中国の食品会社買収意欲とその先にあるもの

WHAT CHINA’S APPETITE FOR FOOD COMPANIES MEANS FOR FUTURES

2014年8月29日 || NELSON LOW

中国の旺盛な食欲はほぼ必ず、一連の商品価格が決定される際に勘案される要因となる。そして今、そこには新しい流れが起きている。中国が国際市場で手当てしているのは豚肉や大豆だけではなく、食品や農業製品の企業にまで及んでいるのである。

重要なのは、こうした海外企業の買収に伴うリスクを管理するため、中国の旺盛な購買意欲は単に農産物市場全般だけでなく、国際デリバティブ市場にも影響を及ぼしてくることが予想されることである。

北京から遠く離れたカリマンタンの大農園やベルギーの製粉会社など、新たに買収した海外事業を抱え、循環性の強い商品相場のリスクを管理するため、中国企業はデリバティブを活用する上で必要となるノウハウや専門知識の多くを取得しているのである。さらに、買収を経た中国企業の事業規模は、格段に拡大している。買収を経て新しく誕生した企業は、桁違いのバランスシートを持ち、その購買力は国際商品市場や関連先物市場でも意識されるべき存在となっている。 実際、こうした市場での中国企業の取引量は、今後も拡大するとみられている。

そして、こうした中国企業の重要な転換は、中国での人民元国際化、資本取引自由化などの取り組みと同時並行で起きている、ということもある。 中国企業による外国企業の買収を背景に、決済通貨としての人民元に対する認知度も促進される関係になっているのである。

ただ、中国で新たに芽生えた海外の食品会社買収に対する関心の高まりは、食料安全保障がその主要な背景となっている。 単に商品在庫を積み上げるのではなく、当局は業界内での再編を通じて、より広範に業界の効率化を実現する必要があると考えている。

さらに、こうした傾向が今後も続くと考えられる理由も、いくつか存在する。

第1に、それが国家の支援を背景とした政策であると考えられることである。 例えば、中国投資有限責任公司(CIC)(CIC:中国のソブリン・ファンド)の会長兼最高経営責任者の丁学東氏は、「(CICは)世界中の農業、そしてバリューチェーン全体への投資拡大を考えている」と、最近ファイナンシャル・タイムズ紙の論説の中で述べている。

これには、経済政策の優先順位を、投資から消費へ移行させようとしている政府の意向が、中国の食料購入意欲に変化をもたらしているという背景もある。 さらに、家計所得の増加に伴って、高タンパク、高品質な農産物への需要が中国で高まりをみせている、ということもある。

こうした中、13億の人口を抱え、その食糧供給を継続的に維持することが大きな課題となっている。海外企業買収はこの課題に対応しようとするものであり、効率改善とベストプラクティスを導入することで、中国の食品業界の質的向上に寄与しようとするものなのである。 また、業界改革の必要性が緊急的に高まっているのは、この食品安全性の危機テキストで裏付けられている様に、最近、中国国内の食品サプライチェーンに対する信頼が著しく低下したことにも起因している。 耕地面積が限られている中国は、同様に広大な国土を有する一方で、その人口が中国の4分の1に過ぎない米国などに比べて、不利な条件下にある。

双匯国際控股有限公司(現在は万洲国際(WHグループ))が米国の養豚会社、スミスフィールド・フーズを昨年、71億ドルで取得した買収劇は、食品分野における中国のこうした新たな意図を際立たせることになった画期的な出来事だった。 さらに、中国のバイヤーは、英国の食品会社、ウィータビックス、そしてレストラン・チェーン、ピザ・エクスプレスの過半数株式取得にも飛びついた。

食肉消費全体の4分の3を占める豚肉は、中国人の食事に欠かせない。その意味でも、スミスフィールドの買収は重要性が高い。 したがって、中国当局にとって、豚肉業界において効率的なリスク管理を実現することは、政策運営上の重要性も高いことになる。

一方、中国の食肉会社はこれまで、主として国内生産を重視していたことから、デリバティブをリスク管理の手段として使うことは稀だった。 ただ、スミスフィールドの買収を経て、状況は一変したのである。WHグループは現在、国際的なリスク管理を徹底させざるを得ない状況に身を置いている。

こうしたリスクは今年、米国で豚流行性下痢ウイルスが発生したことにより、市場で価格変動率が高まり、相場が高騰するなど、表面化している。牛肉相場でも(幸い、ウィルスが要因ではないが)価格変動率が上昇し、同様の相場トレンドが指摘されている。 米国では2013年、飼育牛頭数が記録的な低水準となったのである。

