あまり聞かない 世界最大級の自由貿易協定

The Biggerst Free Trade Agreement

2016年9月30日 || Peter Shadbolt

大規模な自由貿易協定(FTA)が続々と締結されている中にあって、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)については、メディアが紙面をあまり割かないし、デジタル世界での露出も限定的で、ニュースとして報じられる機会も乏しい。

しかしながら、議論があまり聞こえてこないこの貿易協定は、その規模という意味で、各段なサイズとなる。実際、年内に開催される閣僚会議を経て批准予定となっているRCEPは、世界最大規模の自由貿易協定 なのである。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や、欧州と米国の間で交渉が政治的に泥沼化している、TTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)に比べ、RCEPの交渉はここまで、 比較的迅速に進められてきている

メルボルンのモナシュ大学で国際貿易法の講師をするジオバンニ・デ・リエト氏は、「TPPを知っていても、学者かこの分野の専門家でもない限り、RCEPを知っている人は少ないですね」と言う。

デ・リエト氏が、認知度の低さに「個人的には、驚愕せざるを得ない」とするRCEPは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10か国とASEANが貿易協定を結んでいる豪州、中国、インド、ニュージーランド、日本、韓国の6か国、総勢16か国が参加し、(世界の総人口の半数を超える)35億人、世界貿易量の40%を市場とする貿易協定なのである。

世界人口の11%、世界貿易量で25%を市場とするTPPを凌駕するものの、世界のGDPでは、TPPがその36%を市場とするのに対して、RCEPは29%となる。

ただ、ニュージーランドや日本、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナムなど、TPPとRCEPの両方に調印している国々では、このアジアを中心とした経済パートナーシップへの集中度が高まりを見せ始めている。

デ・リエト氏は、「TPPについては、日本までもが、発効は難しいと考えています。一方で、地球のこちら側では、インドが主要な参加国となり、協定の魅力がこれまで以上に高められていることから、RCEPの方がTPPよりも政治的牽引力が強いのです」と説明する。

伝統的に国内市場の保護を優先させてきたインドと自由貿易協定を締結するということは、アジア地域の貿易が新しい時代に入ったことを象徴する出来事となる、とデ・リエト氏は付け加えてもいる。

「米国は数年にわたって、インドと投資貿易協定の交渉を続けてきました。ただ、二ヶ国間の溝は埋まりませんでした」と話すデ・リエト氏は、豪州やカナダなどは、米国がこの交渉を進展させるのを待ち望んでいたことを付け加える。実際には、こうした国々はその後、それぞれがインドとの自由貿易協定を独自に締結する結果となっている。

そしてRCEPでは、例えば豪州の酪農品など、これまで進展が難しかった協定上の課題が解決されると期待されている。

デ・リエト氏は、「米国モデルは概して資産をベースとしたものであり、金融市場の規制が緩いものでした。一方でインド・モデルは、出資法などによる事業をベースにしたものでした。両者は、相反するモデルを使っていたのです」と説明する。

貿易や投資に関しては、歴史的に中国の方が御しやすい存在だったと言える。ただ、資金フローを活性化したいインドが、国内産業の防波堤となっている関税に手を加える意思を固めてきている、とデ・リエト氏は指摘する。

インドでの状況変化
パートナーシップの複層構造を求めていたインドは最近、単一層を受け入れる代わりに海外からの直接投資のさらなる拡大を求めるなど、この点に関して柔軟に対応する方針を示唆している。

もちろん、インド国内には、RCEP懐疑派も存在する。ただ、国内議論が、政治よりも経済優先で進められているのも事実である。

デ・リエト氏は、「現状の議論は、民主主義的なプロセスを重視すると言うよりも、インド経済の競争力であり、これに関する脆弱さがその中心となっています」と指摘する。

さらに、オーストラリア国立大学(Crawford School of Economics and Government)の経済学部名誉教授、ピーター・ドライスデール氏は、インドでのこうした状況変化が、RCEPの勢いを加速させる背景になっていると考えている。

ドライスデール氏は、「RCEPは実現しない、という様な否定的な雑音も確かに、当初は聞かれました。そして、インドがこうした動きの先頭に立っていたのも事実です。ただ、RCEPの交渉にそれが表れてくるまで時間がかかったものの、インドの指導層においては、戦略方針の大きな変更が成されたのです」と指摘する。

RCEPの交渉では、中国も中心的な役割を果たしてきた。そして、この自由貿易協定によって中国は、地域の国々との間に抱える政治的な課題のいくつかを進展させられると考えている。

「しかしながら実際には、有効な形でこの協定をまとめるには、もっとプレーヤーが必要なのです」と話すドライスデール氏は、「その意味で、東南アジアで不可欠なのは、ジョコ・ウィドド大統領が就任して以来、貿易政策に関する指針が定まらない、インドネシアだと考えています」と言う。

主体的な貿易相手である地域とのRCEP締結に向けて、豪州やニュージーランドが積極的な姿勢を見せる一方、この協定の批准に向けた動きが緩慢なのは日本である。

ドライスデール氏は、「TPPの決着を優先事項としている日本は、RCEPに関する動きが手控え気味となっています」と指摘する。

「ただ、最近では、日本も作業を加速させて来ています。したがって、RCEPが批准される可能性が高まり、それと同時に、中国やインドに加えて東南アジアの国々、さらに日本などが、供給サイドの改革を進めようとする強い意志を形成する背景ともなっているのです」

改革の手段
国内経済の改革手段として、RCEPが寄与するという見方もある。特に、労働市場や海外投資家の市場アクセスという分野で、改革が遅れていたインドの場合はそうである。実際、インドにおけるこうした分野の改革は、国際的に自国市場を開放するため、事前に必要な条件であるとされてきた。

ドライスデール氏は、「単なる国境を超える取引に関する協定ではないRCEPは、こうした課題のいくつかに対応することになります」とした上で、「これまで東アジア地域で締結されたどの自由貿易協定よりも、RCEPはサービスにその重点が置かれています」と指摘する。

アジアで最も保護されてきた経済における変化が緩慢であるとしても、RCEPを背景に、インドの様な大規模経済が国内改革の課題への対応に前向きな姿勢を示しているという事実は、この自由貿易協定の交渉に、より肯定的な状況変化をもたらしていると考えられる。

インドがこれまで取りまとめてきた自由貿易協定は、後ろ向きであり、相互の譲歩を基本としたものであり、インド経済の開放に向けた戦略に乏しいものだった。ただ、それは今や過去のものである。ドライスデール氏は、「この戦略変更によって、状況は大きく変わるでしょう。しかし、タンカーの様な大型船の方向転換には、時間を要するのが常です」と付け加える。


株価指数先物・オプションについて

2014年6月9日

株価指数先物・オプションについて-Matthew Taglianiの解説



去る 2014年 6月 5日、ストックボイスTVの “World Marketz” にCMEグループの株価指数プロダクト担当エグゼクティブ・ディレクター、Matthew Taglianiがゲスト出演しました。平日に放送・配信中の本番組は、欧州、米国の各市場向けの番組で、ストックボイスにより東京で制作されています。CMEグループはWorld Marketzと提携して、多彩なゲストによる市況解説を取引所フロアから 月2回、中継でお届けします。

こちらから番組のフルバージョンをご覧ください。



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