:アルミの価格リスクに対応

HOW MILLERCOORS ADDRESSES ALUMINUM PRICE RISK

2014年9月9日 || EVAN PETERSON

アルミニウムは最近、携帯電話から自動車など、多岐にわたる産業にもてはやされている素材であり、ミラークアーズ社にとっては50年以上、欠くことの出来ない素材でもある。 実際、ビールの醸造会社が今も使用しているシームレスアルミ缶を、最初に導入したのは同社である。

ミラークアーズ社は現在、世界最大のアルミ消費者であり、同社にとっては、アルミが唯一で最大の商品価格リスクとなっている。 ミラークアーズ社のグローバル商品リスク・マネージャーのティム・ウェイナーは、「だからこそ昔から、先物取引を使って、3年までの先の価格リスクをヘッジしている」と、ビデオの中で説明している。

ところが最近、ロンドン金属取引所(LME)の指定倉庫に保有されたアルミの北米プレミアムが高騰して北米プレミアムの急騰を受けて最近、リスク管理さらに困難に、昔からのリスクヘッジが難しくなっている。 ウェイナー氏は、これが同社にとって重要な意味を持っており、同社がCMEグループが提供する新しいアルミニウム取引の最大級のユーザーになると予想する理由を、以下のように説明している:

「特に最近では、市場の機能不全が、アルミに関するリスク管理上の最大の課題となっている。 市場が適切に機能を果たし、先物価格が現物価格に収束するなら、価格リスクの管理はかなり容易になる。その意味で、我社がCMEの北米アルミニウム取引で最大級のユーザーになる可能性は、かなり高い」





金融セクターを進化させる新たなテクノロジー

THE EMERGING TECH THAT’S ADVANCING THE FINANCIAL SECTOR

2014年9月5日 || OPENMARKETS

金融セクターでは、高性能なコンピューティングがその浸透度を高めていて、例えば、マーケティングや長期的な投資戦略など、これまで人の手を介すのが前堤となっていた様々なビジネス分野で、その機能が再定義されている。

TABBのシニア・アナリスト、E. ポール・ロワディJr氏は、こうした機能変化は、ここ数年、新しいコンピューティングやネットワークツールが及ぼす影響を、主にトレーディングのさらなる迅速化という領域に限定して取り入れてきた金融セクターにとっての変化でもある、と考えている。

金融セクターは、 広範囲に渡る高性能コンピューティングへの移行が始まっている HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)の広範囲な導入を目前にしている 。多くの業種に多大な成長をもたらしたHPCは、中でも、その技術を必要とし、自らそれを開発したリテール向けオンライン企業に大きな成長をもたらした。 一方で、ロワディ氏は金融界のHPC導入実績について、「まだ初期段階だ」とした上で、 「どれ1つ、本格的になっているものは無い」と現状を指摘し、「この話題が一層の注目を集める様になったのは、ここ半年に過ぎない」と説明する。

HPCは、処理速度とデータ処理での分析の複雑さが評価対象となるので、同氏は 「この2つの軸で表される世界に、金融セクターのHPCがある」と話す。 HPCは、マルチプロセッサコア、マルチサーバー、機器のマルチクラスタで構成される並列構造で、指示の基本単位であるスレッドを、マルチ(複合的)かつコンカレント(一括)に実行するシステムである。 ロワディ氏は、「並列構造が層を成している」と説明する。

かつて、コンピューティングの導入期には、性能の進化周波数の高いプロセッサで評価された。 これがプロセッサの性能を限界にまで高める圧力となり、イノベーションに向けたその後の進展が、既存の機器を連係汎用機器を層化するという新しいアプローチを採用させることになった。 ハードウェアでは、別の記憶ユニットの代わりに、直接本体に情報を記憶させることでデータベースの高速化が図られ、これが記憶装置内蔵型として知られる概念となった。 その後、従来のディスクドライブは、スマートフォンやタブレットなどを作動するソリッドステートメモリへと、次第に入れ替わっている。