中国企業による新たな動きが見られるもう一つの分野は農産物市場で、中国糧油控股有限公司(COFCO (中国糧油控股有限公司))による買収攻勢が指摘されている。 既に今年は、ノーブル・グループの砂糖、大豆および小麦事業の株式、51%を15億ドルで取得している。この買収は、オランダの商社、ニデラの株式を同様に取得したのに続いて行われたものである。

こうした企業買収は、食料安全保障政策に関して、これまで主に国内生産の支援、または農産物の在庫積み増しに重点を置いてきた中国の姿勢とは、全く異なるものとなっている。

前述の様に、こうした買収劇を経た新会社は、複数の大陸を網羅するサプライチェーンの統合を通じて、グローバルなリスク管理手法や潜在的効率性の活用に関する相当なノウハウをCOFCOにもたらすことになると予想される。したがって、リスク管理を目的としたデリバティブ取引の活用について、中国企業がこれを習熟するプロセスは加速的となる可能性が高い。

また、中国が業界統合の取り組みを加速し、効率向上を目指した措置を講じている産業には、乳業もある。この分野では、中国は既に世界最大の乳製品輸入国であり、ここ数年で、その旺盛な需要が世界市場の価格押し上げ要因として指摘されている。

また、中国での海外の乳業メーカーに対する買収意欲の背景には、2008年のメラミン混入粉ミルク事件がある。 この事件を引き起こした乳業メーカーの三鹿集団は、中国で現在進行中の乳業業界統合の流れを引き起こす契機となったのである。

今日、国内最大の乳業メーカーである中国蒙牛乳業はCOFCOを最大株主とし、中国で進行中の業界統合の取り組みの中心的的企業となっている。 昨年、中国蒙牛乳業は、原料乳の生産量で国内最大の中国現代牧業に対する出資比率を28%に引き上げている。

中国政府は、粉ミルク・メーカーについて業界の統合を進めた上で、大手の10グループ程度にまで再編し、各グループの年商を20億人民元(3億2,300万ドル)以上とする・計画を公表した。先々においては、その水準を年商50億人民元以上とし、3~5社に集約する計画である。

大量のミルクを扱う大規模な事業展開をもった巨大企業を形成するということは、相場変動に対するリスクも巨大化するということになる。そして、こうした中国の大規模乳製品メーカーは、価格リスクをヘッジするため、CMEグループやニュージーランド証券取引所など、乳製品先物を上場する国内外の先物取引所に関心を向けざるを得なくなる。

もちろん、デリバティブを上手に、効果的に活用してリスクを管理する様になるには、経験を要する。 デリバティブの利用について未熟な場合、これまで、投機的ポジションで”遊ぶ”という傾向がよく観察された。 こうした場合に取引損失をこうむると、「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」という認識につながる場合も多かったと考えられる。

とはいえ、とりわけグローバル市場で事業を展開するにあたり、リスクを低下させる意図でリスク管理ツールの使用を抑える場合、これは同様に危うい落とし穴となる。

例えば、2004年~2005年に起きた中国の大豆危機では、国内生産者の多くが価格変動の高まりに対する準備ができていなかった。 結末として、その多くが多国籍企業に身売りせざるを得なかった。

つまるところ、この教訓が示しているのは、相場変動が激しく、相関性が高いグローバルな商品市場に発生するリスクを管理するため、農業製品や食品などの企業は、デリバティブを効果的に活用する方法を習得する必要がある、ということである。そうすることで、効率性、収益性が改善し、企業としての長い寿命が保証されることになる。




農産物市場におけるモバイル端末の利用拡大

INFOGRAPHIC THE GROWTH OF MOBILE IN AG MARKETS main

2014年8月21日|| EVAN PETERSON

農産物市場の相場データでは、モバイル端末を介してのアクセスが増加している。 当然、と言えば当然かもしれない。 米国の農業従事者の半分以上は、スマートフォンを所有しているのである。

さらに、モバイル端末用のデータアクセス・アプリが広く提供される様になったのに並行して、穀物相場では過去2年間、大きな動きも発生していた。 ただ、こうした事実を認識した上でも、モバイル端末を通じてのアクセス拡大には驚かざるを得ない。 CMEグループのウェブサイト上に掲載されている穀物・家畜などの相場情報に対する携帯電話やタブレット端末を介してのアクセス数は、2011年から2013年の間に210%増となり、こうしたモバイル端末によるユニークビジター数は2013年、およそ85万件に達している。 CMEグループのウェブ・アナリティクス・チームは、各商品ページのビジター数を算出し、参照された商品の特性やアクセスのオリジネーションなどについて データマイニングを行った。

