中国にはナゼ、近代的な先物市場が必要なのか

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著:レオ・メラメド、2016年12月20日

数世紀の歴史を有する先物市場であるが、CMEグループが金融先物を上昇するなど、世界の金融センターに取り入れられる結果になった近代的な市場モデルが登場したのは、1970年代以降のことである。そして、その後の成功で重要だったのは、ほとんど同時期に始まった技術革新だった。

テクノロジーの進展が、投資科学に金融リスクの基本要素の発見をもたらしたのである。そこから、金融工学によってリスクは細分化され、再構築され、収益見通しに従って再配分することが可能になったのである。パッケージ化されたリスクと収益機会は、投資家の選択に従って、より好ましい投資機会と交換することが容易になったのである。

中国では今世紀初めにCSRC(中国証券監督管理委員会)が設立されたのに続いて、その監督規制の下に、SHFE(上海期貨交易所)、DCE(大連商品交易所), ZCE(鄭州商品交易所)が、それぞれ異なった商品クラスの取引を開始させた。ただ、中国の金融先物市場への参入は、市場で人気を博している上海総合株価指数(CSI 300)の先物を上場したCFFEX (中国金融先物取引所)が、2006年に設立されてからのことになる。そしてCFFEXは、予想以上の売買高に裏打ちされ、初日から成功を収める結果になった。中国でのこうした先物市場の開発や継続的な発展の過程では、CMEも援助や助言を提供してきている。

しかしながら、中国のこれら4つの取引所は現在、成功している一方で、同様の問題を抱えてもいる。取引参加者の主体が国内投資家であり、海外からの参加がほとんどないことである。多くの商品の主要輸入国である中国の先物市場は、グローバルな価格発見機能の主要な役割を負うべきであるが、実際はそうなっていない。中国の先物市場が国境を超えたものにならない限り、中国経済における先物市場の恩恵は、これからも限定的な水準に留まり続けることになる。

中国はまた、経済成長においても過渡期的な段階を迎えている。政府は、輸出主導の製造業経済から個人消費が主導する、国内経済の成長に依存する経済モデルへの移行方針を明らかにしている。そして、この移行が進められるに従い、商品や金融において、価格発見の役割を理解することが重要となってくる。

価格発見の役割は、どの時点においても公平で合理的な価格を設定するだけではない。価格発見は、例えば自然発生する価格の変動を管理する効果を背景に、長期的には資源の効率的な配分に資するのである。価格発見の機能を高める市場参加者の多様性など、効率的に構築された市場であれば、価格発見とリスク管理が連動し、経済成長を利する形で希少な資源を配分するプロセスが機能し易くなる。さらに中国は、その輝かしい経済成長と近代化の歴史を背景に、効率的な価格発見を強調した、近代的な市場システムを構築する機会に恵まれている。例えば、何層にも及ぶ複雑で非効率な規制など、米国や欧州、日本の過ちから十分に学ぶことが出来るのである。

ここで、具体的な例を考えてみたい。米国では最近、感謝祭の祝日を迎えたばかりなので、この祝日で食されることが多い七面鳥を例に考えてみる。例えば、七面鳥料理をレストランで楽しむ人がいる。一方、レストランとしては、過去の経験などから七面鳥料理の需要を考慮した上で事前にこれを仕入れ、ある程度の期間、保存しておく必要がある。もちろん、それ以前には農家があって、感謝祭シーズンに合わせて、七面鳥を飼育している。農家から食肉処理施設まで、さらに施設からレストランまで、七面鳥を輸送するコストも考慮されなければならい。こうした過程には、周到な計画と燃料、保管などのコストが関わっている。ある時点のレストランのメニューで、七面鳥料理がいくらかと言う話ではもはやないのである。ここで考慮されるべきなのは、想定される生産コストや、連結する各経済プロセスにおける時間軸なのである。

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CMEグループなどの近代的な市場は、グローバルな市場参加者のアクセスを確保するため、テクノロジーに依存している

先々での引き渡し価格を確定し、穀物をフォワードで売ることが出来ることで、生産者は飼料や燃料などを長期契約で仕入れることが可能になる。生産者は、金融コストと将来的なリスクに対する管理能力を向上させたのである。さらに、将来的な穀物価格、エネルギー価格の動向、金融コストなどに関するリスクを移管したことで、生産者は効率的な生産に集中できる。