こうしたテクノロジーの多くは、超大規模コミュニティの運営手段を必要とするGoogleやヤフー、フェイスブックといった企業によって開発され、コンピューティング能力を高める一方、コストや動力消費、所要スペースの縮小を可能にした。 また、こうした需要を背景に、低コストの機器クラスタで膨大な量のデータを記憶し、処理する ことを目的として、 オープン ソース ソフトウェアのハデュープ(Hadoop)の開発も進んだ。

インターネット企業を始めとする多くの企業では、ここ10年近くに渡りHadoopが利用されている一方、ロワディ氏は、「金融では大手銀行の一部が試し始めたばかり」とした上で、

こうしたテクノロジーの広範な導入が金融業界で全体的に拡大するときがやってきた、と予想している。

リスクとプレトレード(取引実行前)分析
一晩は必要だったプレトレード(取引実行前)分析は現在、通常勤務時間内に行うことが可能で、リアルタイムで実行することも可能だ。 こうした分析では、参照価格が簡単に手に入らない様な、複雑な有価証券などに関する価格算出が課題となる。 実際には三角法を用いることで、他市場のプロダクトの市場価格を基に、こうした価格は算出される。 ただ、算出に伴う作業はこれまで、日中の業務終了後に開始され、夜を通して行われていた。

長期的戦略
保有期間が長期に及ぶ取引戦略の管理については、現在でも、主要な意思決定は人間が行っているが、人工知能や自動化の精巧さが増していることなどから、将来的には、コンピュータがより大きな役割をこうした分野で果すようになるだろう。

対顧客行動およびプロジェクトマネジメント
ビジネス上の課題を解決する上で、データはこれまで以上に活用される様になり、対顧トレーダーやブローカーが、特定の顧客に割くべきリソースについて、電話、面談、自動化した通信手段など、どれが最良かを判断する上での助けとなるだろう。

コンプライアンス(法令順守)
一体化したコミュニケーションツールには、電話、電子メール、チャット、ソーシャル・ネットワークなどがある。 また、ビデオもこれに含まれる。 全てのコミュニケーションを監視していることを当局に示す必要がある金融機関は、行動様式を認識する高性能コンピューティングのプラットフォームを利用するだろう。 こうした監視ツールの利用は現状、多くが自衛手段としての範囲に限られている。ただ、ロワディ氏は、膨大な顧客データの分析によって、売り上げを拡大させる機会も広がる、と指摘する。 もちろん、プライバシーや透明性の必要性に配慮した、適切なガバナンス基準が不可欠であることも、氏は指摘している。

さらに、テクノロジーは企業間競争で、自社を優位にするものではあるが、決してその恩恵を保証するものではない。 ロワディ氏は、「マネジメントの観点を変える必要がある。 こうしたツールを適切に利用できる独創性のある人材が必要なのであって、テクノロジーが独創性をもたらす訳ではない」とした上で、「テクノロジーだけで競争上の優位性を得られる訳ではなく、テクノロジーは優位性を得るチャンスを提供するに過ぎない」と警告している。

氏は、ここでの成功は4つの要素(インフラ、ソフトウェア、処理能力、データと人的な資産)に依存するとして、
「この4つの要因の全てを、利用事例に応じて最適化させる必要がある。 例えば、スピードが最重要となる事例もあるだろうが、成功するには、この4つの要因を全て最適化しなければならない。 ただ、最終的に重要なのは人材だ」と結論付ける。 ロワディ氏は重ねて、「適した人材があれば、ハードウェアやソフトウェアを調節してデータを利用することが出来、ここから得られる結果は、競争上の優位性が高いものになる。 一方で、誰もが適材に恵まれる訳ではない」とも指摘している。

企業は、高品質のエンジニアリングスキルを持つ人材や、より多くのデータ分析家、データ管理者を取り込む必要がある。 中には、プロセスエンジニアやユーザーエクスペリエンスのデザインスキルを持つ人材を必要とする企業もあるだろう。 実際、エンジニアとしてのスキルがない人々がデータを理解し、扱うためには、データの提示や可視化がカギとなる。