断っておくが、ここでの分析はモバイル端末に限定しており、ラップトップPCやデスクトップPCなどからのアクセスを除外している。したがって、ここでの結果は、通勤電車や自動車、ソファーの上や畑など、ビジターが移動しながら、最も頻繁にどのデータを、どこ(州や町)からチェックしてるのかを表したものとなっている。 拡大するには下の画像をクリック(テキストは英語のみ)

中心: 最もチェックされている商品(トウモロコシ)と最もアクセスが多い州(イリノイ州)は、予想通りかもしれない。 とはいえ、少し詳しく見ていくと、予想外の結果も指摘されている。 例えば、シカゴやニューヨークを除けば、ビジターが一番多いのはミネアポリス周辺!! あるいは、穀物と家畜のデータチェックでは、サンフランシスコからのアクセスが比較的大きな集中を見せている!!

地域の関心: データアクセスのオリジネーションの集中度を示した地図を見ると、それぞれの農産物の特性の一部が浮上してくる。 アイオワ州、ネブラスカ州、ミネソタ州、インディアナ州などからのビジターの多くは、トウモロコシのデータページを訪れていることが示唆されている。同様に、テキサス州やオクラハマ州などからのビジターの多くは、生体牛の相場をチェックする可能性が比較的高い。 ノースカロライナ州は全米最多の養豚業者数が集中する州の一つであり、シャーロット地域近辺からは、赤身豚肉の相場データをウォッチしている業種のアクセスが示唆されている。

この分析結果で、読者の皆さんにとって最も意外だったのは、どれだろうか?

INFOGRAPHIC THE GROWTH OF MOBILE IN AG MARKETS




農業への若者の取り込み策

HOW TO GET MORE YOUTH INVOLVED IN AGRICULTURE

2014年8月12日 || EVAN PETERSON

ステート・フェア(米国の州毎に開催される農産物の品評会)のシーズンとなり、初めての人も含めて、多種多様の経歴や生い立ちを持つ人々が、今後数週間に農業と真近に接する機会を得ることになる。こうしたフェアは単に家畜を展示するだけのイベントではなく、若者にとっては農業に関する教育的な経験を得る機会でもある。 実際、2050年までには世界の食料需要が倍増すると予想されるなか、 米国の農業はこのニーズを満たすための進化を遂げようとしているのである。

最近のスプリングフィールド(イリノイ州)ステート・ジャーナル・レジスターで、CMEグループのテリー・ダフィー経営執行役会長兼社長は、世界が直面する主要な課題の1つであるこの問題に立ち向かう若者は、それを好機とすることが出来ると強調した。そして、急増する世界の食料需要を満たすため、農業従事者により多くの若者の参入が必要であることを説明して:

『この課題を巡る議論の多くは、効率と生産性の向上を実現するための農法など、「いかにして」に関することであり、「誰が」に関する視点が欠けている』

『農場や牧場の仕事に従事する人たちの平均年齢は現在、55.9歳に達している。より多くの新しく優秀な人材を取り入れ、農業従事者層を若返らせることが喫緊の課題なのである。一方、帰農する若者は、より進化したツールやリソースを使いこなすために専門的なスキルや明敏なビジネス感覚が求められ、先代たちに比べて高いリスクに直面することを余儀なくされる。』

さらに、米国の食品会社は、世界各地への製品輸送に関するロジスティック、安全性、イノベーションに後れをとらないように取り組んでいる。したがって、そうしたスキルを持つ人材への需要が高い。 来年には、 米国の農業従事者全体の46%が博士号、そして27%が修士号を取得している人たちで占められると予想されている。

また、ダフィー経営執行役会長兼社長の指摘にあるように、農場や牧畜に従事する人たちのグループは高齢化が指摘されるセグメントに属している。 米国農務省(USDA)が発表した2012年農業センサス(下のチャート)は、長年にわたる若年世代の農業への参入減少が、このセグメントの労働人口に及ぼした影響を明白になっている。 一方、高齢化という視点を超越して考えれば、このチャートは、労働人口の中で大きな世代交代が発生するタイミングが近いことを表している、ともいえる。

YOUTH graph

アイオワ州のフェアで、ダフィー経営執行役会長兼社長はFox Businessからこの件に関するインタビューを受けた(映像省略)。農業が直面する将来の課題への取り組みに焦点を当てた業界リーダーの団体であるCMEグループの農業市場諮問委員会(Agricultural Markets Advisory Council)との会合のため、同氏はこのフェアを訪れていた。同氏はまた、このフェアに参加していたコモディティ・カーニバルにも立ち寄った。このカーニバルは、4Hクラブ(農業青年クラブ)を通じてCMEグループがデザインした農業に関する教育を目的とした展示ブースである。