この概念は、七面鳥の飼育農家であっても、食肉処理施設、輸送サービス、レストランでも同様なのであって、それは原油、鉄鉱石、そして英ポンドでも同じなのである。先々での価格変化を管理するために今、現在において存在する具体的な価格は、こうしたリスクの管理をアウトソースすることで、例えば企業では、将来的な売り上げや収益を平均化することで、ビジネスを小資本で展開できる可能性も出てくる。経済活動において現実的に発生するこうした有利性は、経済上の利益として具体的に証明できないからと言って、その貢献が不明確になったり、減じられたりされるべきものではない。

例えば、メキシコは先ごろ、原油価格をヘッジしていたことで、2016年に29億ドルの収益が発生すると発表している。原油価格が急落と低迷を続けるなか、IMF(国際通貨基金)によると、2年続けて利益を記録することになるとされている。

堅牢な価格発見プロセスは、生産者、消費者、リスク・テイカーなど、多様な参加者による積極的な取引によって構築される。もちろん、そこには、価格情報の開示に関する透明性が前提として存在する。スポット市場とフォワード市場を連動させ、その恩恵をフルに実現するためには、価格発見における堅牢なプロセスが不可欠なのである。そのためには、参加者の多様性だけでは不十分なのであり、市場価格の透明性を維持するための規制当局による監視も、重要な要素となる。

信頼性に欠ける市場に、堅牢な価格発見を期待するのは無理なのである。従って、価格発見プロセスにおける透明性は、信用と信頼性を築く上で不可欠な要素であり、これが意味するのは市場の幅である。商品や金融など、多くのプロダクトにおいて、幅とは、ローカル市場とグローバル市場の連動性である。もしも、国内市場をグローバル市場の影響から隔離する方策が採られるなら、ここでの価格発見は堅牢とは言えないだろうし、資源配分の決定要素として用いることはできないだろう。結果として、こうしたローカル価格はグルーバル市場の価格から乖離し、国内の消費者や生産者は、彼らが有する影響力を国際価格に反映することが出来なくなる。

国内市場と国際市場がリンクすることなしに、中国市場の価格発見プロセスが、商品や金融などの資源を適切に配分するためのインセンティブとなるとは思えない。国際市場へのリンクに関しては、中国の場合、人民元の国際化も、次のステップとして重要な案件である。これが実現するまで、中国における価格発見は構造的な問題を抱え続けることになる。

最後に、市場の完全性維持を担保した上で、そして改革のスピードを鈍化させない範囲で、金融市場改革をリードする規制環境を構築するという課題がある。国際標準となっている規制レベルが導入されるべきであり、市場の法治化も必要となる。そして、中国はこうした課題に向けて、達成レベルを高めている。その意味では、何層にも及ぶ不必要な規制によって、改革が混乱に陥ったり、経済成長を妨げる要因になったりした米国や欧州、日本の過ちを回避できる可能性が高い。

参入障壁を排除することで国内市場とグローバル市場をリンクさせ、全ての経済プロセスの時間軸に影響を与える金利規制を解除し、国際水準の市場規制を取り入れ、RMBの兌換性を高め、スポット(現物)市場の流動性向上を支援するため先物やオプションのプロダクト改革を支援する。こうしたことによって、価格発見プロセスが改善する。現状は中国にとって、その経済的恩恵を現実のものにする好機であると言える。

本稿は、2016年11月28日に中国の北京で開催された国際諮問委員会(International Advisory Council)におけるレオ・メラメドのスピーチを基にしたものである。


ユーロドル金利先物:グローバル資金流動のバロメーター

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著: Kira Brecht、2016年12月14日

このシリーズでは、過去150年超にわたる先物市場の発展の中で開発された、画期的なプロダクトに焦点を当てていく。そして本稿は、このシリーズの最初を飾るプロダクトを取り上げる。

ユーロドル金利先物は1981年12月の上場以来、他商品の追随を許さない程の成功を収めたプロダクトである。世界中で、最も活発に取引されている先物商品の1つなのである。

平均的な投資家のユーロ市場に関する理解はあまり深くないかもしれないが、この原市場は、金融機関の資金調達や債務構造における重要な構成要素となっている。

CMEグループの金融リサーチ/商品開発部門でエグザクティブ・ダイレクターを務めるフレッド・スタームは、ユーロドル金利先物が「世界最大規模の市場流動性」を誇るプロダクトの1つだと明言する。

