なぜ、中国人投資家は先を争って 金を買うのか?

Why Chinese Buy Gold

2013年9月30日 || CAMERON ALEXANDER

金価格が今年1月から6月の間に約30パーセント下落し1983年以来最大の下げとなったとき、市場の勢いに押された投資家が資金を引き揚げたため、金連動型上場投資信託(金ETF)が保有する585トンもの金が売りに出た。一方で、金価格の下落は中国における現物の需要を喚起し驚くべきレベルに達した。なぜなら中国本土の消費者が金の購入に走ったからだ。

金価格の崩壊は金資産をさらに増やす未曾有の機会だと見る向きは多く、中国人の「奥さまたち」(一般に家計をやりくりを担当する年配の女性に対する敬称)はこの機会に乗じて、通常は年末恒例の買い物である金の小物や季節の贈り物を買い込んだ。こうした行動に始まり、第2四半期には中国全土でも対消費者販売は熱狂を見せた。需要の高まりにより、こうした奥さまたちが何らかの金製品やシンプルな宝飾品(主に24金)、投資用地金を手に入れようと販売店の外に文字通り何時間も並ぶ光景が見られ、店頭からすべての在庫が完全に消えることになった。

この空前の消費者需要の波により中国への地金輸入は急増し、上海金取引所(SGE)のスポット取引の出来高は著しく増加し、当取引所の上半期の出来高は倍以上になった。これに伴い、取引所から出庫する金の現物の受け渡しが大量に増加し、日々のプレミアムも急拡大した。プレミアムは2012年の平均ではわずか1トロイオンスあたり6.5ドルであったのが、5月13日には1トロイオンスあたり56ドルと過去最大になった。出来高は欧米市場でも増加、ニューヨーク商品取引所で取引する金先物およびオプションの出来高は顕著な伸びを見せ、上半期の1日あたり平均出来高は11パーセント増加した。

HKG Bullion Imports vs Gold Prices


中国に輸入する地金の大半が香港から入ってくる。香港は今なお中国本土への主要経路としての役割を果たし、そしてしばしば中国人の需要を代表する役割を担っている(上海を通した直接輸入も増えているが)。 2013年の最初の7カ月で主要地金供給国からの香港の金輸入量は合計919トンにのぼり、重量にして前年比162パーセントの増加という驚くべき数値になった。トムソン ロイター GFMS リサーチによれば、中国の宝飾加工品は2013年上半期で年率40パーセント以上も急増し345トンもの記録的数値に達した。一方で投資用地金の需要は同期間で63パーセントもの増加となり246トンに急伸した。

金価格が上昇する環境で、アジアの巨大国家全土に金の需要は異常な速さで拡大しており、直近10年における1年あたりの需要の伸びは前年比で平均10パーセントであった。さらに、世界中のほとんどの売買取引が激しく減退していたときに、宝飾加工品は直近10年で1年あたり300トンを超すペースで増えてきた。実際に、世界の宝飾加工品(中国を除く)は同時期に5パーセント減少した。次第に高価になる金の代わりに安価な素材を使用したからである。

最近発行の「トムソン ロイター GFMS Gold Survey 最新版 1」では、年初にそして実際のところ直近のほぼ10年間に渡り中国人がこれほど熱心に金を購入していた主な理由をいくつも示し、なぜ金は中国人社会でそれほどまでに重要な役割を持っているのかを説明している。レポートの要旨は、金を代替資産クラスとして、そして財産を保護する安全な方法として次第に考えるようになってきた消費者に焦点を置いている。さらに、所得水準の上昇と急速な都市化の組み合わせが、実質的なインフレや利用の限られた投資商品(主に農村地域)に対する懸念と相まって、消費者(圧倒的に女性)は財産の保護手段として金をため込むことになった。より洗練されている都市中心部では、投資家が資産多様化の手段として金に頼っている。なぜなら、不動産市場での政府による厳しい統制や低金利環境そして低迷する株式市場により、急速に拡大する中国の中流階級のための投資の選択肢は限られていたからだ。

