2014年の世界経済は成長を加速させるか?

THE GLOBAL ECONOMY IN 2014

2013年12月20日 || BLU PUTNAM

2014年は、米英両国でさらなる成長が期待され、中国では市場原理の導入が加速していくだろう。欧州の金融システム不安は依然として圏内経済の足を引っ張っているものの、世界経済は回復基調にある。いくつか懸念材料があるとはいえ、世界経済は全体的に強い成長過程にあるようだ。

シカゴ大学ブース・ビジネススクール・ロンドンキャンパスが年末に開いた朝食会で、TheCityUK社のクリス・カミングス氏による司会進行のなか、私は満席の聴衆を前に「2014年の問題や課題」について話をさせていただいた。そのとき言及したトピックの一部を地域別に紹介しよう。

欧州

ユーロには誕生当初から大切なものが欠けていた。それは、よく指摘されるような共通の財政政策ではない。欧州全体で金融を監督する機関が必要であるにもかかわらず、対処しなかったことだ。独立の度合いが異なり、また財政政策の異なる複数の行政地域が、共通の通貨を導入して成功した事例はいくつでもある。その最たるものが米国だ。北はイリノイ州から南はルイジアナ州まで、西はカリフォルニア州から東はサウスカロライナ州まで、財政政策は州ごとに大きく異なる。しかし、それが悪く影響することもなく、通貨統合に成功した。

通貨統合とは共通した形式のマネーを使用することでしかない。そこで本当に重要なのは、金融システムを監督・規制する統一された機関の存在なのだ。ユーロが誕生したとき、ユーロ圏の国々は、金融の規制にあたって、銀行がユーロ加盟国の債務を他のユーロ加盟国の債務と同一の信用リスクとして扱うことに合意してしまった。ユーロが誕生した初期段階では、これがスペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャといった弱国に非常にうまく機能し、その恩恵を得た。というのも、ソブリン債の利回りが、こうした弱国に都合良く収斂していくのを後押ししたからだ。裏を返せば、多くの国々の金融システムが、弱国のソブリン債のリスクに、過剰にさらされたことを意味していた。そして金融危機に見舞われ、ギリシャ国債をドイツ国債と同等に扱うことの過ちが明らかになったわけだ。以来、金融システムは低迷したままである。

BLU PUTNAM

欧州の2014年の問題は、危機から5年たった今も、欧州連合(EU)の首脳が依然として破綻した銀行の債務処理に苦しんでいることだ。この問題について、ある種の合意には達すると思われる。しかし、それはこれから5年の真の課題を解決するものではない。少なくとも2014年中に解決することはないだろう。将来的に課題となるのは、足かせではなく、経済成長を支援できるようにするため、ユーロ圏の金融システムをいかに機能させるかということなのだ。

充実した自己資本と健全な金融システムによる支援がなければ、経済は簡単には成長しない。銀行が自己資本を強化し、融資を増やせるような改革を断行するには、ユーロ圏に強力な政治的リーダーシップが求められる。ところが、ドイツはその適役であるとはいえない。メルケル独首相は、選挙に大勝してから(ただし単独過半数ではない)連立政権を発足させるまで、3カ月もかかっている。しかも連立をまとめ上げるため、彼女は自分の政策を制限することになりそうな妥協をしなければならなかった。またドイツという国は、パートナーとともにリーダーシップを取ることを好む。現在のところ、そのパートナーはフランスのオランド大統領だ。ところが、彼の支持率は落ち込んでいる。しっかりしたパートナーが見当たらない。

欧州経済が2014年中に縮小することはないだろう。しかし、経済成長が軌道に乗るのは、欧州中央銀行の積極的な措置によって金融システムが回復し、成長を支えられるようになるまで待つ必要があると考えている。なお、欧州が依然として金融システム全般にわたる改革に苦心していることが、ロンドンに大きな優位性をもたらすことになった。ロンドンの世界の金融センターとしての地位が潜在的な競争相手に比べて高くなったからだ。