コスト低減が期待できるクラウドを用いた高性能コンピューティングもあり、その利用が拡大するだろう。利用環境は平準化され、新設の企業であっても、金融市場にイノベーションを容易に導入できるようになる。 また、企業はテクノロジーや才能を資産とするのではなく、インターネットを通して単にリースすることも出来るのであり、必要なサービスに対してのみ対価を支払い、リアルタイムで自らの事業規模を拡大・縮小するなど、調整することが可能になる。

ただ、こうした変化が一夜で起きるわけでない、とロワディ氏は言う。 企業構造や文化、業務のプロセスは緩慢に進化するものなので、「全体としては、少しずつ変化していく。ただ、こうした変化の過程には、能力を急伸させるものもあり、イノベーションを急展開させるものもある」と指摘する同氏は、

時間の経過につれて、こうした出来事が及ぼす影響は深淵なものとなると考えていて、「HPCで、独創性のレベルは無限に広がる。 しばらくの間は緩慢に見えるかもしれないが、イノベーションの速度はやがて、加速度的になる」と予想している。



アルミニウム:アルミ市場の明るい兆候

ALUMINUM WHY THE MARKET FOR TOMORROW’S METAL IS LOOKING BRIGHTER

2014年9月3日 || RUSSELL BLINCH

アルミは、汎用な金属である。 ビルの外観美化、自動車の車体軽量化、そしてコメディアンのジョン・オリバーが言う通り、アルミは手の平でビールをすすらないで済むようにしてくれる。 一方、北米市場でアルミ価格のプレミアムが急騰したことにより、ここ数ヶ月、価格ヘッジがほとんど不可能な状況となった。実際には、繰り返し起こるこうした悪夢がなければ、消費者と生産者の双方にとって、アルミ市場は最良の状況となるはずだったのである。

「リスクに関して何が変わったのかといえば、プレミアムをどう管理するかだ」とするUCルーサル社のセールス・マーケティング担当ディレクター、スティーブ・ホッジス氏は、

「プレミアムは総額の20%から22%に達し、ヘッジ不能の水準だ」と説明する。

しかし、堅調な需要、予想以上のスピードで在庫整理が進んでいること、そしてシカゴで新たな取引が開始されていることなど、国際的な要因が結集してきていることで、ビール缶の底に、希望の光が差し込み始めている。

最初に、ファンダメンタルズ要因から、考えていこう。 先ず、アルミ需要は急増している。 アルミ価格は17ヶ月来の高値を付けているし、ゴールドマン・サックスによると、今年は5年ぶりに供給不足となる見込みでもある。

需要増は、中国がその主な背景ではあるが、アルミ人気が世界的なものであるのも間違いない。携帯電話の外見改善、輝きの増した屋根、より大規模なものでは、温室ガスの排出をさらに削減する自動車の開発などでも、アルミは盛んに使われている。

こうした需要増に対応して、北米におけるアルミの一次生産高は、2009年から2012年の間に16%増加した。 さらに、同時期には、北米の消費向け輸入も22%増加している。

フォードからジャガーへ

自動車業界は当初、フォードが同社の2015年モデルの F-150トラックにアルミを用いたことに騒然としたが、現在、この動きは、業界の世界的なトレンドの1つとなっている。 例えば、ジャガーのランドローバーは、同社のXEセダンで、また、ボーネル・アルミニウム社のアルミ・輸送、調達担当ディレクター、アンディー・マッセイ氏は、アルミを将来有望な建築資材であると見ているが、「つい2、3年前まで、それは空想に過ぎなかった」としている。

さらに、CMEのニュースサイト、OpenMarketsで氏は最近、「よりおしゃれでカラフル、派手な外観のビルが求められており、そうした理由からアルミの需要は増加し続けている」と説明している。