ダフィー経営執行役会長兼社長が強調したように、米国農業に関する将来的な課題は、画期的でインパクトがある何かをしたいというミレニアム世代独特の野心に呼応するものであり、フェアなどのイベントは、米国農業の課題解消のためにこの世代の若者が果たす役割の重要性を明示する機会なのである。

こうしたフェアの出展者には、有意義なインパクトを社会に与えたいと考えている若い世代に対して、エキサイティングで報いのある農業というプロフェッションを判り易く伝える、という挑戦を真正面から受け止めてほしい。難題に聞こえるかもしれないが、その価値は十分にある。これは、 世界の未来を賭した挑戦なのである。





S&P500種株価指数を支える能動的な委員会の存在

INSIDE THE SP 500 AN ACTIVE COMMITTEE

2014年8月8日 || DAVID BLITZER

S&P 500種株価指数の維持管理は、市場専門家で構成される指数委員会が行っている。この委員会はまた、銘柄選択のガイドラインを含めて、この指数に関する変更手順の詳細な方法論を公表している。一方で、S&Pダウジョーンズ・インデックスが管理しているその他の指数や、その他の指数提供業者が管理している大方の指数とは異なり、S&P500種株価指数 には厳密で絶対的な規則は存在しない。このことは、指数の採用銘柄に関する取捨選択や市場イベントへの対応について、指数委員会がある程度の裁量権を有している、ということでもある。

そういう意味では、多くの指数が各々の規則集に副って維持管理されている一方で、S&P500種株価指数にはどうして委員会が存在するのか、と指摘されることが多い。例えば、ラリー・スウェドローはETF.COMに掲載した記事で、「指数委員会の存在は、S&P500種株価指数が積極運用されていることを意味する」という、既に議論され尽くされた感があるポイントを取り上げている。

ただ、同氏はこの記事で、S&P500種株価指数は指数として「問題ない」と結論付けている。また、資産運用会社のレッグ・メイソンで、かつて著名ポートフォリオ・マネージャーとして活躍したビリー・ミラーも、同様の指摘をしている。実際、市場パフォーマンスを上回る輝かしい記録を多く保持していた彼は、S&P500種株価指数について、これを上回る運用パフォーマンスを出すのが極めて難しかったという部分の実績も認めている。その上で同氏は、S&P500種株価指数については積極運用が成功を収めており、このことは指数委員会が優れたアクティブ運用のマネージャーである証左だ、とも指摘している。

S&P500種株価指数を維持管理する指数委員会の使命は、大型株のセグメントに注目し、この指数に米国経済を反映させることである。したがって委員会は、市場のリターンをアウトパフォームするような銘柄を探しているわけではない。 むしろ、規模、流動性、最低浮動株数、利益率、そして市場とのバランスといった銘柄選択のガイドラインを基に採用した銘柄群によって、この指数に米国株式市場の全体像を正確、確実に反映させようとしているのである。

正しい数値を毎日、公表することだけで指数が存続するのであれば、その維持管理に関する規則集だけで十分なのかもしれない。ただし、市場がそうした規則集に想定されていない展開になった場合などでは、いかに厳密であったとしても、規則集で指数を維持管理するのは無理だろう。 S&P500種株価指数の場合、委員会は定期的に会合を開き、指数や市場の動きを監視している。ガイドライン、または規則集に見直しが必要な場合、委員会のメンバーは課題を理解した上で、必要な変更を施す。さらに重要なのは、想定外の事態が発生した場合、委員会は素早く反応できるということである。もちろん、規則集に基づいた指数でも、その規則の書き換えは可能である(実際、書き換えられている)。しかし、規則を書き換えるのは誰なのだろうか。想定外の状況に対応する準備が整っていて、規則を書き換えられる立場の人がいるのだろうか。あるいは、こうした状況になって初めて、規則の変更や追加・削除を諮問するための委員会を立ち上げるのだろうか。

振り返ってみると、金融危機やリーマンが破たんした前後の数週間は、想定外だった。 リーマンブラザーズが自己破綻を申請した直後、米財務省が世界最大規模の保険会社の1つ、AIGに対して救済措置を講ずる、とのニュースが流れた。突如として、米財務省はAIGの発行株式の90%超を保有することになったのである。 一方で、S&P500種株価指数のガイドラインは、採用銘柄の浮動株数について最低でも50%と規定している。これに従えば、AIGは指数から除外されなければならない。しかし、金融危機を背景としている状況でAIGを指数から除外すれば、株式市場が暴落の度合を強めることにもなる。最終的に、市場環境と投資家不安を考慮し、委員会は50%の浮動株という規則に目をつぶった。AIGの採用除外を、実行しなかったのである。数年後、財務省は保有していたその株式を同社に売り戻し、AIGは50%の最低浮動株数規則に抵触しなくなった。

