あまり聞かない 世界最大級の自由貿易協定

The Biggerst Free Trade Agreement

Peter Shadbolt 2016年9月30日

大規模な自由貿易協定(FTA)が続々と締結されている中にあって、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)については、メディアが紙面をあまり割かないし、デジタル世界での露出も限定的で、ニュースとして報じられる機会も乏しい。

しかしながら、議論があまり聞こえてこないこの貿易協定は、その規模という意味で、各段なサイズとなる。実際、年内に開催される閣僚会議を経て批准予定となっているRCEPは、世界最大規模の自由貿易協定 なのである。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や、欧州と米国の間で交渉が政治的に泥沼化している、TTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)に比べ、RCEPの交渉はここまで、 比較的迅速に進められてきている

メルボルンのモナシュ大学で国際貿易法の講師をするジオバンニ・デ・リエト氏は、「TPPを知っていても、学者かこの分野の専門家でもない限り、RCEPを知っている人は少ないですね」と言う。

デ・リエト氏が、認知度の低さに「個人的には、驚愕せざるを得ない」とするRCEPは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10か国とASEANが貿易協定を結んでいる豪州、中国、インド、ニュージーランド、日本、韓国の6か国、総勢16か国が参加し、(世界の総人口の半数を超える)35億人、世界貿易量の40%を市場とする貿易協定なのである。

世界人口の11%、世界貿易量で25%を市場とするTPPを凌駕するものの、世界のGDPでは、TPPがその36%を市場とするのに対して、RCEPは29%となる。

ただ、ニュージーランドや日本、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナムなど、TPPとRCEPの両方に調印している国々では、このアジアを中心とした経済パートナーシップへの集中度が高まりを見せ始めている。

デ・リエト氏は、「TPPについては、日本までもが、発効は難しいと考えています。一方で、地球のこちら側では、インドが主要な参加国となり、協定の魅力がこれまで以上に高められていることから、RCEPの方がTPPよりも政治的牽引力が強いのです」と説明する。

伝統的に国内市場の保護を優先させてきたインドと自由貿易協定を締結するということは、アジア地域の貿易が新しい時代に入ったことを象徴する出来事となる、とデ・リエト氏は付け加えてもいる。

「米国は数年にわたって、インドと投資貿易協定の交渉を続けてきました。ただ、二ヶ国間の溝は埋まりませんでした」と話すデ・リエト氏は、豪州やカナダなどは、米国がこの交渉を進展させるのを待ち望んでいたことを付け加える。実際には、こうした国々はその後、それぞれがインドとの自由貿易協定を独自に締結する結果となっている。

そしてRCEPでは、例えば豪州の酪農品など、これまで進展が難しかった協定上の課題が解決されると期待されている。

デ・リエト氏は、「米国モデルは概して資産をベースとしたものであり、金融市場の規制が緩いものでした。一方でインド・モデルは、出資法などによる事業をベースにしたものでした。両者は、相反するモデルを使っていたのです」と説明する。

貿易や投資に関しては、歴史的に中国の方が御しやすい存在だったと言える。ただ、資金フローを活性化したいインドが、国内産業の防波堤となっている関税に手を加える意思を固めてきている、とデ・リエト氏は指摘する。

インドでの状況変化
パートナーシップの複層構造を求めていたインドは最近、単一層を受け入れる代わりに海外からの直接投資のさらなる拡大を求めるなど、この点に関して柔軟に対応する方針を示唆している。

もちろん、インド国内には、RCEP懐疑派も存在する。ただ、国内議論が、政治よりも経済優先で進められているのも事実である。

デ・リエト氏は、「現状の議論は、民主主義的なプロセスを重視すると言うよりも、インド経済の競争力であり、これに関する脆弱さがその中心となっています」と指摘する。

さらに、オーストラリア国立大学(Crawford School of Economics and Government)の経済学部名誉教授、ピーター・ドライスデール氏は、インドでのこうした状況変化が、RCEPの勢いを加速させる背景になっていると考えている。

ドライスデール氏は、「RCEPは実現しない、という様な否定的な雑音も確かに、当初は聞かれました。そして、インドがこうした動きの先頭に立っていたのも事実です。ただ、RCEPの交渉にそれが表れてくるまで時間がかかったものの、インドの指導層においては、戦略方針の大きな変更が成されたのです」と指摘する。

RCEPの交渉では、中国も中心的な役割を果たしてきた。そして、この自由貿易協定によって中国は、地域の国々との間に抱える政治的な課題のいくつかを進展させられると考えている。