ユーロドル金利市場の動向はまた、世界的な資本移動、与信需要、金利見通しに関する洞察を与えてくれる。世界を動かしているのが資本だとすれば、スタームは「そのコスト」の指針として捉えられるのがユーロドル金利先物市場だと指摘する。

さて、こうした事実は、銀行融資とは無縁の人々に、どう関係するのだろうか?ポイントは、資金の流れである。

CMEグループの金利プロダクト部門でトップを務めるアグハ・ミルザは、企業、政府、個人、いずれも借り入れに依存していることを指摘する。その上で、「この世界を動かしているのは、膨大な額の資金の貸し借りなのです。こうした資金の動きは、経済活動のエンジン役として、現代社会で必要不可欠な役割を担っているのです。ユーロドル金利先物は数十年にわたり、金利リスクのヘッジ・ツールとして、主導的な役割を果たしてきました。そしてそれは現在、これまで以上に、重要な役割となっているのです」と解説する。

ユーロドル金利先物の主要ユーザーは、資産管理業者、企業の財務担当者、ヘッジ・ファンド、住宅ローン会社、自己取引業者など、短期金利の変動リスクに晒されている人たちである。CMEグループのスタームは、「一般的な米ドル建て無担保ローンのコストに関して、ユーロドル金利先物は事実上の標準尺度となっている」と説明する。

ここで、例を挙げてみよう。ある企業が、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)にその企業の与信リスクを反映したプレミアムを加算した金利で、銀行ローンを設定したとする。ローンが実行されるまでの間、この企業は市場金利の上昇リスクを抱えることになるが、ユーロドル金利先物を売ることで、このリスクをヘッジすることができる。

ユーロドル金利先物の最終清算価格は、当月の取引最終日における3か月物LIBORを参照した上で決定される。従って、ユーロドル金利先物の相場動向は、先々のLIBORに関する知的資金運用者の見方を、垣間見せてくれていることにもなる。

隆盛を続ける市場

CMEでは、ユーロドル金利先物が、最大の建玉枚数と共に、日中平均の売買高で他のプロダクトを凌ぐ存在となっている。11月末時点における総建玉の想定規模は、12兆8400万ドルに達している。

ユーロドル金利先物はまた、金利スワップ取引、一般や住宅向けローンなどで、ヘッジ・ツールとして活用されている。CMEのミルザはこの先物の特徴として、1)高市場流動性、2)市場参加者の多様性、3)多岐に及ぶ利用範囲、4)金利スワップなどの代替え取引に比べて資金効率が高い、等の利点を挙げている。

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FXではないユーロドル

ユーロドルとは言っても、もちろんFX市場の通貨ペアのことではない。ロンドンからリオデジャネイロ、東京まで、米国以外で取引される米ドル建て銀行預金は全て、ユーロ(市場の)ドルと呼ばれる。

こうしたユーロドルの3か月物銀行預金金利を原市場として、ユーロドル金利先物はデザインされている。

1950年代から60年代に、ユーロドルは国際政治の緊張を背景として誕生・発展した。当時、東ヨーロッパの傀儡諸国群との関係を強めていたソビエト連邦は、中国と同様に、冷戦の進展に伴って、ニューヨークの銀行にある自国の米ドル資金が米国によって凍結される可能性を懸念していたのである。

現金決済の登場

1980年までに、金、通貨, 政府短期証券(Tビル)などの金融先物の売買高は、取引所の歴史上始めて、農産物先物を超えるまでになっていた。

CMEのレオ・メラメド名誉会長は当初、全世界的に取引されている米ドルの短期金利という、巨大グローバル市場に次の商品開発の標準を合わせていた。結果的に、これがユーロドル金利先物の出発点となった。

CMEでエコノミストを務めていたフレッド・アーディッティは、ユーロドル金利先物という市場を定義し、開発する上で、主要な役割を演じた一人である。この新規先物プロダクトに関しては、差金決済という概念を商品デザインの一部として取り入れることが、大きな課題になると懸念されていた。米国では当時、先物のほとんどが最終的に現引きで決済され、差金決済は稀だったからである。Tビル先物やCD(譲渡性預金)先物など、当時から売買高を集めていた金融商品であっても、現引きによる最終決済となっていた。スタームは、「アーディッティや彼のスタッフは、先物取引において差金決済がどの様に機能するのかを理解してもらうため、本当に骨を折っていた」と、当時を振り返る。

実際、CFTCによるユーロドル金利先物の上場承認を前に、世界の主要銀行へこのプロダクトを打診するため、アーディッティはロンドンに出張するなどしている。帰国後、彼は差金決済という概念を現実のものとするため、商品デザインの下書きを繰り返したのである。