Chinese Bar and Jewellery Demand vs Gold Price


それでは、中国人の奥さまたちは年内そしてその先もこのような熱狂的なペースで買い続けるのだろうか。金価格がもう一段下落しなければ、少なくとも短期的にはその見込みはないだろう。最近の現地調査では、中国人購入者層は年初の金価格調整期に飽くことなく金を探し求めていたが、その熱は冷めていることが分かった。一方で、国内市場の需要は力強く上海金取引所のプレミアムは今なお1トロイオンスあたり約17ドルである。年初に買い込んだレベルを考慮すれば、現在では市場はひと休みの状態であっても驚きではない。

長期的には中国からの現物の需要の役割を過小評価することはできない。中国は今年インドを凌ぎ1,000トンを超える最大の金消費国になるだろう。実際に過去10年で金の需要は重量ベースで4倍以上になり、その価額は金価格の上昇により1,400パーセントを超える勢いで上がり、
1年あたりで500億ドルを超えている。金価格の13年に渡る上昇相場が終わるとき、中国人の奥さまたちは益々この先重要な役割を果たすだろう。



米国のQE撤退がアジアにもたらすもの

What US QE Retreat Mean

2013年9月17日 || OPENMARKETS

近年、世界の主要中央銀行は、大規模な金融緩和政策をとっている。金利をほぼゼロにまで引き下げ、バランスシートを拡大させてきた。しかし、米連邦準備制度理事会(FRB)は、ようやくバックギアを見つけたようである。量的緩和(QE)、そして長年にわたる金融資産の買い入れを巻き戻す「縮小」策が準備されている。

太平洋の向こうのアジアでは、FRBの動向に戦々恐々としている。QEが、さまざまな通貨市場および資産市場を押し上げている要因とみる向きがあるからである。すでに縮小の予想だけで、世界中の資金が逆流している。それによって、アジア諸国など新興市場の通貨が急落しているのである。

QE反転がもたらす意味とは何か、全体像をつかむためCMEグループの主任エコノミストでOpenMarketsの寄稿者でもあるBlu Putnam氏に聞いた。

FRBの政策、そして縮小によって起こり得る影響について、どれだけ明確になっているのでしょうか?

米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合がある9月18日には、かなり明確になっていると思います。今のところ、市場参加者の意見が一致しているのは、QE縮小策について重要な発表があるだろうということだけです。

FRBは、資産の買い入れ縮小を準備するにしても、データ、特に雇用統計がどのように推移するかによって、数カ月先に買い入れを増やすか減らすか、市場にはっきり分からせようと、細心の注意を払うでしょう。
またFRBは、QEの出口戦略を進めている間、またその先のしばらくの間も、フェデラル・ファンド金利の誘導目標をほぼゼロにとどめる意思を明らかにしています。つまり、インフレ圧力がはっきりと現れるまで、大規模な金融緩和政策は続くであろうということです。そして実際のところ、現在の米国にはインフレ圧力が見当たりません。

また、FRBが資産によって縮小の速度を変える可能性もあります。つまり、こういうことです。現在のプログラムでは、FRBが毎月、400億ドルの不動産担保証券と450億ドルの米国債を買い入れています。その米国債のうち、満期まで10年以上のものが約25%です。米国債市場での利回りへの実際の影響度からすれば、長期債の買い入れこそが、その他の買い入れよりも、はるかに重要といえます。

ひとつのシナリオとして考えられるのが、FRBが徐々に、雇用市場の強さ、そして比較的脆弱な米住宅市場の回復について、より強く意識するようになってきたことです。住宅価格が上昇しているとはいえ、市場には、信用供与のプロセスに対する懸念があります。住宅販売の多くは、現金もしくは多額の頭金によるものです。ローンを組めるのは、最も信用力のある借り手だけなのです。

しかも米政府は、政府系住宅金融機関であるファニーメイとフレディマックを縮小させようとしています。FRBによる不動産証券の買い入れは、その金利には、ほとんど影響しません。なぜなら、不動産証券の価格は、米長期債の利回りに基づいているからです。しかし、FRBによる不動産証券の買い入れは、不動産証券市場の流動性に厚みを加えます。つまりFRBは、不動産証券の買い入れよりも、米国債の買い入れを急速に減らしていく選択をする可能性があるわけです。

現在、非常に多くの中央銀行が、量的緩和型の政策を展開しています。こうしたなかで、通貨予測に新たな手法が必要でしょうか?