「しかしながら実際には、有効な形でこの協定をまとめるには、もっとプレーヤーが必要なのです」と話すドライスデール氏は、「その意味で、東南アジアで不可欠なのは、ジョコ・ウィドド大統領が就任して以来、貿易政策に関する指針が定まらない、インドネシアだと考えています」と言う。

主体的な貿易相手である地域とのRCEP締結に向けて、豪州やニュージーランドが積極的な姿勢を見せる一方、この協定の批准に向けた動きが緩慢なのは日本である。

ドライスデール氏は、「TPPの決着を優先事項としている日本は、RCEPに関する動きが手控え気味となっています」と指摘する。

「ただ、最近では、日本も作業を加速させて来ています。したがって、RCEPが批准される可能性が高まり、それと同時に、中国やインドに加えて東南アジアの国々、さらに日本などが、供給サイドの改革を進めようとする強い意志を形成する背景ともなっているのです」

改革の手段
国内経済の改革手段として、RCEPが寄与するという見方もある。特に、労働市場や海外投資家の市場アクセスという分野で、改革が遅れていたインドの場合はそうである。実際、インドにおけるこうした分野の改革は、国際的に自国市場を開放するため、事前に必要な条件であるとされてきた。

ドライスデール氏は、「単なる国境を超える取引に関する協定ではないRCEPは、こうした課題のいくつかに対応することになります」とした上で、「これまで東アジア地域で締結されたどの自由貿易協定よりも、RCEPはサービスにその重点が置かれています」と指摘する。

アジアで最も保護されてきた経済における変化が緩慢であるとしても、RCEPを背景に、インドの様な大規模経済が国内改革の課題への対応に前向きな姿勢を示しているという事実は、この自由貿易協定の交渉に、より肯定的な状況変化をもたらしていると考えられる。

インドがこれまで取りまとめてきた自由貿易協定は、後ろ向きであり、相互の譲歩を基本としたものであり、インド経済の開放に向けた戦略に乏しいものだった。ただ、それは今や過去のものである。ドライスデール氏は、「この戦略変更によって、状況は大きく変わるでしょう。しかし、タンカーの様な大型船の方向転換には、時間を要するのが常です」と付け加える。


オプション取引のデータ出力

options data dump

2016年8月16日 || Kira Brecht

投資戦略研究を専門とする米TABBグループが2年前に作成したレポートには、先物オプションの取引が間もなく拡大する見込みであると記述されていた。この分析は、まさに未来を予見するものであった。CMEグループで売買されたオプションの出来高は、昨年一年間で18%の増加を記録。過去5年の期間で見れば、出来高の増加率は68%に上る。

市場のボラティリティ水準が全般的に上昇していることや、FRB(米連邦準備理事会)の金融政策に伴う不確実性など、様々なマクロ要因によって先物オプションの売買が活発化している。

しかし、より大きな要因は、おそらく技術的な変化であろう。オプションの取扱商品は数年前に比べて増加し、市場参加者の多様性も増した。そして何より、オプションの電子取引へのアクセスが改善されたことが、市場に大きな変化をもたらした。

民主化するオプション取引
取引の電子化に伴う副産物として、オプションの価格やインプライド・ボラティリティを評価するためのデータ分析ツールが生み出された。こうしたツールの出現により、オプションの売買プロセスが様々な面で民主化され、従来に比べて容易にオプションを売買できるようになった。

「先物オプションの売買・分析ツールは、長い間、株式オプションのツールよりも劣っていました。幸いなことに、その差は完全ではなくとも、かなり縮まってきています」。こう述べるのは、ミネアポリスのブライトン・キャピタル・マネジメントでプリンシパルを務めるデイビッド・フェーラン氏だ。同氏は次のように説明する。「先物オプションは、より良いツール、週次・短期オプションといった新商品、そして優れた流動性とレバレッジを提供し続ける市場を通じて、より多くのトレーダーにとって魅力的な商品になりました」

立会場に起源を持つツール
近年の洗練された分析ツールが立会場で誕生したという事実は、それほど驚きではないだろう。

ニック・ハワード氏は、CMEグループの立会場で取引を始める前の4年間、ソフトウェア開発者として働いていた。市場とトレーディングに興味を惹かれたハワード氏は、オプション取引のクラーク(係員)としてオコナー&アソシエーツ社に就職し、その後はユーロドルの立会場でマーケットメーカーやローカル(取引所会員)としてトレーディングに従事した。そして間もなく、自分が持つ二つの能力――トレーディングとソフトウェア開発――を融合できる機会に恵まれた。