今では電子取引されているユーロドル金利先物だが、当時は立会場取引の最盛期で、上場後には毎日、およそ1500人のトレーダーやクラークがピットでひしめき合い、活発な売買を重ねる状況となった。カラフルなトレーディング・ジャケットを着たブローカーやローカルのトレーダー、クラークやランナーによって、フットボール場ほどの広さがある立会場は埋め尽くされたのである。

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市場の現状

取引の活発さを表すものとして、金融危機を契機とした2008年からの実質的なゼロ金利環境を、ユーロドル金利先物のプロダクトグループが耐え抜いたことが挙げられる。この先物では、10年先までの限月が上場されていることから、取引参加者は金利リスクのヘッジ・ニーズに合わせて、取引を期近から期先限月に移行させたのである。

2008年には, ユーロドル金利先物における売買高の55%は、期近の4限月(直近の4つの四半期毎限月)から発生していた。スタームは、期先限月への取引シフトによって、2014年までに、期近限月の売買高が全体の25%を下回る水準に至ったことを指摘する。彼はまた、「市場の中心は、利回り曲線の先の方へ移行した。なぜなら、その時間軸では取引参加者の相場観に差異があり、売り買いを発生させることが可能だったから」とも説明している。

そして2016年の現在, 期近4限月で発生する売買高は再び増加していて、全体の40%ほどを占める状況となっている。

ユーロドル金利先物の重要な特性の1つは、豊富で継続的な市場流動性が、ほとんど1日を通じて提供されていること、とミルザは指摘する。彼はまた、市場規模、呼び値幅、売買高、建玉など、プロダクトの完成度を測る尺度は全て、ユーロドル金利先物の市場流動性が過去最高水準に近い状態であることを示していると話す。「数十年にわたって先物市場の主力プロダクトであり続けているユーロドル金利先物は今、これまでに増して取引参加者の期待を集めている」と、ミルザは見ている。

先物市場の偉大なプロダクトであるユーロドル金利先物は2017年、上場35周年を迎える。スタームは、ユーロドル金利先物が「アーディッティによる当初のデザインで想定された枠を超越した柔軟性を備えた」プロダクトであるとした上で、「2016年の今、かつてないほどの偉大さを誇るプロダクトとなっている。これこそは、驚くべき話ではないだろうか」として、現状に驚きを隠さない。



あまり聞かない 世界最大級の自由貿易協定

The Biggerst Free Trade Agreement

Peter Shadbolt 2016年9月30日

大規模な自由貿易協定(FTA)が続々と締結されている中にあって、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)については、メディアが紙面をあまり割かないし、デジタル世界での露出も限定的で、ニュースとして報じられる機会も乏しい。

しかしながら、議論があまり聞こえてこないこの貿易協定は、その規模という意味で、各段なサイズとなる。実際、年内に開催される閣僚会議を経て批准予定となっているRCEPは、世界最大規模の自由貿易協定 なのである。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)や、欧州と米国の間で交渉が政治的に泥沼化している、TTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)に比べ、RCEPの交渉はここまで、 比較的迅速に進められてきている

メルボルンのモナシュ大学で国際貿易法の講師をするジオバンニ・デ・リエト氏は、「TPPを知っていても、学者かこの分野の専門家でもない限り、RCEPを知っている人は少ないですね」と言う。

デ・リエト氏が、認知度の低さに「個人的には、驚愕せざるを得ない」とするRCEPは、ASEAN(東南アジア諸国連合)の10か国とASEANが貿易協定を結んでいる豪州、中国、インド、ニュージーランド、日本、韓国の6か国、総勢16か国が参加し、(世界の総人口の半数を超える)35億人、世界貿易量の40%を市場とする貿易協定なのである。

世界人口の11%、世界貿易量で25%を市場とするTPPを凌駕するものの、世界のGDPでは、TPPがその36%を市場とするのに対して、RCEPは29%となる。

ただ、ニュージーランドや日本、シンガポール、マレーシア、ブルネイ、ベトナムなど、TPPとRCEPの両方に調印している国々では、このアジアを中心とした経済パートナーシップへの集中度が高まりを見せ始めている。

デ・リエト氏は、「TPPについては、日本までもが、発効は難しいと考えています。一方で、地球のこちら側では、インドが主要な参加国となり、協定の魅力がこれまで以上に高められていることから、RCEPの方がTPPよりも政治的牽引力が強いのです」と説明する。