Aluminium graph

生産者にとっては需要と価格が大幅に上昇していることが、また消費者にとっては、効率的な市場で手軽にリスク管理が可能となっていることが、アルミに関しては相互利益となるハズだった。 しかし、かつては堅固で信頼が置けるとされた北米プレミアムについては、大きな問題が発生しているとの指摘が広く聞かれる状況となっている。

公表された報告書によると、市場利用者の一部では、ロンドン金属取引所(LME)の指定倉庫における金属商品の保管状況と、こうした商品を必要とする消費者への出荷に遅延が発生していることに大きな原因があるとされている。 ウォール街の大手への批判が強まっている。また、 批判の多くは、ウォール街の大手金融機関が商品の保管事業に絡んだ投機で、過大な利益を得ていることに集中している。

シカゴに本社を置くミラー・クアーズのグローバルリスク担当マネージャーであるティム・ワイナーは、アルミニウムの世界最大消費会社の1つとして、アルミニウムは同社最大のリスクとなりつつあると言う。

「今日、先物を手当てするのは、来年、その次の年、今後2年から3年先にわたるリスクを軽減し、CFO(最高財務責任者)にコストに関する確実性を多少でも提供するためだ」とした上で、同氏は、

「基礎となるLME先物取引とその時点での北米プレミアムが乖離しているため、価格リスクの管理は極めて難しくなりつつある」と説明する。

ボンネル社のマッセイ氏は、7月に付けた1ポンドあたり20セント前後ではなく、北米プレミアムは8セント程度が適当である、と指摘した上で、

「消費者は現状、適正価格よりも1ポンドあたり12セントも多く支払っていることになる。そのため市場には決定的な不均衡が生じている」と主張する。

ただ、過度な北米プレミアムについては、そのピークは過ぎた、とする指摘も多くなっている。 ブルームバーグによると、プレミアムは1月に20.875セントと最大値を付けている。一方で、例えば、バージニア州リッチモンドに本社を置くローレンス・キャピタル社のティム・ハインズ社長は、年内に14セントまで下落すると予想していて、

「(プレミアムの縮小を背景に)商品在庫に対する資金提供意欲は若干、後退していくだろう」と、アルミ市場での40年の経験を背景に、ブルームバーグの取材に答えている。 さらに同氏は、「アルミは倉庫から出てくるようになり、これがプレミアムを縮小させる要因にもなる」としている。

新商品は救世主となるか

市場関係者からの聞き取りと話し合いを経て上場された、北米初の現物渡しアルミニウム先物取引についてCMEグループは、取引執行会社のマクワリー・バンク・リミテッドにより5月6日、最初の取引実績が記録されたことを発表した。

市場関係者からの聞き取りと話し合いを経て上場された、北米初の現物渡しアルミニウム先物取引についてCMEグループは、取引執行会社のマクワリー・バンク・リミテッドにより5月6日、最初の取引実績が記録されたことを発表した。

CMEグループのFX、金属、オプション・ソリューション担当の上級マネージングディレクター、デレク・サンマンは、「CMEグループは、当取引所の新しい北米現物アルミニウム先物取引が、当初から幅広い支持を得ていることを喜ばしく思う」とした上で

「アルミニウムの主要生産者、消費者、そして商業トレーダーと協力することで、この先物は市場参加者にとって、価格リスクの管理についてより質の高いツールであると共に、北米のアルミ業界にとってはプレミアム指標として機能するもと信じている」と、その抱負を語っている。

クアーズ社のウェイナー氏も、 「当社が、CME北米アルミニウム取引の最大ユーザーの1社となる可能性は極めて高い」と、この先物に対する期待の高さを語っている。

また、UCルーサル社のホジソン氏は、このCMEでの取引における2つの重要な「違い」を指摘する。 CMEの取引は「対象地域が特定されている」ため、当該地域のアルミ消費者にとって有益であり、さらに、LME以外の新たな取引プラットフォームでもある。

氏は、「CMEの新先物はアルミ消費者に、もう1つの取引プラットフォームという選択肢を提供している」ことを強調している。



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