立会場のフロアブローカーは、1991年に、オプションの価格データをExcelのスプレッドシートにまとめるようハワード氏に依頼した。同氏はExcelの機能を使い、オプションの価格形成、ギリシャ指標、そしてボラティリティ曲線を容易に計算し、視覚的に表示することができた。このExcelを用いた価格分析は、たちまちフロアブローカーの間で人気となり、オプションの分析ツールは飛ぶように売れた。

ハワード氏はこう説明する。「そのツールはブローカーのために開発したもので、彼らが立会場でより良い仕事をするのに役立ちました。それは容易に使うことができ、すぐに取引に活かせるものでした」

そして2004年には、このオプション分析ツールをインターネットにも対応させてほしいと、顧客の一人がハワード氏に依頼した。こうして誕生したオンライン版のツールは、その後も発展を続け、今では70以上の国々で利用されている数十種のツール群へと成長を遂げた。

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ハワード氏は立会場での仕事を7年続けた後、再びソフトウェア開発へと職を転じ、QuikStrikeの元となるツールをバンティックス・ テクノロジーズ(Bantix Technologies LLC)のために開発した。同社はシカゴを拠点とするソフトウェア開発・コンサルタント会社で、先物やオプションの分析ツールを提供している。QuikStrikeは現在、オプション市場のブローカーやトレーダーの間でもっとも広く利用されている分析プラットフォームの一つとなっている。

シグマ・アメリカズ(Sigma Americas LLC)のディレクターであるマイク・リフィス氏は、ハワード氏が初期に開発したExcelツールの利用者の一人であり、現在もその発展版であるQuikStrikeを利用している。リフィス氏によると、このツールが提供する大きな利点の一つは、先物オプション市場での「仮定シナリオ」を計算できる点にある。

「オプションの現時点での状況に加えて、時間とともにどう変化するかということが視覚的にわかります。このツールを使えば、様々なシナリオを分析することができます」と、同氏は語る。

オプション取引を視覚化する
今日のトレーディングで分析ツールが中心的な役割を果たすようになったのは、立会場から電子市場へと取引の場が移ったことにも関係している。これは、単に利便性の問題だけではない。取引の電子化によって、トレーダーは今までにない方法で市場を分析できるようになった。

CMEグループのプロダクト・マネージャーを務めるカリック・ピアースは、こう説明する。「オプション取引で成果を上げるためには、オプションの市況を迅速に把握しなければなりません。QuikStrikeのツール群は、先物オプションの構成要素である複合的な変数を視覚的に分析することができます」

換言すると、QuikStrikeの優位性は「情報の量」ではなく、情報をどのように集め、それを「どう表示するか」という点にある。

「情報が手に入ったとしても、それが理解され、活用できるものとして、すべての人に提供されているとはかぎりません」と、ハワード氏は説明する。

同氏は立会場で過ごした長年の経験から、トレーダーが必要としている情報が何かを学び、データをグラフ形式で配信するツールを開発した。

「今後数年間の私たちの目標は、より視覚的な方法でもっと多くの情報を提供できるように努め、人々が取引の判断をより容易に行えるようにすることです」と、ハワード氏は話す。

ブライトン・キャピタル・マネジメントのフェーラン氏は、すでに3年間にわたってQuikStrikeを利用しており、機能の増加とともに利用の幅をますます広げている。

その理由について、同氏はこう説明する。「弊社では当初、一日の終わりに一度だけQuikStrikeを使っていました。現在では貴重な情報源として、立会時間の最中や、アフターアワー(立会時間後の取引)の分析にも利用しています。このツールを使い始めてからは、より適切な情報を元に判断が下せるようになり、スプレッドシートにオプションのデータを流し込むためのAPIも不要になりました」

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QuikStrikeは、CMEグループのプラットフォーム上で3年前から利用できるようになっている。ピアース氏はCMEの市場参加者向けに提供されている無数のQuikStrikeツールを指差し、次のように説明する。「ユーザーはこれらのツールを通じて、市場で起きていることをより良く理解し、特定の商品についての自信を深めることができます。また、建玉を保有する際の障害を取り除くことにも役立ちます」


金融サービスはクラウドへの準備ができているか?