これほどドラマチックではないが、この他にもいくつか同様のケースがある。 例えばこの春、グーグルは株式分割を実行し、議決権のない株式を新規発行した。結果として、S&P500種株価指数に変化を生じさせた。そしてこの出来事は、市場を継続的に監視する委員会が不可欠であることを示す結果にもなった。 順を追うと先ず、S&Pダウジョーンズ・インデックスはグーグルの決定が発表された時点で、指数規則に基づくS&P500種株価指数の修正を発表している。ただ、 グーグルの動きについては多種多様な報道がされていたにも関わらず、主要な投資家やインデックス・ファンドは、実際のスケジュールが公表されるまで、S&P500種株価指数を継続してトラックするための調整として、どんな取引がどの程度必要となるかについて無関心だった。そんな中、一部のETF発行体が懸念を表明する。議論を再開した指数委員会は、主要投資家の多くから意見を募り、グーグル株分割の取り扱いや指数の管理規則に修正を行った。 これらは全て、委員会が問題を把握し、素早く対応したからこそ可能となったものである。結果的に、 規則に基づくその他の指数の一部については、S&P500種株価指数の指数委員会がここで採用した修正に準じる動きとなった。



新穀短期オプション: 農産物価格のイベント・ヘッジ

TODAYS NUMBER HEDGING AROUND AG NEWS

2014年8月8日 || STEVE STASYS

6月30日にUSDA(米国農務省)が発表した穀物在庫と作付面積に関する報告書では、トウモロコシの在庫が1億3,200万ブッシェル、また大豆の作付面積は、2013年比で11%増とされた。これは、事前の市場予想よりも相場を弱気にさせる内容で、生産者にとっては打撃的なイベントとなった。そして、トウモロコシと大豆の価格はこの後、大きく下落する結果にもなった。

7月11日に発表された世界農産物需給予測 (WASDE)も、大豆の期末在庫を過去最高水準とするなど、生産者を勇気付ける内容にはならなかった。そして現状の穀物相場では、トウモロコシと大豆を中心に、軟調な展開が続いている。 6月30日のUSDA報告書の発表を契機とする下落相場は既に、穀物価格でおよそ25%、大豆価格では11%に達している。

こうした相場環境を背景に、次のWASDE報告書が発表される8月12日が近づくにつれ、生産者はいくつかの難しい判断に直面している。例えば、「生産予想のさらなる上方修正を、相場は既に反映しているのか?」、「 新年度の穀物生産の予想が、さらに上方修正される可能性はあるのか?」である。もちろん、ヘッジ目的の市場参加者はUSDA報告書の内容や今年の全体的な天候見通しについて、ある程度の予測はしていた。 しかし、こうしたイベントが相場に及ぼす影響を調べるだけでは、十分とは言えないのも事実となっている。現代の農業従事者にとってより重要なのは、相場に影響するイベントにどう対処するのか、と言うことになってきている。

そして、最近のジョン・ロシアン・ニュースでDoug Ashburnが強調した様に、こうしたイベントに対処する主要な方法の1つに、新年度穀物の短期オプション(SDNCO)がある。 2012年の取引開始以来、SDNCOの累積売買高はおよそ240万枚に達しており、年初来で既に100万枚超となっている。さらに、最近の日中売買高平均が1万枚ペースとなっていることなどが示す様に、生産者やヘッジ取引の利用者は、このプロダクトが穀物の生育期間には特に有用であるとの認識を高めている。実際、収穫前の成長期、そして受粉期に相当する2013年の7月から9月には、50万枚のSDNCOが取引されている。

SDNCO graph

SDNCOは短期オプションのため、ヘッジ取引にはプレミアムの節約効果がある一方、その原市場(12月限先物)の納会までの期間には影響されない。

SDNCOの有効性は、6月30日のUSDA報告書発表まで連日、3万枚超の売買高が続いたことでも示されている。

実際、USDA報告書など、相場に影響を与える可能性のある短期的なイベントに対応するプロダクトとして、SDNCOはデザインされている。作付面積報告書は(71,000件の農家を対象にUDSAが行った調査を基に)、今穀物年度年にどの作物の作付けがどのくらい広範囲に行われたかを予測するものである。6月30日の報告書が招いた相場の再来も予想される中、リスク・ヘッジの手段として、SDNCOは生産者の間で広く認知されるに至っている。