伝統的に国内市場の保護を優先させてきたインドと自由貿易協定を締結するということは、アジア地域の貿易が新しい時代に入ったことを象徴する出来事となる、とデ・リエト氏は付け加えてもいる。

「米国は数年にわたって、インドと投資貿易協定の交渉を続けてきました。ただ、二ヶ国間の溝は埋まりませんでした」と話すデ・リエト氏は、豪州やカナダなどは、米国がこの交渉を進展させるのを待ち望んでいたことを付け加える。実際には、こうした国々はその後、それぞれがインドとの自由貿易協定を独自に締結する結果となっている。

そしてRCEPでは、例えば豪州の酪農品など、これまで進展が難しかった協定上の課題が解決されると期待されている。

デ・リエト氏は、「米国モデルは概して資産をベースとしたものであり、金融市場の規制が緩いものでした。一方でインド・モデルは、出資法などによる事業をベースにしたものでした。両者は、相反するモデルを使っていたのです」と説明する。

貿易や投資に関しては、歴史的に中国の方が御しやすい存在だったと言える。ただ、資金フローを活性化したいインドが、国内産業の防波堤となっている関税に手を加える意思を固めてきている、とデ・リエト氏は指摘する。

インドでの状況変化
パートナーシップの複層構造を求めていたインドは最近、単一層を受け入れる代わりに海外からの直接投資のさらなる拡大を求めるなど、この点に関して柔軟に対応する方針を示唆している。

もちろん、インド国内には、RCEP懐疑派も存在する。ただ、国内議論が、政治よりも経済優先で進められているのも事実である。

デ・リエト氏は、「現状の議論は、民主主義的なプロセスを重視すると言うよりも、インド経済の競争力であり、これに関する脆弱さがその中心となっています」と指摘する。

さらに、オーストラリア国立大学(Crawford School of Economics and Government)の経済学部名誉教授、ピーター・ドライスデール氏は、インドでのこうした状況変化が、RCEPの勢いを加速させる背景になっていると考えている。

ドライスデール氏は、「RCEPは実現しない、という様な否定的な雑音も確かに、当初は聞かれました。そして、インドがこうした動きの先頭に立っていたのも事実です。ただ、RCEPの交渉にそれが表れてくるまで時間がかかったものの、インドの指導層においては、戦略方針の大きな変更が成されたのです」と指摘する。

RCEPの交渉では、中国も中心的な役割を果たしてきた。そして、この自由貿易協定によって中国は、地域の国々との間に抱える政治的な課題のいくつかを進展させられると考えている。

「しかしながら実際には、有効な形でこの協定をまとめるには、もっとプレーヤーが必要なのです」と話すドライスデール氏は、「その意味で、東南アジアで不可欠なのは、ジョコ・ウィドド大統領が就任して以来、貿易政策に関する指針が定まらない、インドネシアだと考えています」と言う。

主体的な貿易相手である地域とのRCEP締結に向けて、豪州やニュージーランドが積極的な姿勢を見せる一方、この協定の批准に向けた動きが緩慢なのは日本である。

ドライスデール氏は、「TPPの決着を優先事項としている日本は、RCEPに関する動きが手控え気味となっています」と指摘する。

「ただ、最近では、日本も作業を加速させて来ています。したがって、RCEPが批准される可能性が高まり、それと同時に、中国やインドに加えて東南アジアの国々、さらに日本などが、供給サイドの改革を進めようとする強い意志を形成する背景ともなっているのです」

改革の手段
国内経済の改革手段として、RCEPが寄与するという見方もある。特に、労働市場や海外投資家の市場アクセスという分野で、改革が遅れていたインドの場合はそうである。実際、インドにおけるこうした分野の改革は、国際的に自国市場を開放するため、事前に必要な条件であるとされてきた。

ドライスデール氏は、「単なる国境を超える取引に関する協定ではないRCEPは、こうした課題のいくつかに対応することになります」とした上で、「これまで東アジア地域で締結されたどの自由貿易協定よりも、RCEPはサービスにその重点が置かれています」と指摘する。

アジアで最も保護されてきた経済における変化が緩慢であるとしても、RCEPを背景に、インドの様な大規模経済が国内改革の課題への対応に前向きな姿勢を示しているという事実は、この自由貿易協定の交渉に、より肯定的な状況変化をもたらしていると考えられる。