主要経済圏の通貨価値が、伝統的な経済の基礎的条件よりも、政治的配慮および政策転換で動かされることを、ますます実感するようになりました。

FRBがQEを止めたとしても、米国、欧州、日本では、どこもなお、ほぼゼロの短期金利、長期的に見ると低い経済成長、そしてインフレ圧力のない状態が続くでしょう。したがって基本的に、米ドル、ユーロ、日本円はすべて、弱い通貨の特徴を有しています。しかし、為替レートというのは、すべて相対的なものです。ユーロと円が根本的にさらに弱くなっていなかったとしたら、これは米ドルにとって悪い状況であったといえるでしょう。ところが実際には、米ドルは基本的にトップの座にあるのです。

短期的には、政治的決定プロセスの盛衰に注目するしかありません。そして長期的には、インフレ圧力を監視することです。「最初に、どの国で、実質的なインフレ圧力の生じる可能性があるか?」が問題となります。そして「そのインフレ圧力が、中央銀行に金利引き上げの行動をとらせるか?」です。
ミルトン・フリードマンは、金融刺激策とインフレとの間には、長く、そして可変的な時間差があると指摘したことで知られています。

金利引き上げを考える主要国は、強い通貨を手に入れるでしょう。しかし、今のところ、金利引き上げの可能性を真剣に考えている国はありません。

2%のインフレ達成を政策目標としている日本の現状について、どう考えますか?

日本で最後にインフレ測定値が2%を超えたのは、2008年7―9月期でした。世界金融危機と景気後退がデフレを引き起こす直前です。現在、日本の消費者物価指数は、前年比0.7%とわずかに上昇しています(2013年7月現在)。しかし、この上昇のほとんどが、エネルギー価格の上昇によるものでした。食品とエネルギーを除いたコアインフレは、前年比マイナス0.1%です。

参考記事:FX先物で、円が昇る。


インフレ圧力が現れたと分かれば、安倍首相と日本銀行を含めた彼のチームは、物価上昇に喝采を挙げるでしょう。私たちの基本シナリオでは、コアインフレが2014年1月のデータ(同年2月末に発表)で、1%上昇で発表されるとみています。ただし、円が再び弱くなる期間を経ないかぎり、インフレがこれよりも高い流れにはならないでしょう。そして円が弱くなるかは、はっきりしません。

日本にとって次に大きな課題が、消費税率を2014年4月に5%から8%に引き上げるかの決断です。安倍首相は税率引き上げを認める可能性があると、多くの兆候が示しています。この大規模な消費税率引き上げで、引き上げ前の2014年1―3月期の消費支出は、相当増加するでしょう。しかし残念ながら、税率引き上げを実施してから数四半期の間は、実質GDPが減少するとみています。消費税率引き上げ調整後のインフレデータは、再び下落する可能性さえあるのです。したがって首相は、自らの経済プログラムを推進していくために、さらなる刺激策が必要か、判断しなければならなくなるでしょう。

QEがアジア通貨を上昇させたのだとすると、FRBの縮小策もまたアジアに大きな影響をもたらすとみるべきでしょうか?

中央銀行の資産買い入れによる最初の結果のひとつが、市場からある程度のリスクが取り除かれたことでした。そしてこれが、新興国市場の通貨など、よりリスクの高い資産にうまく機能したわけです。その逆で、米国のQE離れは、より高く、より普通のボラティリティへと反映されました。そしてボラティリティが上昇したことで、新興国市場の通貨を含む高リスク資産への露出を減らす市場参加者が出てきたのです。

新興経済圏にとって不幸だったのは、FRBのQE出口戦略に関する議論が、世界の市場で政治的リスクが認識されるようになった他の多くの無関係な要因と、同時に生じたことでした。ブラジルでの経済発展に対する抗議デモ、トルコでの開発計画に対する抗議デモ、エジプトでの政治的自由に対する抗議デモ、あるいはシリアでの内戦による悪影響など、政治リスクに関する不安は、たくさんあります。繰り返しますが、市場の反応は、アジアおよび中南米の通貨を含むすべての高リスク資産への露出を減らすことなのです。

ブラジルを除くほとんどの国が、概して小幅の利上げを選択し、為替介入を回避しています。通貨の価値が、より低い水準へと落ちたとき、これらの通貨の多くは、地政学的リスクが一時的に落ち着けば、再び魅力的に見えてくるでしょう。

では、金融自由化の改革を推進している中国に与える潜在的な影響については、どうでしょうか?