中国

中国に関する議論は、新指導部による市場原理の導入が中心となる。何十年にもわたって中国に高成長と急速な近代化をもたらした政府主導のインフラ投資モデルが、大きな曲がり角に差し掛かっている。新指導部はこのことをしっかりと認識しているようで、国内需要に重点を置いた成長モデルを目指すようになった。これは消費者や企業が、より自由に活動できることを意味する。市場改革が進み、世界各国と、より自由で大規模な金融取引が可能となるのだ。一人っ子政策の緩和といった改革や、農村部から都市部への移住制限の緩和が、この市場振興策を支援することになる。そして将来的には通貨の自由化が加速するだろう。ロンドンなどオフショア取引センターにとっては好機といえる。

「【図説】世界で人民元の取引が増加」を参照

ただし、市場改革の推進で現在の景気減速を必ずしも食い止められるわけではない。実質GDP成長率は年率換算で10%台から7.5%まで低下し、2014年以降はそれよりも若干下回ることになるかもしれない。しかし、それは近代化プログラムが成功し、成熟国に見られるような長期的に持続可能な成長率へと移行するときに見られる、ごく自然なプロセスなのだ。

米国

米連邦準備理事会(FRB)は2014年中に、量的緩和(QE)として知られる資産買い入れプログラムの終了を決定しそうだ。このことは米国経済にとって大きな強材料であると考えている。量的緩和の有効性については、数年あるいは数十年にわたって、激しく議論されるだろう。いずれにせよ、FRBはメッセージを大きく変えた。QEの終了は、米国経済が非常に楽観視されているときに出てきた。経済が非常に悪化した状態にあり、緊急措置が必要との見解からQEの必要性が正当化されたのとは対照的だ。私たちは、米国経済の弱さが警戒されたとき、FRBがそれほど積極的でなければ、QEなしで2012~13年はもっと力強く成長していただろうと考えている。過去についての議論はともあれ、今後の見通しは良好だ。

米国の財政赤字は縮小している。事実、景気後退のどん底にあった2009年、米国の財政赤字は対GDP(1.4兆ドル)比で約9%まで拡大した。しかし、2014年は対GDP比でわずか3%に落ち着くとみられている。これはマーストリヒト条約の基準を満たしている。さらに素晴らしいことに、オバマ大統領の任期が終了する2015年には、米国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が均衡またはわずかに黒字化する可能性さえある。FRBは、前向きな見通しを持ちながら、短期金利をゼロ近辺に誘導するという非常に緩和された金融政策を維持しており、また財政の安定化が目前となったことで、2014年の米国経済は堅調に推移し、実質GDPで約3.5%の成長が見込まれる。

リスクオンへ

欧州が足を引っ張っているものの、中国の新指導部は市場開放を強力に推し進める方針であり、また米国経済のさらなる成長が見込まれる。したがって、世界の金融市場は、2014年に向けて足場を固めたといえるだろう。それどころか、新興市場の通貨や株式など、2013年に低迷した資産クラスが、新年には明るく輝くかもしれない。新興市場が域内の産業経済で高い成長率を維持するには、自分たちに受け入れられるもの、あるいは自分たちが望むものをはるかに超えた強固な成長基盤が必要となる。その基盤が、ようやく少しずつ再構築されるようになった。それが2014年をより楽観的にさせてくれる。


【今日の数字】FXオプションの取組高急増が示すもの

TODAY’S NUMBER FX OPTIONS OPEN INTEREST

2013年12月6日 || CRAIG LEVEILLE

取引所市場で最も重要な指標のひとつが「取組高(建玉残高)」である。これは、市場もしくは限月において、取引が約定されたままで、反対売買による相殺や受渡による決済がされずに残っている売り建玉もしくは買い建玉の総数である。 なお、それぞれの建玉に売り方と買い方が存在するが、取組高を計算するときには、その両方ではなく、一方だけを数える。 昨日、FXのボラティリティが低いままにも関わらず、CMEに上場するFXオプションの取組高が、史上最高の1310億ドルを記録した。