インドがこれまで取りまとめてきた自由貿易協定は、後ろ向きであり、相互の譲歩を基本としたものであり、インド経済の開放に向けた戦略に乏しいものだった。ただ、それは今や過去のものである。ドライスデール氏は、「この戦略変更によって、状況は大きく変わるでしょう。しかし、タンカーの様な大型船の方向転換には、時間を要するのが常です」と付け加える。


オプション取引のデータ出力

options data dump

2016年8月16日 || Kira Brecht

投資戦略研究を専門とする米TABBグループが2年前に作成したレポートには、先物オプションの取引が間もなく拡大する見込みであると記述されていた。この分析は、まさに未来を予見するものであった。CMEグループで売買されたオプションの出来高は、昨年一年間で18%の増加を記録。過去5年の期間で見れば、出来高の増加率は68%に上る。

市場のボラティリティ水準が全般的に上昇していることや、FRB(米連邦準備理事会)の金融政策に伴う不確実性など、様々なマクロ要因によって先物オプションの売買が活発化している。

しかし、より大きな要因は、おそらく技術的な変化であろう。オプションの取扱商品は数年前に比べて増加し、市場参加者の多様性も増した。そして何より、オプションの電子取引へのアクセスが改善されたことが、市場に大きな変化をもたらした。

民主化するオプション取引
取引の電子化に伴う副産物として、オプションの価格やインプライド・ボラティリティを評価するためのデータ分析ツールが生み出された。こうしたツールの出現により、オプションの売買プロセスが様々な面で民主化され、従来に比べて容易にオプションを売買できるようになった。

「先物オプションの売買・分析ツールは、長い間、株式オプションのツールよりも劣っていました。幸いなことに、その差は完全ではなくとも、かなり縮まってきています」。こう述べるのは、ミネアポリスのブライトン・キャピタル・マネジメントでプリンシパルを務めるデイビッド・フェーラン氏だ。同氏は次のように説明する。「先物オプションは、より良いツール、週次・短期オプションといった新商品、そして優れた流動性とレバレッジを提供し続ける市場を通じて、より多くのトレーダーにとって魅力的な商品になりました」

立会場に起源を持つツール
近年の洗練された分析ツールが立会場で誕生したという事実は、それほど驚きではないだろう。

ニック・ハワード氏は、CMEグループの立会場で取引を始める前の4年間、ソフトウェア開発者として働いていた。市場とトレーディングに興味を惹かれたハワード氏は、オプション取引のクラーク(係員)としてオコナー&アソシエーツ社に就職し、その後はユーロドルの立会場でマーケットメーカーやローカル(取引所会員)としてトレーディングに従事した。そして間もなく、自分が持つ二つの能力――トレーディングとソフトウェア開発――を融合できる機会に恵まれた。

立会場のフロアブローカーは、1991年に、オプションの価格データをExcelのスプレッドシートにまとめるようハワード氏に依頼した。同氏はExcelの機能を使い、オプションの価格形成、ギリシャ指標、そしてボラティリティ曲線を容易に計算し、視覚的に表示することができた。このExcelを用いた価格分析は、たちまちフロアブローカーの間で人気となり、オプションの分析ツールは飛ぶように売れた。

ハワード氏はこう説明する。「そのツールはブローカーのために開発したもので、彼らが立会場でより良い仕事をするのに役立ちました。それは容易に使うことができ、すぐに取引に活かせるものでした」

そして2004年には、このオプション分析ツールをインターネットにも対応させてほしいと、顧客の一人がハワード氏に依頼した。こうして誕生したオンライン版のツールは、その後も発展を続け、今では70以上の国々で利用されている数十種のツール群へと成長を遂げた。

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ハワード氏は立会場での仕事を7年続けた後、再びソフトウェア開発へと職を転じ、QuikStrikeの元となるツールをバンティックス・ テクノロジーズ(Bantix Technologies LLC)のために開発した。同社はシカゴを拠点とするソフトウェア開発・コンサルタント会社で、先物やオプションの分析ツールを提供している。QuikStrikeは現在、オプション市場のブローカーやトレーダーの間でもっとも広く利用されている分析プラットフォームの一つとなっている。

シグマ・アメリカズ(Sigma Americas LLC)のディレクターであるマイク・リフィス氏は、ハワード氏が初期に開発したExcelツールの利用者の一人であり、現在もその発展版であるQuikStrikeを利用している。リフィス氏によると、このツールが提供する大きな利点の一つは、先物オプション市場での「仮定シナリオ」を計算できる点にある。