cloud ready

2016年8月2日 || Peter Shadbolt

コストの削減や開発期間の短縮といった効果を持つクラウドは、あらゆる人にとってメリットがあるように見える。

これまでは数ヶ月間を要したインフラの構築も、今ではほんの数分間で行うことができる。

「こうした変化のことを、多くの人は第4次産業革命と呼んでいます」。最近ロンドンで開催されたTech Talk 5.0でこのように述べたのは、アマゾン・ウェブサービスで国際金融サービス業務部門の代表を務めるスコット・マリンズ氏だ。「世界はすでに新しい領域に入っており、テクノロジーの導入や配備についても同様のことが言えます」と、同氏は指摘する。

ビッグデータからモバイルデータのマイニング、リスク分析からデリバティブ取引に至るまで、クラウドが金融のプラットフォームを一変させている。

マリンズ氏は次のように説明する。「私たちの金融サービスの顧客は、主に2つの理由からアマゾン・ウェブサービス(AWS)に乗り換えています。一つは、IT業務をクラウドにアウトソーシングすることで、テクノロジーの管理から解放され、自社のビジネスに専念できるという分業化の効果です。

もう一つは、事業の根幹に関わる理由です。大手金融機関は、法令遵守の厳格化に伴うコストの増加や、頭打ちとなっている収益環境に対応するために、より良い経済性を求めてクラウドに乗り換えてきています」

クラウドの導入が加速する中、規制当局も「クラウド型」の未来に備えている。

参照:Tech Talk 5.0でのクラウドに関する議論

英国の金融監督機関(FCA)が最近発表した声明は、銀行や保険会社などの金融サービスがクラウドに移行することを後押しするものであった。

FCAの声明は、「しかるべき検討とともに、(公共のものを含む)クラウドサービスが私たちの規則に沿った形で実行できないという、根本的な理由はない」と述べている。

英国のクラウド産業フォーラムは、マイクロソフト、シスコ、デルといった大手のベンダーや小規模の会社を含む45の事業者から成る団体であり、クラウドの現況を調べることを目的として、英国内の250社を対象に一年毎の調査を実施している。

同団体のCEOであるアレックス・ヒルトン氏は、次のように説明する。「本年の調査結果の要点は、78%の機関がクラウドを利用しているという事実です。そのうち75%は、この先の一年間にクラウドの配備を拡大することを計画しています」

この調査はさらに、これらの機関がより広範なタスクにクラウドを用いるようになっており、クラウドへの信頼が高まっていることを顕著に示している。

また、ハイブリッドクラウド――オンプレミス(自社設備への導入)とサードパーティのクラウドサービスを組み合わせたもの――が示す統計は、クラウドサービスの今後の方向性を明確に物語っていると、ヒルトン氏は指摘する。

クラウド産業フォーラムが1年前に実施した調査では、55%の機関がハイブリッドクラウドによるIT業務の運営を計画していた。しかし、最も新しい調査では、その割合が37%まで低下している。

「ここでのポイントは、全てをクラウドで運用する“クラウドオンリー”へと舵を切る方策です。IT基盤をクラウドオンリーで整備したいという願望が、機関の間で顕著に見られます」と、ヒルトン氏は説明する。

同氏によれば、金融サービス業は規制問題(特に治外法権に関する問題)に直面するリスクがあり、旧来からの統合問題に経営陣が頭をかかえる中、多くの英国企業は変化を熱望するようになっている。

最も重要な質問
クラウドは、企業がこれまでITに投資してきた巨額の予算を侵食することになるかもしれない。しかし、依然として導入の妨げになっている主要因の一つが、セキュリティの問題だ。

マリンズ氏は、潜在的な顧客からクラウドについての問い合わせを受ける際に、最も多く聞かれる質問がセキュリティ関連であることをTech Talkで語った。実際のところ、これらは認識の問題であることが多いと同氏は指摘する。

「もしあなたがリスク回避を望むビジネスオーナーであるなら、クラウドを利用することの安全性について漠然とした疑問を持たれるかもしれません」

「一方、同じ企業のITセキュリティ部門、第三者監督部門、または内部監査部門の担当者であれば、AWSクラウドのセキュリティ構造を理解した上で、セキュリティの義務を履行するためにクラウドが果たす役割について、より強い確信を持つことができるでしょう」とマリンズ氏は述べる。

同氏によると、寄せられる質問の内容は目まぐるしく変わっているという。

「規制の順守に関する話題が引き続き主要なテーマですが、『クラウドの導入を支援してくれる有能な人物はどこで見つかりますか?』という質問がより多く寄せられるようになっています。クラウドの包括的なスキルに対する需要は、今日の市場で指数関数的に高まっています」