中国は独自の通貨路線を選びました。それは、積み上げた外貨準備を主要な金融政策の手段として利用することです。近年、中国は人民元を安定させるため、数兆ドルの外貨準備を積み上げてきました。また、その資本規制によって、理論的には、FRBのQE縮小に対する中国のリスクは低いはずです。しかし中国は、もはや持続不可能なインフラ支出モデルから国内需要成長モデルへと進化する転換期にあります。

国内需要の成長を促進するため、中国はより柔軟な金融政策を考慮し、より速く金融市場を発展させようとするでしょう。そしてこれはまた、国内需要の成長を支援するということで、世界市場とのさらなる一体化が中国のためになることを意味しているのです。



今日の数字: 原油の電子取引

Crude Oil

2013年9月16日 || JEFF WHITE

米国が2020年までに世界最大の産油国になるとの予想は十分に根拠がある。そうした状況やオクラホマ州クッシングにある貯蔵ハブの原油出荷量の増加は、ウエスト・テキサス・インターミディエート原油(WTI:軽質低硫黄原油)が世界的ベンチマークとしての伝統的地位への復帰に近づくのに一役買っている。7月、WTIは北海ブレントとの価格差が1ドル以内で取引されており、近い将来WTIは再びブレントより高値の取引になるとみる向きも多くある。

こうしたことによりWTIに強みが加わり、市場参加者の間ではWTIの取引への選好が強まっている。クッシングの出荷量が上向きになりスプレッドが縮まると(1年前は23ドルであった)、出来高はブレントからWTIへと移行した。目先WTIを選好する傾向は、WTI-ブレント間スプレッドの12カ月のフォワードカーブで急勾配の逆鞘が進行していることにも表れている。2月、フォワード カーブが9カ月以内での11.38ドル逆鞘を示す状況で、期近スプレッドは0.82だった。つまり、WTIは満期が近づくほど、価値は高くなってゆく。

graph 1

一方で、石油生産の拡大や増量が市場の一大ニュースの一つになっているのであれば、電子取引の競争的な進展はさらに多くの関心を引き付けた数少ない事象の一つになるだろう。市場の電子化はあらゆる先物市場の資産クラスで実現している。金利や株式などいくつかの市場では、オプションを取引する際には以前より電子取引を多く取り入れている。今や先物取引に利用するトレーディング テクノロジーの充実により、現在ではより多くの原油オプションが電子取引で行われている。実際のところ、8月のWTIでの電子取引はついに50パーセントを超えた。2012年では、WTIオプションの32パーセントが電子取引で行われた。

graph 2

WTIオプションの電子取引が発展する理由はいくつか考えられる。以前はおそらく直接トレーディング フロアで、またはボイス ブローカーを通して行われていた多くの取引が、今ではスクリーン上での取引に移行している。この理由の一つは、リクエスト フォー クォート(RFQ)の利用が増加していることにある。RFQとはCMEグループの電子取引プラットフォームであるCME Globexにおいて市場参加者がスプレッド取引を執行できるようにする仕組みである。RFQは現在CME Globexで行うWTIオプションの出来高の13パーセントを占めている。

より複雑な取引を電子的に行う柔軟性により、市場参加者は従来ブローカーに支払っていた取引コストを節約している。そして、現在ではWTIオプション市場の流動性も高めている。金利や株式で電子取引に通じている企業の中には、エネルギー取引デスクを開設し、WTIオプションの事業化を展開しているところもある。

電子市場が持つテクノロジーの可能性は変化してきた。より複雑な取引をもっと多くの人々にさらに低コストで利用できるようになっている。そして、WTI原油にはまたとない最高のタイミングが到来している。8月に見てきたように、WTIがより価値のある取引となるに到ったインフラストラクチャーの変化と、電子市場のメリットを十分に活用する取引戦略の採用との融合が、また今後も続くことであろう。




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