「オプションの現時点での状況に加えて、時間とともにどう変化するかということが視覚的にわかります。このツールを使えば、様々なシナリオを分析することができます」と、同氏は語る。

オプション取引を視覚化する
今日のトレーディングで分析ツールが中心的な役割を果たすようになったのは、立会場から電子市場へと取引の場が移ったことにも関係している。これは、単に利便性の問題だけではない。取引の電子化によって、トレーダーは今までにない方法で市場を分析できるようになった。

CMEグループのプロダクト・マネージャーを務めるカリック・ピアースは、こう説明する。「オプション取引で成果を上げるためには、オプションの市況を迅速に把握しなければなりません。QuikStrikeのツール群は、先物オプションの構成要素である複合的な変数を視覚的に分析することができます」

換言すると、QuikStrikeの優位性は「情報の量」ではなく、情報をどのように集め、それを「どう表示するか」という点にある。

「情報が手に入ったとしても、それが理解され、活用できるものとして、すべての人に提供されているとはかぎりません」と、ハワード氏は説明する。

同氏は立会場で過ごした長年の経験から、トレーダーが必要としている情報が何かを学び、データをグラフ形式で配信するツールを開発した。

「今後数年間の私たちの目標は、より視覚的な方法でもっと多くの情報を提供できるように努め、人々が取引の判断をより容易に行えるようにすることです」と、ハワード氏は話す。

ブライトン・キャピタル・マネジメントのフェーラン氏は、すでに3年間にわたってQuikStrikeを利用しており、機能の増加とともに利用の幅をますます広げている。

その理由について、同氏はこう説明する。「弊社では当初、一日の終わりに一度だけQuikStrikeを使っていました。現在では貴重な情報源として、立会時間の最中や、アフターアワー(立会時間後の取引)の分析にも利用しています。このツールを使い始めてからは、より適切な情報を元に判断が下せるようになり、スプレッドシートにオプションのデータを流し込むためのAPIも不要になりました」

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QuikStrikeは、CMEグループのプラットフォーム上で3年前から利用できるようになっている。ピアース氏はCMEの市場参加者向けに提供されている無数のQuikStrikeツールを指差し、次のように説明する。「ユーザーはこれらのツールを通じて、市場で起きていることをより良く理解し、特定の商品についての自信を深めることができます。また、建玉を保有する際の障害を取り除くことにも役立ちます」


金融サービスはクラウドへの準備ができているか?

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2016年8月2日 || Peter Shadbolt

コストの削減や開発期間の短縮といった効果を持つクラウドは、あらゆる人にとってメリットがあるように見える。

これまでは数ヶ月間を要したインフラの構築も、今ではほんの数分間で行うことができる。

「こうした変化のことを、多くの人は第4次産業革命と呼んでいます」。最近ロンドンで開催されたTech Talk 5.0でこのように述べたのは、アマゾン・ウェブサービスで国際金融サービス業務部門の代表を務めるスコット・マリンズ氏だ。「世界はすでに新しい領域に入っており、テクノロジーの導入や配備についても同様のことが言えます」と、同氏は指摘する。

ビッグデータからモバイルデータのマイニング、リスク分析からデリバティブ取引に至るまで、クラウドが金融のプラットフォームを一変させている。

マリンズ氏は次のように説明する。「私たちの金融サービスの顧客は、主に2つの理由からアマゾン・ウェブサービス(AWS)に乗り換えています。一つは、IT業務をクラウドにアウトソーシングすることで、テクノロジーの管理から解放され、自社のビジネスに専念できるという分業化の効果です。

もう一つは、事業の根幹に関わる理由です。大手金融機関は、法令遵守の厳格化に伴うコストの増加や、頭打ちとなっている収益環境に対応するために、より良い経済性を求めてクラウドに乗り換えてきています」

クラウドの導入が加速する中、規制当局も「クラウド型」の未来に備えている。

参照:Tech Talk 5.0でのクラウドに関する議論

英国の金融監督機関(FCA)が最近発表した声明は、銀行や保険会社などの金融サービスがクラウドに移行することを後押しするものであった。

FCAの声明は、「しかるべき検討とともに、(公共のものを含む)クラウドサービスが私たちの規則に沿った形で実行できないという、根本的な理由はない」と述べている。

英国のクラウド産業フォーラムは、マイクロソフト、シスコ、デルといった大手のベンダーや小規模の会社を含む45の事業者から成る団体であり、クラウドの現況を調べることを目的として、英国内の250社を対象に一年毎の調査を実施している。