なぜ取組高が当社にとって非常に重要な指標であるのか。 もちろん、それが当社のFX市場にどれだけの流動性があるかを示してくれることもある。しかし、より注目されるのは、建玉が急激に増加しても、市場がCMEを高く信頼し、FXオプションでのリスク管理を維持していることだ。 市場参加者が市場に求めているのは、高い流動性だけでなく、そこに世界基準のリスク管理が伴っているかである。それによって、保有するFXオプション建玉の安全性と確実性が確保されるからだ。 また、取組高の増加は、新規のマネーがFX市場に流入していることも意味する。 こうしたトレンドは、FXオプションの出来高の増加(前年同期比48%増、現在FXオプション市場の86%が電子取引によるものである)はもちろんのこと、FX先物およびオプション市場で、大口の建玉保有者の数が記録的な伸びを見せたことからも明らかだ。

Graph FX OPTIONS OPEN INTEREST
CMEのFXオプション出来高と取組高(2008~2013年)

さまざまな仕様の商品が上場し、しっかりと規制されているFX市場に人気と取引が集まっている。このことから、当社の運営する中央清算機関が有効に機能し、また今日の不安定な通貨市場でのリスク管理やヘッジのニーズを満たしていると分かる。 世界中のすべてのFX取引プラットフォームで取引の減少が見られた一方で、広範なネットワークを持つ店頭取引(OTC)市場に対する当社の市場シェアは、記録的な拡大が続いた。 事実、11月のCMEのFX先物とオプションの平均出来高は、代表的なFX電子取引プラットフォームであるEBS(Electronic Broking Services)に対して112%であり、通年では102%だった。これは史上最高である。 現在、金融機関への規制強化、特にバーゼル3の適用が進んでいる。そのなかで、取引所に上場する先物と先物オプションは、資金や証拠金を相対のOTC取引よりも効果的に管理できることから、市場参加者にますます魅力的な代替手段として映っているのだ。


技術革新で変わる米国の農業

FX Options Open Interest

2013年12月3日 || DEBBIE CARLSON

「米国の農家」と聞くと、ノーマン・ロックウェル(軽妙なタッチで「古き良きアメリカ」を描いた米国人画家)の絵に出てきそうな光景を思い浮かべるかもしれない。もしそうだとしたら、考え直す必要がある。習熟した技術をもつ農家が、10~15年前には思いもよらなかった方法で作物の生産を管理しているからだ。携帯メールのような単純なものから、GPSや衛星画像による農地分析まで、あらゆる技術を駆使している。近ごろの米国の農家は、ノーマン・ロックウェルというよりも、むしろバンクシー(英国の革新的な覆面ストリートアーティスト)に近い。

イリノイ州の農家、ケビン・ケネディ氏は、同州ワイヤネットとディクソンの間にある、自ら所有する3800エーカーの農地と顧客から委託された1200エーカーの農地を耕作し、管理している。情報技術のおかげで、実際に収穫した作物を貯蔵庫に入れる前に、収穫量を把握できるようになったという。

収穫量を表示するモニターには、GPSが搭載されており、作付けした地域、作物の種類、そして栽培密度を記録した地図とつながっている。その情報を専用ソフトに転送すると、8月初めには詳細な収穫予測を入手できるという。

「今季は10万ブッシェルを在庫に回し、約55万ブッシェルを出荷します。それには自分の作物をどうするか、かなり具体的に予定を立てておかなければなりません。この作業を7、8月にしています。実際に刈り入れを始める前です。つまり収穫前に、この秋どのような展開になるか、大体予想がついているわけです。今年、収穫予想が最も外れたところでも、実際の収穫量との差は3%未満にすぎませんでした。予想は実際の数字に極めて近いです。この技術を採用して今年で4年目になります」(ケネディ氏)