さらに、次回の報告書発表が近づくにつれ、またその先、穀物の収穫期に入っても、生産者は引き続き、余剰穀物に対する手頃な価格保証を求めることになる。SDNCOは、穀物の供給サイドにとって極めて厳しい現在のシナリオに対して、生産者が自ら対処することを支援するプロダクトなのである。



株式市場のボラティリティとその背景

WHAT’S BEHIND THE VOLATILITY IN EQUITIES

2014年8月6日 || EVAN PETERSON

株式市場はここ5年、そのほとんどの期間で堅調な上昇基調を維持してきた。実際、2013年の年間パフォーマンスは、ダウ平均でここ18年、S&P500ではここ16年で、それぞれ最高を記録するに至っている。2014 年に入ってからの両指数はさらに、過去最高値の更新を重ねる状況ともなった。そんな中でS&Pが7月末、ここ2年で最大となる下落相場を演じたことから、ここまでの強気トレンドは転換した、との指摘も市場では聞かれている。

相場状況が急激に変化することを表す尺度の一例として、S&P500の株式オプションの価格変動率を取引対象としたボラティリティ指数(VIX)がある。そして市場では、そのVIX指数が7月3日に過去最低水準を記録する一方、株式市場は過去最高値更新に向けての上昇を続けていた。VIX指数はその後、8月1日までには第1四半期以来の高水準まで戻す展開となった。さらに、S&P500、ダウ平均そしてNASDAQを含むCMEグループ上場の株式指数オプションの日中売買高は、7月31日と8月1日に相次いで過去最高を更新した。実際、市場では、株式市場には下落修正が不可避であるとするウォッチャーが多かった。それでは、株式相場の直近の下落には「修正」以上の意味があるのだろうか? E-Mini S&P500やE-Mini NASDAQなどの市場に特化した先物教育を展開しているE-Mini Exchangeの創設者、Anthony Crudele に話しを聞いた。

好調な第2四半期GDP、改善を続けている雇用統計など、先週は重要な経済指標の発表が続きました。一連のデータは株式指数先物に、全体としてどう影響したと考えていますか?

「好調な経済指標は必ずしも市場の上昇にはつながらない」と言う意味で、株価指数先物に影響したと思います。続いている強気相場の原動力となっているのは、実質的に2つの要因です。1つは相場環境に対する投資家の懸念、そして流動性を供給し続けているFRBです。流動性の供給が続いていることで、強気筋は確信を持って株式市場に参入し、リスクを取り続けているのです。これが、株価上昇の牽引力となっています。一方で、FRBが流動性供給の終焉を表明していることで、相場環境に対する懸念も収束している様に見えます。ただ、市場には先々に関する不透明感が残っていて、現状の様な株式市場の急変動が引き起こされる状況となっています。この不透明感を最近の地政学的リスクと組み合わせると、S&Pが極めて不安定になっている現状が分かるでしょう。

CMEグループの株価指数オプションの日中売買高は1,159,176枚に達し、7月31日に記録した1,080,307枚を上回り、過去最高を更新しました。株式 オプション の取引が活発化していますが、背景は何だと思いますか?

要因は、複数あります。先ず、株価指数オプションの取引量は過去数年間、拡大を続けています。したがって、先週の様にボラティリティが低下する場面では、売買高が記録を更新したとしても驚くに値しないでしょう。さらに、市場参加者は相場の不透明感を背景に、既存のポジションを防衛したり、相場の次の動きに向けて新規に売買を仕掛ける手法として、オプション取引を活用する様になっています。株式オプションの売買高が過去最高を更新する状況は、その取引ツールとしての人気の高さ、相場展開に対する不透明感の高まり、この両者が相互に作用して今後も続くと思います。

Graph for Equity

VIXは7月末に向けて、大幅な上昇となりました。
株式市場にボラティリティが戻ってきた、と言うことでしょうか?
それとも、この上昇は一時的な現象でしょうか?


確かなことは言えませんが、個人的には、ボラティリティの上昇サイクルが始まったと考えています。市場参加者の間では「不透明感」という言葉が頻繁に使われていますし、こうした言葉が一般的に使われる様になる相場環境は、ボラティリティがさらに高まる相場環境でもあると思います。

今後の相場要因で、注視しておくべきものはありますか?
また、今回の相場修正は、修正の範囲内で終わると思いますか?