同団体のCEOであるアレックス・ヒルトン氏は、次のように説明する。「本年の調査結果の要点は、78%の機関がクラウドを利用しているという事実です。そのうち75%は、この先の一年間にクラウドの配備を拡大することを計画しています」

この調査はさらに、これらの機関がより広範なタスクにクラウドを用いるようになっており、クラウドへの信頼が高まっていることを顕著に示している。

また、ハイブリッドクラウド――オンプレミス(自社設備への導入)とサードパーティのクラウドサービスを組み合わせたもの――が示す統計は、クラウドサービスの今後の方向性を明確に物語っていると、ヒルトン氏は指摘する。

クラウド産業フォーラムが1年前に実施した調査では、55%の機関がハイブリッドクラウドによるIT業務の運営を計画していた。しかし、最も新しい調査では、その割合が37%まで低下している。

「ここでのポイントは、全てをクラウドで運用する“クラウドオンリー”へと舵を切る方策です。IT基盤をクラウドオンリーで整備したいという願望が、機関の間で顕著に見られます」と、ヒルトン氏は説明する。

同氏によれば、金融サービス業は規制問題(特に治外法権に関する問題)に直面するリスクがあり、旧来からの統合問題に経営陣が頭をかかえる中、多くの英国企業は変化を熱望するようになっている。

最も重要な質問
クラウドは、企業がこれまでITに投資してきた巨額の予算を侵食することになるかもしれない。しかし、依然として導入の妨げになっている主要因の一つが、セキュリティの問題だ。

マリンズ氏は、潜在的な顧客からクラウドについての問い合わせを受ける際に、最も多く聞かれる質問がセキュリティ関連であることをTech Talkで語った。実際のところ、これらは認識の問題であることが多いと同氏は指摘する。

「もしあなたがリスク回避を望むビジネスオーナーであるなら、クラウドを利用することの安全性について漠然とした疑問を持たれるかもしれません」

「一方、同じ企業のITセキュリティ部門、第三者監督部門、または内部監査部門の担当者であれば、AWSクラウドのセキュリティ構造を理解した上で、セキュリティの義務を履行するためにクラウドが果たす役割について、より強い確信を持つことができるでしょう」とマリンズ氏は述べる。

同氏によると、寄せられる質問の内容は目まぐるしく変わっているという。

「規制の順守に関する話題が引き続き主要なテーマですが、『クラウドの導入を支援してくれる有能な人物はどこで見つかりますか?』という質問がより多く寄せられるようになっています。クラウドの包括的なスキルに対する需要は、今日の市場で指数関数的に高まっています」

セキュリティの侵害やITの外部委託管理による影響、またはデータの物理的な保管場所に関する規制当局からの警告などは、企業の評判を揺るがしかねない。こうした懸念は、潜在的な顧客がクラウドの導入を断念する理由にもなっている。

クラウド産業フォーラムは、セキュリティ侵害に関する直接的なアンケートを実施している。ヒルトン氏によれば、現実にセキュリティの過誤が生じたことを示す確たる証拠は、稀にしか見られないという。

同氏はこう説明する。「その割合は非常に低く、1%から2%程度に収まる傾向があります。多くの場合、(クラウドを通じて)より堅牢なテクノロジーになると考えられます」

法域を越えて移動するデータ
テクノロジーの問題に加えて、法令遵守の課題も残る。

CMEグループのマーケット・テクノロジー/データサービス部門でマネージングディレクターを務めるクレーグ・モーハンは、Tech Talkの会合の中で、データが法域を越えて移動することについて業界は注意すべきであると語った。

「個人情報の保護規定はどうなっているか? 州、国または地域によって、それはどう異なるか? あるデータの取り扱いで、私たちに許可されていることは何か? こうした検討課題は、従来は考慮する必要のないものでしたが、現在は避けて通ることができません」

しかし、クラウドが生み出した問題は、最終的にはクラウド自身によって、他のどんなテクノロジーよりも優れた解決策がもたらされるだろう。

BMLLテクノロジーズの最高技術責任者(CTO)であるスティーブ・ホールデン氏は、Tech Talkで次のように述べた。「クラウドの普及により、クラウド自身が法令遵守を支援するための有効な手段になりました。データの所在地は、今後の5年間で私たちが取り組まなければならない最も重要な法令遵守の一端となるでしょう」。




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