セキュリティの侵害やITの外部委託管理による影響、またはデータの物理的な保管場所に関する規制当局からの警告などは、企業の評判を揺るがしかねない。こうした懸念は、潜在的な顧客がクラウドの導入を断念する理由にもなっている。

クラウド産業フォーラムは、セキュリティ侵害に関する直接的なアンケートを実施している。ヒルトン氏によれば、現実にセキュリティの過誤が生じたことを示す確たる証拠は、稀にしか見られないという。

同氏はこう説明する。「その割合は非常に低く、1%から2%程度に収まる傾向があります。多くの場合、(クラウドを通じて)より堅牢なテクノロジーになると考えられます」

法域を越えて移動するデータ
テクノロジーの問題に加えて、法令遵守の課題も残る。

CMEグループのマーケット・テクノロジー/データサービス部門でマネージングディレクターを務めるクレーグ・モーハンは、Tech Talkの会合の中で、データが法域を越えて移動することについて業界は注意すべきであると語った。

「個人情報の保護規定はどうなっているか? 州、国または地域によって、それはどう異なるか? あるデータの取り扱いで、私たちに許可されていることは何か? こうした検討課題は、従来は考慮する必要のないものでしたが、現在は避けて通ることができません」

しかし、クラウドが生み出した問題は、最終的にはクラウド自身によって、他のどんなテクノロジーよりも優れた解決策がもたらされるだろう。

BMLLテクノロジーズの最高技術責任者(CTO)であるスティーブ・ホールデン氏は、Tech Talkで次のように述べた。「クラウドの普及により、クラウド自身が法令遵守を支援するための有効な手段になりました。データの所在地は、今後の5年間で私たちが取り組まなければならない最も重要な法令遵守の一端となるでしょう」。




次世代金融データの到来

next gen

2016年7月29日 || Peter Shadbolt

ビッグ・データ分析に関しては、その規模と奥行と言う点で、マスタ―カードに勝る会社はないだろう。

この金融サービス会社のクレジットカードは、世界で23億枚が発行されており、205ヶ国の3800万に及ぶ加盟店で、1時間に平均で1憶6000万回の取引が行われている。

7月に開催されたCME Groupの「テックトーク5.0: 次世代金融テクノロジー」では、マスタ―カードのグローバル・パートナーシップ&事業開発部門でシニア・バイスプレジデントを務めるデビッド・リッチ氏が、大量のデータから有意義な結論を浮かび上がらせるには、同じく大量のプロセスが必要となる、というテーマを展開した。

「取引の報告が入る毎に処理が行われる」としたリッチ氏は、「処理とは、その取引におよそ190万のルールとアルゴリズムを適用し、その意味をくみ取る事」、と説明した。

この取引処理を長年続けているマスタ―カードでは、データの洗浄、標準化を通じて、過去40年に渡る変化の眺望を可能にしている。

ただ、業務の中心テーマとしてリッチ氏が強調したのは、個人情報の保護だった。

「データを扱う場合の基本デザインの一環として、個人情報の保護がある」として、「個人情報の保護を前提とした上で、大規模なデータ分析は可能となる。そうすることで、情報の詳細レベルとは無関係に、データに関して非常に高レベルの分析を実行することが出来る」、と話した。

実際、データ分析は多くの業界で行われていて、マスタ―カードは、グローバル・リテーラーの100社中44社、大手レストラン15社中10社、そして25社の大手ホテルチェーン中10社と業務契約を結んでいる。

リッチ氏によると、データの収集方法によっては、顧客動向のトレンドをリアルタイムで分析することも可能だと言う。
「これは、マクロ経済の観点から景気予測をする上で、非常に重要となる」と話す氏は、場合によっては数か月後となるなど、米国商務省が発表するデータが現実から大幅に遅行することを指摘している。

「例えば、ガソリン消費について考えるなら、ガソリン価格の下落によって発生した可処分所得の上昇が、必ずしも小売売上に反映されていないことが分かる」、としたリッチ氏は、