注視するべきポイントは、いくつかあります。先ず、明確なのは地政学的リスクです。この種のリスクは、市場がリスクとして認識するまで、相場には影響しません。現状(今のところ)、市場はあまりのそのリスクを意識していないと思います。ただ、どこかの時点で意識することになるでしょう。地政学的なリスクに関するニュースを契機に大量の売り注文が発生すれば、このリスクを認識せざるを得ません。さらに、チャート上のテクニカルな水準を突き抜けて相場が展開するとすれば、こうした売りの勢いが加速する可能性も考えられます。

また、債券市場にも注視しておきたいですね。特に、経済指標やFRBのコメントに対する債券市場の反応には、要注意だと思います。債券市場で急激な金利の上昇があれば、株式市場はこれを警戒するでしょう。金利が急騰し始めるということは、FRBが政策金利を引き上げるタイミングが迫っているという兆候ですし、このシナリオに株式市場がどう反応するかは、極めて重要と言えます。金利上昇にS&Pの軟調さが重なれば、それは新たな相場トレンドを示唆することにもなるでしょう。




アジアの農産物商品: エルニーニョの再来に備えて

AG COMMODITIES IN ASIA BRACE FOR EL NINO’S RETURN

2014年8月5日 || OPENMARKETS

天候に関しては今日、異常気象の度合が進行していることが唯一、明白なことだと言える。そしてアジアでは、インドネシアからマレーシアに至るその大半が、ここ17年で最悪の干ばつのただ中にあり、これによりさまざまな穀物の価格が急騰している。

さらに、5年来となるエルニーニョ現象が今秋に発生するとの予想は、この異常気象の度合の高まりによって、多くの農産物が被害を受けるだろうということを示唆していることになる。

3月初旬、 米国海洋大気庁 (NOAA) は、エルニーニョ現象が発達する確率を50%と予想した。一方で、コロンビア大学 国際気候・社会研究所は、その確率を8月時点で70%、10月までで75%から80%とした。

エルニーニョ(暖気の発生) は、貿易風の勢いが弱まり、温かい海面が太平洋西部に吹き寄せられることで発生する現象である。かつてアジアに発生したエルニーニョ現象は干ばつと洪水の両方をもたらし、1997年には特に深刻な状況となった。今回は、インドネシアやマレーシアでは乾燥した暑さが、中国南部および長江流域では豪雨が、それぞれ予想されている。

一方で、市場参加者にとってこれまでと異なるのは、異常気象が商品市場に与える影響に対して、これに備えるための多様で改善されたツールが用意されていることである。洗練されたのは気象予測だけではなく、異常気象の影響に対してより広範な種類の先物やその他のデリバティブ取引が提供されており、そのリスクをヘッジすることが可能になっているのである。

エルニーニョ現象の発生が予想される中、農産物商品の相場展開を乗り切るポイントについて、CME グループ シンガポールでコモディティ商品のエグゼクティブ ディレクター を務めるネルソン・ ロー(Nelson Low) と、CME グループ シカゴで天候およびオルタナティブ投資商品のマネジャーを務めるハイディ・セントラ(Heidi Centola) にインタビューした。ハイディは 、天候リスク管理を促進する国際的な業界団体である天候リスクマネジメント協会 (WRMA) の役員も務めている。

エルニーニョ現象は、その85%がアジアで生産されるパーム油などの穀物に、大きな影響を及ぼすのでしょうか。
ハイディ・ セントラ(Heidi Centola, HC):
エルニーニョ現象が発生する数年間は通常、その影響を受ける地域の降水量が平年を下回るため、穀物の収穫率は低下します。しかし、こうした収穫率の低下には、エルニーニョ現象以外の要因が影響している場合もあります。例えばパーム油の場合、現在の天候が生育や収穫に影響することは、2015穀物年度まではおそらくないでしょう。収穫への影響を予測するには、パーム油が生育期間の長い農産物であることを念頭に置いておかねばなりません。一方で、供給量の低下予想を背景に、パーム油市場は既に一段高となっています。天候による影響を受ける農産物は、現状ではなく、明らかに先々の見通しで取引が行われているのです。

今年、パーム油先物に何らかの影響はありましたか。
ネルソン・ ロー(Nelson Low, NL):
目立ったところでは、ヘッジャーからはパーム油価格の変動リスクを管理する需要が、スペキュレーターからは価格変動の拡大を背景とした取引需要が多くあります。当グループの提携取引所であるブルサ マレーシア デリバティブ(Bursa Malaysia Derivatives (BMD))では、パーム油価格の世界的指標と言える主力商品の粗パーム油先物取引を上場しています。2010年にCME グループのGlobexのプラットフォームに上場されて以来、同先物の日中売買高平均は年率約20%増加しています。これは、市場参加者が、このパーム油先物の取引に熟練してきたことの表れです。2013年、BMDの協力を得て当グループは、米ドル建て粗パーム油スワップの扱いをClearPortで開始しました。この取引も目覚ましい成長を見せていて、2014 年第2四半期の清算高は28%増(四半期比)に達し、取扱い開始以来の最高水準を記録しました。