氏はまた次のように述べている。「(この技術を導入するまでは)貯蔵庫に入れるまで、どの程度の収穫があるか知る由もありませんでした」

今年は、この技術のおかげで「畑に出て自分の収穫量が平均以上だと分かりました」(同氏)という。こうした情報から、氏はトウモロコシ価格が現在の価格よりも1ブッシェル当たり2ドル高い時期に、収穫物の価格変動リスクをヘッジすることができた。

ケネディ氏は、トウモロコシの粒の大半が現れる「ミルク・ステージ(乳熟期)」や「アーリー・ダフ・ステージ(糊熟前期)」に達するのを待ってから、最終的な収穫量を予想していると語る。

衛星とグーグルアース

農家では、衛星写真や赤外線画像を利用して、作物の生育状況を高所から見下ろす形で確認している。ケネディ氏によると、作物の分布を反映した地図で、夏の間に自分の農地についてイメージできるようになり、そのおかげで窒素不足といった問題に素早く対処できるようになったという。

またこの地図を収穫量の地図と重ねることで、どの農地が他と比べてどれだけ良い収穫だったか分かるようになった。「これは私の報告書です。農地を委託してくれた顧客にこれを見せれば、彼らは自分の農地を他と比較できます」(同氏)

シカゴから南西に100キロほど離れたところにある約1900エーカーの農場で、父親と共にトウモロコシと大豆を栽培するスコット・フリステッド氏によると、グーグルアースのような簡単に入手できる情報でも、自分の農地を空から観察して作物の成長を追う、ひとつの手段になるという。

「私はグーグルアースで自分の農地にある湿った場所を探しています。2011年に大雨があったとき、所有するすべての農地にさらに窒素を投入したが、それぞれの農地で一区画の畝だけは試験的に残しておきました。その後、グーグルアースを使い続けていると、どこが試した区画で、どこがそうでないか確認できるようになりました。その区画には、トウモロコシがそれほど生い茂っていなかったからです」(フリステッド氏)

問題を抱える場所が耕作地のどの部分なのか記録することも、有益な情報となる。「春夏に湿気の多い場所を特定しておいて、作物を刈り取った後、そうした場所にタイルを敷くことができます。秋には、どこも同じに見えるでしょうが」(同氏)

またフリステッド氏によると、コンバインから得た収穫結果のデータを自分の肥料会社の担当者に送れば、その担当者は、作物を刈り取ったまさにその場所に、その作物によって失われただけの肥料を投入できるという。「この方法なら、肥料をやり過ぎることもないし、肥料が足りないこともありません」(同氏)

自動操縦のコンバイン

現在では、洗練された機械を自動操縦で動かし、より正確な作付けと肥料の投入ができるようになった。 フリステッド氏の発言を裏付けるように、ケネディ氏もまた、位置データを保存できるので、秋には農地一面というよりも、直線状に肥料を投入できるという。春には、その肥料を投入した箇所に種をまく。 この方法によって、種は確実に肥料の上にまかれるので、肥料を最大限に利用できるというわけだ。

自動操縦によって、農家は夜間に作業ができるようになった。春には暗いうちから作付けができるし、秋には夜遅くまで収穫ができる。

「以前も夜に出ることはありました。しかし、まっすぐ運転するだけでも大変です。目印の線を見つけるのが難しいこともありました。しかも一度間違えたら、高い代償を払うことになります。それが自動操縦なら、すべてやってくれます。1日に作付けのできる時間が増えたことで、経済効率が上がりました」(フリステッド氏)

ケネディ氏は、携帯メールのような単純な情報技術でも、大きな効果をもたらすことがあると指摘する。

「自分の農場では合わせて13人が働いています。私は携帯メールで指示を送ることができます……。おかげで、夜勤のスタッフも管理できるようになりました。私が寝ている間も、皆が私宛に携帯メールを出すことができます。また家族に迷惑を掛けずに、私だけを起こすこともできます」(同氏)




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