「リアルタイム分析なら、この事実を指標発表の前に把握することが出来る」、と話した。

金融とAI(人工知能)
スパークコグニション社はテキサス州オースティンの新興会社で、次世代の自動制御型データ分析を研究している。

アミア・フセインCEOは前述のテックトークで、多様で不規則なデータから、変則的なパターンを認識する同社の金融プラットフォームについて講演した。

氏は、「上手くいくこと、それも非常に上手くいくことが証明されている」として、「我社の顧客数は、世界的に有名な数社を含めて、40社に達している」、と話した。

現在、風力タービンからポンプまで、業界に多様なアプリケーションを提供する一方で、スパークコグニション社のプラットフォームは、機器の障害発生予想を、人の手を介したモデルによる5時間前から、自動型制御モデルで5日前にまで前倒しすることに成功している。

氏はさらに、こうしたモデルは、金融サービで取り入れられるべき段階に達しているとも考えている。

「これまでは機器が対象であり、金融市場とは別世界であるとの見方がある。ただ、数学的には、両者の共通性は多く存在する」、と氏は指摘した。
AIモデルについて氏は、その処理能力の規模に加えて言葉のニュアンスを理解する水準に達していることから、人間の手を介したモデルを超える能力を有している、と考えている。

そして、「という事は、AIサービスの理解力は、ほとんど人間と同格な水準に達していることになる」、と付け加えている。
「優秀なトレーダーは相場に対する感があると言うが、その感とは何だろうか? それは、匂いや味、見かけなどから、そのトレーダーの神経回路に刻み込まれた過去のパターンが想起される状態のこと」、とする氏は、

「こうした側面や数学的知識、さらに言葉の理解が加味されることで、金融データからの価値生産を、さらに一般化することが可能になっている」、と指摘している。


ブロックチェーンを超えた電子決済へ

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2016年7月28日 || Peter Shadbolt

もしもタイムマシンがあれば、1900年ごろに飛んで、ロンドンの波止場を見に行くとよい。いろいろな形や大きさの貨物を(樽、茶箱、梱包など、船蔵に収まるものなら何であれ)積み降ろしている荷役労働者でごったがえした光景を目にするだろう。

そして、それから50年。貨物の世界に革命が起こった。コンテナ輸送の登場である。標準化された箱が、かつての半数にも満たない人的資源で、自動的に積み降ろしされるようになったのだ。

リップル社で戦略的顧客管理のグローバルヘッドを務めるマーカス・トリーチャーは、今まさにこうした革命に差し掛かっているのが「国際決済システム」だと語る。

「多くのエコノミストが指摘しているように、1950年から2000年にかけて世界貿易が7倍に拡大したのは、この非常に単純ながら創造的な革新のおかげでした。その観点から国際決済を見てみると、1900年ごろの世界貿易と非常に似通っているといえるのです」

「国境を越えたおカネのやり取りは、ほとんど標準化されていません。各国内でそれぞれの法定通貨がやり取りされているのに比べれば、はるかに面倒で困難です」

前の記事「価値のインターネット化」と 決済システム」でも触れたように、トリーチャーはロンドンで開催された「CME Group’s Tech Talk 5.0で、今企業が求めている決済システムについて述べている。それは、即時性があり、膨大な金額を僅少なコストでやり取りできるものだ。また運営管理が正確かつ簡単にできなければならない。

「アマゾン、ウーバー、アリペイなど、デジタル関連で成長している新興産業は、既存のサービスよりも、はるかに低いコストで、はるかに大きな金額で、はるかに大量の国際決済システムを求めています」

関連記事「価値のインターネット化」と 決済システム


ビットコイン取引のパブリックレジャー(公開台帳)であるブロックチェーンは、国際決済のひとつの解決策を提示している。しかし、トリーチャーは「それはまだ道半ばにすぎない」という。

「まさに21世紀ならではの世界的な資金移動の方法を創造するには、ブロックチェーンで十分に適応するといえません。ブロックチェーンの思想と技術をかなり違ったやり方で応用する必要があるのです」

現在、リップル社が取り組んでいるのは「インターレジャー(中間台帳)」の概念である。標準化されたプロトコルを使って双方の台帳をつなげるという発想だ。それはブロックチェーンの分散型台帳と暗号技術の思想を多分に取り入れているものの、その処理で国際決済と銀行をつなげている単一のブロックチェーンに集中せずに済む。

「私たちがやりたかったのは、銀行を直接的に、ただし中央集権的なものは何も存在することなしに、つなげることでした。ブロックチェーンを超える必要があったのです」(トリーチャー)

リップル社では、このシステムには資金移動の開放と民主化をもたらす可能性があると考えている。

「25億の人々が銀行システムから排除されています。インターレジャーが連結したシステムによって、この人たちが、その世界と極めて簡単につながりを持てるのです」



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