不安定さを増している気象条件も影響して、年初来の出来高も急増しています。天候関連のリスク管理ニーズは、高まりを見せているのです。

アジアでのエルニーニョ現象発生により、他にはどんな商品が影響を受けるのでしょうか。
HC:
パーム油以外では、おそらくインドやオーストラリアの小麦生産も少雨の影響を受ける可能性があり、価格の上昇要因となるでしょう。
また、中国はトウモロコシと米の主要生産国です。世界的な供給量の減少と言うことになれば、グローバル市場やCME グループの主力商品である穀物や油糧種子の相場動向に影響します。例えば、中国でのトウモロコシの生産量に重大な不足が生じれば、世界最大の消費国である中国の需要増加予想を背景に、相場は上昇する結果となるでしょう。

主要穀物市場を別にしても、異常気象による食物連鎖を介した副次的な影響があります。例えば家畜は、飼料価格の上昇と牧草被害の両方から影響を受けます。実際、2013年には、ここ約70年で最悪と言われる干ばつ被害が発生したニュージーランドで、牛肉や牛乳と同様に羊肉の生産にまでマイナスの影響が及び、グローバル市場の価格を押し上げることになりました。

今日、天候関連リスクのヘッジに関する市場の関心が、一層の高まりを見せています。この背景は、何でしょうか。
NL:
要因は、2つあると思います。第1に、異常気象の発生頻度の高まりとそれに関連した農産物の価格変動率の増大により、リスク管理の必要性と重要性に関する意識が総体的に高まってきたことです。第2に、気象予測の技術がここ10年で劇的な進歩を遂げたことにより、質の高い予測が利用可能となっていることです。

衛星の数が増えると共に気象予測の精度は飛躍的に高まり、その観測範囲も拡大しています。アジアと南米の気象観測に関しては、従来の米国や欧州に加えて、観測体制がさらに重層化しています。さらに、Google Earthのサービスを応用した穀倉地域の衛星画像を用い、その濃淡を前年の画像と比較することで、今年の収穫予想を行うことも可能となっています。

高度の信頼性を持ち、特定地域に限定した気象予測が世界各地で始まったことから、市場参加者は現在、これまで以上の確信性を背景にヘッジや収益目的のポジションを設定しているのです。 気象予測で優位性を確保することはこれから、さらに重要度を高めることになるでしょう。

こうした動きの例として、銀行やヘッジファンド、そして農業関連産業までもが、外部の気象予測に頼るだけでなく、独自に気象予報士を雇い始めていることが挙げられます。天候リスクを管理するという需要のさらなる高まりに対応するため、CME グループでは、気温や降雨、ハリケーンを対象とした一連の天候関連デリバティブ商品を提供しており、天候に影響を受ける農産物の収穫リスクだけではなく、天候自体のヘッジも可能にしています。

天候関連リスクのヘッジが主流になっていく、ということでしょうか。
その通りです。業績見通しに関して将来的に発生し得る全てのリスクを開示する義務を負っている上場企業の多くでは、株主への務めとして、こうしたリスクに対応する能力を求められているという認識を経営陣が強めています。さらに、リスク管理において天候関連のリスクも管理の対象としている企業に対して、投資家はこれを評価する傾向にあることも示唆されています。

つまり、天候関連リスクの管理は企業のベストプラクティスとして急速にその認知度を上げている、と言えると思います。

CME グループの天候デリバティブを利用して、アジアにおける天候の影響をヘッジする機会はあるでしょうか。
HC:
当グループのアジアに関する関連プロダクトは気温に特化しているため、天候リスクに関する明白な選択肢とはならないでしょう。ただ、広島と大阪、東京の気温に関連したリスクのヘッジには役立ちます。この種のプロダクトは、気温に関連したエネルギーに対する需要、という観点から利用される傾向があります。将来的に市場が進展するにつれ、こうした分野のプロダクト・レンジは拡大していくもの、と考えています。

米国の天候商品は、アジアにおける天候リスクをヘッジする代替ツールとして利用できるでしょうか。
HC:
当グループが米国で提供している天候商品は、種類も豊富です。しかし、こうした商品がアジアの天候リスクを管理するための有効な代替ツールになるとは思いません。アジアにおける天候関連リスクをヘッジするのには当面、当グループの主力商品である穀物や油糧種子、家畜、乳製品の先物やオプションが、最も有効性の高いプロダクトだと思います。

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